春の茶会の小さな嵐@管理人作品第8弾
2008/04/23(Wed) 06:12 No.168
北の国は初夏の陽気でございます。なんと5日連続20℃越え! 4月なのに……。
近所の桜公園も、南の木は花開いておりました。今日もう一度行ってまいります。
桜公園の桜も花開いておりました!
4/21には青森で満開となりました。
4/22には函館にて開花、本日4/23には道北の旭川でもエゾヤマザクラが開花したそうです。
──早過ぎますって。
懸案のコメディ(笑)。
もうずっと握りこんでいたネタでございます。
よろしければお楽しみくださいませ。
※ 管理人の作品は全て尚陽前提でございます。
- 登場人物 陽子・六太・尚隆
- 作品傾向 コメディ(だと思いたい)
- 文字数 1148文字
春の茶会の小さな嵐
2008/04/23(Wed) 06:21 No.169
春まだ浅い慶東国。景王陽子は手を休め、庭院を眺めた。まだ眠りに就いている桜の木が目に入る。桜は陽子にあるものを思い出させた。満面に笑みを浮かべた陽子は、昼の休憩を長めに取って、己の想いを行動で表した。
そして、その日の昼下がり。春に招かれたかのように、賑やかな客人が姿を見せた。
「陽子!」
「六太くん、いらっしゃい」
いつも気儘な隣国の宰輔は、軽い足取りで陽子の傍までやってきた。そして、大きな袋を差し出して破顔した。
「蓬莱土産だ。一緒に食べよう」
「え、何?」
「これだ」
「──わぁ、美味しそう!」
「そうだろ?」
六太が袋の中から取り出したものを見て、陽子は歓声を上げた。六太もにっこりと笑みを見せる。それから、陽子は悪戯っぽい貌をして六太に告げた。
「実はね、私もこんなのを作ってみたんだ」
「お、陽子のも美味そうだな!」
「でしょう」
昼休みを潰して作ったものを褒められて、陽子は笑みをほころばせた。それから上機嫌で茶を淹れた。
湯気を立てる茶と美味しそうな二種類の茶菓子を前に、陽子と六太は顔を見合わせて笑いあう。それから、いただきます、と声を合わせた。しかし──。
「美味しそうな『道明寺』!」
「──陽子。これは桜餅だろ?」
「違うよ。桜餅はこっち」
「──それは『長命寺』だろうが」
六太が持参した「桜餅」は、ほんのり桜色をした、米粒の残る饅頭を、塩漬けの桜葉で巻いたもの。陽子が作った「桜餅」は、うっすら桜色の薄い生地で餡をくるみ、塩漬けの桜葉で包んだもの。
「私の作ったのが桜餅だよ。六太くんのは『道明寺』じゃないか!」
「おれが持ってきたのが桜餅だぞ。陽子のは『長命寺』だってば!」
和やかな茶会はたちまち険悪になった。二人はどちらも譲らない。その諍いは、勝負がつかぬまま、果てしなく続くと思われた。が──。
「──美味いな」
明朗な男の声がした。その大きな手が、二種類の桜餅を掴みあげ、どんどん口に放りこんでいく。仰天した陽子は闖入者を叱りつけた。
「延王! 私だってまだ食べてないのに!」
「お前たちはいらないのだろう?」
「食うな! いるってば!」
絶句していた六太も、喚きながら餅に伸びた大きな手を叩く。唐突に現れた延王尚隆は、呵呵大笑した。
「──別に美味いものに名前など関係ないぞ。どちらも桜餅でよいではないか」
そう言って、尚隆はまたひとつ桜色した餅を口に運ぶ。そして満足そうに笑んだ。毒気を抜かれた陽子と六太は顔を見合わせて脱力した。そして、互いに苦笑を零す。
「どっちも桜餅でいいか」
「そうだね」
「どちらも美味いぞ」
「──尚隆、お前はもう食べなくていい」
六太が尚隆を睨めつける。陽子も怖い顔をして頷いた。やれやれ、と肩を竦める尚隆を尻目に、陽子と六太はもう一度、いただきます、と声を揃え、二種類の桜餅に舌鼓を打ったのだった。
2008.04.22.
後書き
2008/04/23(Wed) 06:31 No.170
──バカバカしいものでごめんなさい〜。
実は去年、桜餅を思い浮かべる陽子のお話を書きかけて、陽子の知ってる桜餅はどっちだろう?
と悩んだのでした。
私が思い浮かべる桜餅は、どうやら「道明寺」というらしい。
そして、関東では桜餅といえば「長命寺」のほうだと知ったときは驚きました。
今年に入ってから、関東在住の空さんにご協力いただいておりました。
けれど、一度末声に流れた心が戻ってくるまで、こんなに時間がかかってしまったのでした(苦笑)。
東京出身の陽子と京都出身の六太の小さな諍い、楽しんでいただけたら嬉しいです。
お目汚し失礼いたしました〜。
空さん、ご協力ありがとうございました!
2008.04.23. 速世未生 記
桜餅 griffonさま
2008/04/23(Wed) 23:31 No.171
桜餅といえば、ピンクのぼた餅みたないのを桜の葉で包んだヤツ以外知らないです。
でも道明寺粉を使ってあるヤツなんて喰ったことが無い(笑)
たいてい、もち米をピンクにしたヤツです。
関東風のやつは・・・たぶん食べたこと無いかも。
おっと、食い物の話だけでなく感想も(^_^)v
良いですねぇ〜この感じっ 尚隆の出が絶妙(笑)
悪戯っ子な感じが良いです。My設定の尚隆は、見かけ年齢陽子の2〜3コ上なんですよねぇ。
ちょうどそんな感じの雰囲気で、僕的にはたいへんツボでした。ありがとうございます。
とっても楽しませていただました\(^o^)/
いろいろな桜餅…… 未生(管理人)
2008/04/24(Thu) 06:32 No.172
griffonさんのお住まいのところでは、もち米の桜餅ですか!
ということは、粒々が大きいのですよね? ううむ。
もしかして、他にも違う桜餅があるのでしょうか?
是非是非教えていただきたいものです。
拙作にご感想をありがとうございました!
尚隆をお褒めいただき嬉しいです〜。
実は……尚隆って甘いものをそんなに食べるかなぁ、と疑問を抱きつつ書いておりました(笑)。
griffonさん、どうぞまたいらしてくださいね!
話題に上らせていただいた空です 空さま
2008/04/24(Thu) 22:36 No.173
おお! なんとなくこの尚隆さんは、末世知らずの感じがします。こんな尚隆さんもいいですね〜
(あと幾つ残っているんだろう?)
桜餅を見に、和菓子屋さんを結構覗いてしまいました。
うちの方は「桜餅」という名前のものと、「道明寺」という名前のものが仲良く並んで売られています。
クレープ状のうす桃色の生地にこしあんを丸めたものを入れたのが、「桜餅」という名前でした。
二つ折りにして挟んだり、まるめておくるみ状にしたり、2パターン見かけました。
結構色々あるのかもしれません。
楽しいお話しありがとうございました!
ろくた君のあとを絶妙のタイミングで追いつく尚隆さんて・・
王も麒麟の気が見えるのかなあ?
また参ります。
桜餅桜餅v けろこさま
2008/04/25(Fri) 00:22 No.176
つまらないことでけんかをする、陽子さんと六太君っていいですね〜。
うん、でもこれは言い合いになるのは判ります。
この後、六太君は蓬莱でちゃんと桜餅について調べてきたりするのかなぁ。
長命寺桜餅って、ごく最近まで実際に見たことがなく、「長命寺」という名前があるとも
知らなかったです。
「関東風の桜餅」で通じるものだから……(苦笑)
昨年、初めて職場近くの和菓子屋で見つけて食べました。
やっぱり私は、道明寺桜餅のもっちりした感じが好きですねぇ。
でもって、桜葉の塩漬けごと食するのが好みですv
関東風、関西風 未生(管理人)
2008/04/25(Fri) 06:13 No.178
空さん>
お呼び立てしてしまい、申し訳ないです!
「桜餅」と「道明寺」という関東の桜餅事情を教えてくださり、ありがとうございました〜。
そして拙作を楽しんでくださり、嬉しく思います。
ええと、状況といたしましては、六太は蓬莱帰りに慶へ寄り道。
尚隆は髪を隠さず出かけた六太を見掛け、蓬莱→慶とあたりをつけた、というところでしょうか(笑)。
ほんと、桜餅はあといくつ残っているんでしょうね? 私も気になります。
けろこさん>
関西の桜餅事情をありがとうございます!
私も「長命寺桜餅」を知ったのは去年か一昨年でございます。
北の国ではあまり見かけないのです〜。デパチカならあるのかな?
中心部に行くことは稀なので、解りません(笑)。
でもって、私も道明寺桜餅を桜葉ごと食べるのが好きです♪
関東風、関西風で喧嘩するのって、なんか解りますよね〜。
ここで、もち米派も登場されたらますます楽しいかも。
聞いたところでは、もち米桜餅は九州と四国なのでした。
北の国は道明寺なので関西派ですね。
東北・北陸・中部・中国地方はどんな感じなのでしょう?
よろしければ拍手でも構いませんので教えていただけると嬉しく思います!
おお〜 由旬さま
2008/04/25(Fri) 23:23 No.193
桜餅の嵐が吹き荒れていますね!(お話もログも)
恥ずかしながら……
関西風と関東風があるとは知りませんでした。
確かにどちらも食べたことはありますが、桜色の中味に、桜の葉が巻き付いている物は
すべて桜餅だとひとくくりにして、特に気にせず食べていた私の情緒の無さ。
尚隆に通じるものがある?!
陽子と六太の些細なことで真剣に言い合っているのがおかしいですね。
そして、
「尚隆おまえはもう食べなくてもいい」
という科白。ここ一番笑えます!
いやいや同類の私は笑えませんね。
ほんと、勉強になりました<(_ _)>
尚隆派登場(笑) 未生(管理人)
2008/04/26(Sat) 06:19 No.205
桜餅で盛り上がっていただけて嬉しいです〜。
そして、思わぬ会派登場、その名も「尚隆派」!
由旬さん、拙宅の尚隆と同様の豪放なご反応をありがとうございます!
思わず「そう来たか!」とほくそ笑んでしまいました。
拙作へのご感想もありがとうございます〜。
コメディは苦手なので、楽しんでいただけるとほっといたします。