花の宴の王と台輔@管理人作品第9弾
2009/04/21(Tue) 13:03 No.216
先日の「花の宴の裏側で」で、拙宅の景麒は哀れだな〜とつくづく同情いたしました。
で、景麒救済のお話を書こう! とチャレンジしてみたのですが……(苦笑)。
※ 管理人の作品は全て尚陽前提でございます。
- 登場人物 鈴・陽子・景麒・祥瓊
- 作品傾向 ほのぼの・コメディ(?)
- 文字数 1077文字
花の宴の王と台輔
2009/04/21(Tue) 13:06 No.217
花の宴が和やかに始まった。それなのに、陽子は少し不機嫌な顔をしている。こっそり用意した二種類の桜餅も皆を驚かせることができたというのに。鈴は首を傾げて問うた。
「陽子、何をそんなにむくれてるの?」
「だって、景麒が……」
陽子は唇を尖らせて、景麒が如何に失礼かを説明する。が、鈴は声を上げて笑ってしまった。
「台輔がそういうお人柄だって、陽子も分かっているでしょうに」
「だって、失礼だとは思わないか? 私はね、女らしく淑やかにって育てられたんだ。家事は得意だったんだぞ」
陽子が憤慨して言った途端、和やかだった場が静まり返った。皆、一様に口を開け、じっと陽子を見つめている。それは鈴も同じだった。
「な、なに?」
「女らしく淑やかにって……誰が?」
誰もが疑問に思いつつ、訊けずにいることを敢えて陽子に問うたのは、祥瓊だった。
「無論、私だ」
陽子は胸を張って答える。と、今度はその場に笑いが渦巻いた。陽子は驚いて目を見張った。
「何がそんなに可笑しいんだ?」
「だって……陽子は、厨房にいても役に立たないじゃないの」
祥瓊が遠慮のない声を上げてまた笑う。確かに、と鈴は声をも上げられないほど笑い転げた。陽子は竈に火を入れることもできないし、包丁捌きも拙いのだ。
虎嘯は呵々大笑し、遠甫も楽しげに笑っている。さすがに
桓魋は少し肩を震わせているだけだったが、陽子は大いにつむじを曲げたようだった。そのとき。
「──主上が厨房に入る必要はございません」
顔を蹙めた景麒がきっぱりと断じた。場がまた静まり返り、視線が今度は景麒に集中する。それから、その目が、ゆっくりと陽子に移った。
陽子は景麒を見つめた。景麒は視線を合わせない。仏頂面のまま茶を啜る景麒に、陽子はおもむろに近づいた。場の緊張が増していく。しかし、陽子はそんなことに頓着していないようだった。
「景麒」
「はい」
「お茶は美味しいか?」
「はい、主上のお茶はいつも美味しゅうございます」
「そうか。では、桜餅はどうだ?」
「思ったより、美味しゅうございました」
「それはよかった。正直なのは、お前の取り柄だな」
「ありがとう存じます」
淡々と続けられる主従の会話。誰からともなく大きな溜息が漏れる。それとともに、皆の肩から力が抜けていった。
「よく分からないけれど、あの二人、案外仲良しよね」
「主従だけに、ずれ方が似ているのかもしれないわ」
景麒に茶のお代わりを注ぐ陽子を見ながら、鈴は小さく囁いた。祥瓊は苦笑いを浮かべてそう返す。鈴は力なく笑って頷いた。
皆の様子にも気づかずに、機嫌を直した女王は、茶のお代わりを桜花の笑みとともに一同に振舞ったのだった。
2009.04.21.
後書き
2009/04/21(Tue) 13:14 No.218
景麒救済を謳いましたが、救済できているかどうかは謎でございます〜。
はい、バカバカしいものの裏ではシリアスが詰まりまくっております。
お粗末でございました。
2009.04.21. 速世未生 記
ひと安心 未生(管理人)
2009/04/22(Wed) 06:39 No.233
けろこさん>
おお! 救済を認めてくださいますか。よかったです〜。
「見えない尻尾」、私も想像してしまいました(笑)。
けど、やっぱり珍しいですか? 私の景麒救済話(苦笑)。
妄想を刺激するご感想をありがとうございました!
ひめさん>
お久しぶりでございます〜。キューサイコールをありがとうございました!
そうそう、遠甫も笑ってるんですよねぇ。お気の毒な陽子主上。
景麒救済をお認めくださってありがとうございました〜。
由旬さん>
私も二人の会話を楽しく書くことができました〜。案外仲がよいのですよ、うちの主従。
よく解らない「二人の世界」ですよね(笑)。
「淑やか陽子主上」は結局誰も信じてないでしょうねぇ。
皆さま、ご感想をありがとうございました!