茶会の後の小さな波乱
2008/05/11(Sun) 06:59 No.365
波乱もあったが楽しい茶会が終わった。陽子の手作りの「長命寺」桜餅を尚隆にほとんど食べられて、六太は少し不機嫌だった。そんな六太を呼び寄せて、陽子は耳打ちする。
「鈴や祥瓊のために余分に作ったのがあるから、あとでそっちをあげるね」
「──いいのか?」
「慶の者には、近い内にまた作るから、いいよ」
片目を瞑る陽子に、六太はにっこりと笑みを返した。やがて、景麒の使令がそっと六太に桜餅の包みを渡した。六太は、主に悟られないうちに、と早々に帰国したのだった。
陽子はにこやかに六太を見送った。すると、尚隆がにやりと笑って言った。
「──邪魔者を追い払ってくれて助かったぞ」
「延王、それは酷いのでは?」
延麒は半身でしょう、と陽子は苦笑する。尚隆はますます人の悪い笑みを浮かべた。
「──さて、内緒話が何だったか、教えてもらおうか」
「な、何のことでしょう?」
陽子は引きつった笑みを返す。延王尚隆はここぞとばかりに凄みのある覇気を見せた。そして楽しげに陽子を見つめる。陽子は顔に笑みを貼り付けたまま、じりじりと後退った。
「け、景麒が呼んでおりますので、ちょっと失礼を……!」
「お前は嘘が下手だな」
踵を返した陽子の腕を掴んで難なく引き寄せると、尚隆は低く笑った。
「桜餅を渡したろう?」
「──あなたが食べちゃったからでしょう!」
「素直でよろしい」
頬を染めて言い返す陽子に、尚隆は呵呵大笑した。それから、無邪気に続けた。
「俺も追加を所望する」
「ですから、もうないんです」
「では、作ってもらおうか」
「え……これからですか?」
「無論だ」
簡潔に答え、尚隆は笑む。陽子は小さく溜息をつき、我儘な隣国の王を睨めつけた。
「桜葉があまりないから、少しだけですよ」
尚隆はまたもにやりと笑った。そして、陽子の耳許で囁いた。
「それでは、桜葉の代わりに、景王の桜唇をいただくことにしよう」
「──!」
陽子は桜餅のようにほんのりと頬を染めるばかりであった。
2008.05.11.
後書き
2008/05/11(Sun) 07:05 No.366
本当は昨日仕上げてしまいたかったのに!
一昨日、読書にハマって夜更かししたせいで、昼に意識を失ってしまいました(おバカ)。
五緒さん、楽しい連鎖妄想をありがとうございました。
ついつい書き流してしまいましたよ〜。
祭もあと二日でお終いでございます。淋しいです。
あとひとつくらい短編を仕上げられるといいなと思っております。
駆け込みのご投稿、お待ち申し上げておりますよ!
最後までどうぞよろしくお願いいたします。
2008.05.11. 速世未生 記
祭掲示板ですから(笑) 未生(管理人)
2008/05/12(Mon) 06:14 No.370
頭が壊れかけておりますが、一応理性はまだ留まっているようで、なんとか寸止めできました(笑)。
手が滑らなくてよかったです!
由旬さん>
拙宅の尚隆を「可愛い」と思ってくださってありがとうございます。
けれど、やはりタチが悪い御仁ですよね〜。
その後をご想像くださったのですね! 「桜色」……モモイロじゃなくて嬉しいかも(笑)。
けろこさん>
そうです、「ここぞ」でございますよ! やっぱりタチが悪いですか(爆)。
陽子主上は反応が可愛らしいので、ほんとイジメてしまいたくなるのです〜(私も)。
はい、お後も「桜色」で済んでよかったと私も心から思います。祭掲示板ですから(笑)。
さて、ラスト1日でございます。
管理人も、今日は短編の仕上げをしてみたいと思います。
今年は大人しい利広のお話でございます。上手く纏まりますように。
皆さま、最後までどうぞよろしくお願いいたします!