春の訪れ
2008/04/01(Tue) 20:10 No.30
浩瀚が女王の執務室を訪れると、主は眉間に皺を刻み、難しい顔をしていた。
「主上、どうかなさいましたか?」
「──浩瀚か。うん、ちょっとね……」
主は案件の書かれた書面を睨みながら小さく溜息をついた。浩瀚は微笑する。そして、ゆっくりと執務室の窓を開け放った。主は驚いたように浩瀚を見つめた。
堂室を吹き抜ける風は柔らかい。そして、微かに花の匂いを含んでいた。主は見開いていた目を細め、表情を緩めた。
「──ああ、いつの間にか、春になっていたんだな」
浩瀚は笑みを浮かべて頷いた。いつも生真面目な女王は、季節の移り変わりにも頓着しない。しかし、桜が開く春になると、どんな花よりも鮮やかな笑みを見せる。
主は書面を置いて立ち上がった。そして窓の外を見やり、花の如く匂やかに笑む。
「桜が、芽吹いているな」
「はい、直に花見の季節になりますよ」
浩瀚が続けると、主は肩の力を抜いて頷いた。そして、和らいだ顔で仕事を片付け始めた。麗しき女王の眉間の皺を消すことに成功し、浩瀚は安堵の笑みを浮かべたのだった。
2008.04.01.
ありがとうございます〜 未生(管理人)
2008/04/02(Wed) 06:24 No.33
拙作「春の訪れ」にご感想をありがとうございます。
一生懸命すぎて、すぐ肩に力が入ってしまう拙宅の陽子主上。
浩瀚にはいつもこんなふうに見守っていてほしい、との妄想でございました。
私も最近はこれくらい短いものか長すぎるものしか書けていないような気がいたします。
もっと精進いたします〜(恥)。