花の宴の裏側で@管理人作品第7弾
2009/04/06(Mon) 18:16 No.167
本日4/6に輪島と福島にてソメイヨシノが開花いたしました。
桜前線、とうとう東北地方に到着いたしましたね〜。
そして、シリアスに詰まっている管理人は軽い小品を書き流しました。
よろしければご覧くださいませ。
※ 管理人の作品は全て尚陽前提でございます。
- 登場人物 班渠・景麒・陽子・浩瀚
- 作品傾向 ほのぼの
- 文字数 906文字
花の宴の裏側で
2009/04/06(Mon) 18:18 No.168
「台輔、主上がお呼びでございます」
「──主上が?」
まだ執務中のはずだが、とひとりごちて主は眉根を寄せる。班渠は、仕事は終わったようですよ、と付け加えた。何だろう、呟きながらも主の手は書卓の上の雑多なものを素早く片付けている。班渠は素直でない主に気づかれぬように笑いを噛み殺した。
女王が用意したものを見たら、主は何を言うだろう。
きっとまた、すぐさま諫言して女王に嫌がられるのだろう。案の定、一番乗りに宴席に登場した主は、女王に機先を制された。諫言を溜息に変えた主は、大卓に置かれたものに目を留める。
「これはいったい何ですか?」
「桜餅だよ。私たちが作ったんだ」
女王は満面に笑みを浮かべ、誇らしげにそう言った。それなのに、主はまたも女王の機嫌を損なうことを言ってのけた。
「桜餅? ──食べられるのですか?」
「お前は本当に失礼な奴だな!」
「春らしいお菓子ですね」
女王の勘気に満ちた声を遮るように涼やかな声がする。笑みを湛えた冢宰がそこに立っていた。女王を喜ばせることにかけては、冢宰の右に出る者はいない。女王はたちまち機嫌を直し、にっこりと笑って応えを返した。
「そうだろう。ほら見ろ、景麒」
女王は主を振り返り、得意そうにそう言った。眉根を寄せた主が返答する前に、冢宰は女王の注意を己に戻す。その手腕に班渠は密かに感心した。女王は冢宰の思惑に乗り、桜餅の解説をした。
「こっちが道明寺で、向こうが長命寺。どちらも桜餅だ」
「ほんとうに春に相応しいお菓子ですね」
「うん、春嵐が来る前に、ゆっくりと味わってくれ」
女王ははそう答えて片目を瞑る。班渠はすぐに桜が咲くと現れる春の大嵐のような隣国の王を思い浮かべた。冢宰もそれは同じらしく、軽く吹き出し、なるほど、と笑んだ。そして、女王の伴侶と反りが合わぬ主は、仏頂面で微かに頷いた。
それから、女王の側近たちが次々に現れた。暖かな春の陽射しの中、和やかなの宴が始まった。
主は静かに女王が淹れた茶を啜り、女王がこしらえた桜餅を賞味する。その様は、かなり嬉しげだった。けれど、きっと女王には伝わっていないのだろう。鮮やかな笑みを浮かべて冢宰と話している女王と主を見比べて、班渠は小さく苦笑した。
2009.04.06.
後書き
2009/04/06(Mon) 18:23 No.169
第5弾「花の宴」を書きながら、かなりジタバタしておりました。
ほんとは景麒に語ってほしかったのですが、拒まれてしまったので、代打の班渠でございます。
お粗末でございました。
2009.04.06. 速世未生 記
微黒ですか(笑) 未生(管理人)
2009/04/07(Tue) 06:31 No.173
けろこさん、いらっしゃいませ〜。ご感想をありがとうございます。
浩瀚が黒く見えるのは、実は班渠が主思いだからかもしれませんよ(笑)。
恐らく浩瀚は「宴の前に主上のご機嫌を戻さなければ」くらいにしか思っていないのでは。
確かに、拙宅の景麒は哀れですよねぇ。景麒贔屓の方々、ごめんなさい〜。