夜桜幻想 ―裏―(griffonさま)
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夜桜幻想 ―裏― griffonさま
2008/05/07(Wed) 11:08 No.305
由旬様#237及び昨年の「果実の秘密」の連鎖妄想です。
多少「桃色モード」入ってます。苦手な方は、スルーでお願いいたします。
18禁かけるほどではないかと思います。
果実の秘密側で妄想スタートすると、こんなのになってしまいました・・・
仕事中に何やってんだか(笑)
夜 桜 幻 想 ― 裏 ―
作 ・ griffonさま
「廉麟。どうしたんですか。こんな夜中に」
本来漣極国の桜は、冬至の祭祀を挟んで満開になる。立夏の頃に咲くものではない。雨潦宮の桜桃園の中で最も大きな古木の桜の下で、廉麟は呉剛環蛇を使っていた。右手首から下がったそれは、地面へと伸び、大きなとぐろを巻くようにしていた。廉麟の周りには、呉剛環蛇の作った穴から桜の花弁が吹き上がっていて、やはりその穴から出る不思議な色合いの光の中を舞っていた。古木の枝に引っかかった花弁は、まるで季節を忘れて咲いているかのように見えるほどだ。
「主上。申し訳ありません。起こしてしまいましたか」
「いや。かまわないよ。それよりどうしたのですか。こんな夜中に」
廉麟は呉剛環蛇を覗き込んでいた。綻ぶ様に含み笑いを漏らした廉麟は、視線を上げて、鴨世卓を見た。
「先日慶東国から鸞がまいりましたでしょ。陽子様から私宛てでしたのです」
そう言って廉麟は、呉剛環蛇を軽く一振りする。どうなっているのかは判らないが、廉麟の右手首に巻き付きながら縮んだ呉剛環蛇は、蛇の腕輪の様になって収まった。鴨世卓に近づくと、その左腕を両手で抱えるようにして寄り添った。
「主上の改良なさった例の桜桃なのですが、あれと逆のものを御所望なのですって。見た目はそれと判らない。でも軸の張りは以前のものよりあるものをと」
それを聞いた鴨世卓は、訝しげに頸を傾げて廉麟を見詰めた。顎を上げた廉麟は、頬を鴨世卓の厚い胸に乗せる様にして視線を返しにっこりと微笑んだ。
「なかなか細かな御要望だね。でも、何故なんだろうか。つい先日は、あの軸の柔らかで少し長い桜桃を御気に召していただけたようで、丁寧な書簡まで戴いたと言うのに」
眩しげに目を細めて微笑む廉麟は、更に鴨世卓に身体を預ける。
「さぁ……鸞のお声を伺いますと、何やらとても悔しげなご様子」
「誰かに失敗して欲しいのかなぁ」
「さぁ、どうでしょう」
瞼を閉じた廉麟が、桜の花弁のようにふっくらしとたその唇を僅かに開いて、更に顎を上げた。柔らかな笑みを浮かべた鴨世卓は、啄ばむように自らの唇を廉麟の唇に合わせた。一瞬だけ間を置いて、その唇を深く合わせる。絡み合うような深いくちづけを受けた廉麟の膝がかくりと折れた。慌てて鴨世卓は廉麟を抱えなおす。
「私は、桜桃で練習などしても仕方がありませんわ。主上のくちづけを受け入れるだけで精一杯ですもの」
頬を上気させた廉麟は、目を閉じたまま呟いて、溜息を漏らした。
「廉麟」
膝の後ろに腕を回した鴨世卓は、廉麟を抱え上げた。
「新しい品種を作るために、あちらの桜を持ってきてくれていたんだね。ありがとう」
「いいえ」
抱き上げられた廉麟は、鴨世卓の腕の中で身動ぎする。
「立夏とは言え、夜中ですよ。少し冷えましたか?」
「違います」
「では、どうしました?」
「あの……主上……今日は四阿で……その、二人きりで……」
「廉麟の望むままに」
鴨世卓は柔らかく微笑むと、廉麟を抱えたまま、雨潦宮の実質上の後宮とも言える四阿に向かって歩き始めた。両手を胸の前で祈るように合わせていた廉麟は、左手を少しだけ動かして、鴨世卓の胸元の袷の辺りを摘んだ。
―― 陽子様も意地を張らずに、お任せすれば……お幸せになれるのに
― 了 ―
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