寄せる想い@管理人作品第2弾
2009/03/14(Sat) 06:54 No.10
桜が開花したというのに、管理人はこれから一泊でお出かけでございます。
いない間に咲かなくてよかったと真剣に思います。
山の温泉、実はスキーツアーでございます(私は温泉三昧ですが)。
いやはや、南国では桜が咲いているというのに、まだスキーですよ!
日本の長さを感じますね〜。
戯言はこの辺で。それでは第2弾をどうぞ。
※ 管理人の作品は全て尚陽前提でございます。
- 登場人物 陽子・尚隆
- 作品傾向 シリアス
- 文字数 587文字
寄せる想い
2009/03/14(Sat) 07:00 No.11
母を恋うた。
そう、「母」を恋うた。母が何を思っているか、そもそも母がどういう人間なのかも知らずに──。
(子供がいなくなりゃ悲しいさ。母親はそういう生き物だからサァ)
蒼猿の耳障りな声が頭に響く。あのとき否定したその言葉を、今の陽子は理解していた。母が捜し回ったのは「いなくなった娘」で、「陽子」ではない。そして、陽子が恋うたのは「母」。「中嶋律子」という人間ではない。
親子でなければ、話すこともなかったのかもしれない。陽子は小さく息をつく。それでも、桜を見ると思い出すのだ。蓬莱に残してきた母を。そして、狂おしく母を恋うた、あの頃の自分を。
「──あちらが恋しくなったか?」
陽子の膝枕で寝転ぶ伴侶が笑い含みに問う。大きな手が、そっと陽子の涙伝う頬に触れた。陽子は桜の幹に身を預け、舞い散る花を眺めながら首を振った。
「──思い出していただけ」
何を、と伴侶が短く問う。母を、と答え、陽子は淡く笑んだ。
「今なら……『お母さん』じゃない母ときちんと話せるかな……」
「親は親だろう」
伴侶はそう言って笑う。陽子が首を傾げると、伴侶はおもむろに続けた。
「親には子はいつも子にしか見えぬし、子にとっても親はいつまでも親のままだ」
そう言って、伴侶は桜を見上げた。その目は桜を突き抜けて、遠くを見ているような気がした。
悲しいのは自分だけではない。
陽子はそう思い、瞳を潤ませたまま、静かに唇を緩めた。
2009.03.14.
後書き
2009/03/14(Sat) 07:05 No.12
今年の初書きの桜でございました。
第1弾にするには物悲しいかなぁと思っておりました。
あんまり早く桜が咲いてしまったので、なんとまあ、これが第2弾になってしまいました(苦笑)。
2009.03.14. 速世未生 記