「管理人作品」 「08桜祭」 「玄関」 

春のひととき@管理人作品第6弾

2008/04/18(Fri) 05:45 No.106
 昨日、桜前線がとうとう青森に到着したそうです。 そして、盛岡では満開とのことでございます。 北の国の南端では、エゾヤマザクラが開花した模様。 さて、我が街に到着するのはいつでしょう?  少し焦ってまいりました……!
 やっと末声ショックが抜けてまいりました。 気分転換に書き流した久しぶりの小品を投下いたします。 気分転換=浩瀚な最近の私……。ナゼ?

※ 管理人の作品は全て尚陽前提でございます。

春のひととき

2008/04/18(Fri) 05:50 No.107
 風が和らぎはじめたある早春の日のこと。景王陽子は、書卓に堆く積まれた書簡を前に、深い深い溜息をついた。春が近いというのに、なんて代わり映えのしない。王の仕事は増える一方、陽子の眉間の皺も増えるばかり。
「主上」
 笑いを含んだ涼しげな声がした。ただ一言の呼びかけに、これほど意味を籠められる者は、この金波宮にひとりしかいない。陽子は不機嫌な応えを返した。
「──浩瀚、それ以上言わなくていい」
「承知仕りました」
 怜悧な冢宰の答えは慇懃ではあったが、やはり笑い含みだった。それを聞く度に負けた気分になるのは何故だろう。いや、分かってはいるのだ。
 春が近い。けれど、花見の時季はまだ遠い。そして仕事は山積みだ。そんな陽子の拗ねた気持ちを、浩瀚は見透かしている。察しのよい臣というものは、時に厭味ですらある。向かっ腹を立てながらも陽子は政務をこなした。浩瀚の静かでいて楽しげな視線を感じながら。
 浩瀚は、陽子の心身を案じているのだ。それを知りながら、指摘されては怒る己の進歩のなさに呆れてしまう。ただ、陽子は、己の未熟さが腹立たしいのだ。
 陽子は筆を置き、深呼吸をした。己を卑下しても何も始まらない。苛々しても能率は上がらない。陽子は庭院に目を移す。そこには桜の若木があった。

 桜が咲けば、花見ができる。そして──伴侶が会いに来る。

 陽子は微笑して己の臣に目を移した。
「──浩瀚」
「はい」
「──ありがとう」
 我ながら唐突な礼だと思う。けれど、浩瀚は黙して頭を下げた。そして、また涼しげな笑みを見せる。ほんとうに察しがよい。そう思い、陽子は破顔して立ち上がる。浩瀚は不思議そうに問うた。
「どうかなさいましたか?」
「たまには褒美をやろう」
 陽子はそう言って片目を瞑り、茶の支度をした。浩瀚は楽しげに笑い、恭しく拱手した。
「恐悦至極に存じます」
「冢宰に与える褒美にしては些少だけどね」
「いいえ、主上。何よりのご褒美でございますよ」
 丁寧な礼に、陽子は少し照れて言った。が、怜悧な冢宰は、柔らかな笑みを見せてそう返した。

 ああ、ここにも春がある。

 穏やかな春の昼下がり。ふくよかな茶の香りと立ち上る温かな湯気。心許せる臣と飲む茶は、景王陽子の心を和ませたのだった。

2008.04.18.

後書き

2008/04/18(Fri) 06:02 No.108
 ──ほんとうは違うお話を書いていたはずなのです。 なのに、何故か、ちょっと出しただけの浩瀚が出張ってしまい、断念いたしました。
 末声の合間のお茶濁しでごめんなさい〜。

2008.04.18. 速世未生 記

「見守るヒト」ですね〜 けろこさま

2008/04/18(Fri) 22:43 No.109
「ああ、ここにも春がある。」
 この科白は果たして陽子さんが呟いたのか、それとも浩瀚なのか…と思うくらい、 浩瀚の存在を感じます。
 花の季節を心待ちにしている主の傍らで、春の訪れを存分に感じ、見守っている浩瀚の 穏やかさに、とても心和みます。

 ところで、陽子さん視点のはずなのに、すんごく「浩瀚の話」に感じるのは、私だけでしょうか〜?

浩瀚の春 由旬さま

2008/04/18(Fri) 23:23 No.112
 浩瀚の台詞が少ないのですが、どれだけ陽子を思いやっているかが強く伝わってきますね〜
 浩瀚の春は、いつものように陽子を見守るだけの春ですが、彼にとっては この上なく嬉しく幸せな春なんだなと、そんな風に思いました。 浩瀚は陽子の癒し役なんですね〜おっと管理人様の癒し役でもあったのでしょうか?

只今私の癒し系(笑) 未生(管理人)

2008/04/19(Sat) 06:07 No.122
 誰の視点を書いていても末声に流れておりました。 尚隆・六太・陽子・鈴・利広……(溜息)。 その中で、浩瀚だけが、穏やかな春を感じさせてくれました。 只今のところ、浩瀚が私の癒し系でございます(笑)。

けろこさん>
 「ああ、ここにも春がある」にご反応ありがとうございます。 勿論、陽子主上の科白なのですが、鈍い陽子にそう思わせるほど浩瀚に春が来ていたと いう話も……(笑)。
>ところで、陽子さん視点のはずなのに、すんごく「浩瀚の話」に感じるのは、私だけでしょうか〜?
 あはは、よくお解かりで! 実は「裏」がございます。 上手く纏まることを祈っていてくださいませ!

由旬さん>
 「少ない言葉で己の意思を伝える」浩瀚に萌える管理人でございます!  しかも、「見守る」ことを「自ら選んでいる」というところが私的ツボ! なのです。 なんだか歪んでいてごめんなさい〜。
 由旬さんにいただいた「艶やか陽子主上」のイラストに、かなりもやもやしているのですが……。 連鎖妄想をお許しくださいますか?  (結果を見なけりゃ解らないですよね〜。ごめんなさい!)

コメントありがとうございます! 由旬さま

2008/04/19(Sat) 21:49 No.127
 勿論OKでございます〜光栄でございます〜お待ちしています!

読ませていただきました! 空さま

2008/04/20(Sun) 00:25 No.131
0000  わ〜い未生さまの浩瀚だ!
 空は、未生さまの浩瀚大好きです♪
 尚陽でも、これだけ存在感のある浩瀚は、ホントに素敵。
 浩瀚好きの空としては、うれしい限りです。
 陽子さんの事を気遣いながら、さりげなく諫める・・
 う、う、素晴らしいです。(いえ、未生さまのSSが、です)

 春らしくて、いいですね〜
 桜の古木も良いですが、若木もなかなか捨てがたいです。
 ありがとうございました。

ありがとうございます〜 未生(管理人)

2008/04/20(Sun) 05:45 No.133
 空さん、拙宅の浩瀚をお気に召してくださってありがとうございます(にっこり)。 「存在感がある」とのお言葉、すんごく嬉しいです〜。
 お忙しいところお越しくださいましてほんとうに感謝いたします!  またいらしてくださいね♪
背景画像「さららのアトリエ」さま
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