北国の早春@管理人作品第10弾
2009/04/22(Wed) 18:37 No.236
本日「さくらの開花予想(第8回)」が発表されました。
最近の冷え込みのせいか、少し遅くなってしまいました。
青森で18日に開花したというのに、桜前線の北の国到着予想は4/27でございます。
待ち遠しいような、まだ咲いてほしくないような。
さてさて先日故郷の町で真っ白な雪を見てまいりました管理人は封印したはずの雪の小品を
仕上げてしまいました。やれやれ、まだ雪ですよ。もう少しお付き合いくださいませ。
※ 管理人の作品は全て尚陽前提でございます。
- 登場人物 尚隆・陽子
- 作品傾向 しっとり・ほのぼの(散文ちっくです)
- 文字数 940文字
北国の早春
2009/04/22(Wed) 18:41 No.237
春の女神の悪戯か、はたまた冬将軍の気紛れか。早春と言いつつ、雁では雪が降った。前日の夕方から降り始めた氷雨が、夜半には雪となり、静かに地上を白く染めたのだ。
そんな折に居合わせた隣国の女王は、一夜にして様変わりした外の景色に目を丸くしている。慶ではもう桜が散ってしまったのに、と呟く伴侶に、尚隆は笑い含みに声をかけた。
「よい時に来たな」
首を傾げる伴侶を連れて、さっさと玄英宮を抜け出す。生真面目ながら好奇心旺盛な女王は、呆れ顔をしながらも素直に従った。
さらりと降った淡雪は、春の陽射しに照らされて白銀に輝き、やがて儚く消えていく。伴侶はそんな景観を珍しげに眺めていた。
目指す山麓に近づいた。まだ所々に雪が残る斜面を見やり、尚隆は唇を緩める。伴侶の反応が楽しみだった。
「──うわぁ」
尚隆が声をかける前に、伴侶は感嘆の溜息をつく。視線の先にあるものは、春の白い淡雪を頂く咲き初めたばかりの薄紅の花。開きかけた桜花は、重そうに首を垂れている。雪を乗せたまま咲くその様は、健気で可憐だった。
「よい時に来ただろう?」
花が開くほどの陽気の後に冷気が来ることは間々あるが、さすがにそのときに雪が降ることはあまりない。今年のように、雪が降ってもおかしくない早春に花が開くほどの暖気が来ることも珍しいのだ。
「綺麗……。でも、ちょっと可哀想……」
そう言いつつも、伴侶は魅せられたように雪と桜に見入る。やがて花にも陽があたり、雪は見る間に雫となって滴った。重りをなくした花は、ゆっくりと首を擡げる。そして、春の暖かな陽射しを存分に受け、誇らしげにほころびた。
「桜を見せてやろうと思っていたら、おまけも付いてきたな」
伴侶は声なく頷く。翠玉の瞳は未だ桜から離れることない。お前は日頃の行いがよい、と続けると、伴侶は顔を上げて感慨深げに言った。
「──北国の花は、逞しいね」
「春が来ることを知っているからだろうな」
「雪が降っても?」
「ここでは、雪が融けたら春だからな」
軽く返すと、伴侶は大きく目を見開いた。それから、ゆっくりと桜花の笑みを浮かべる。
「北国は、ほんとに面白い」
「そう言うお前はもっと面白いぞ」
尚隆はにやりと笑った。案の定、伴侶は不満げに唇を尖らせる。が、また咲き初めた桜を見つめ、眩しそうに笑んだ。
2009.04.22.
後書き
2009/04/22(Wed) 18:47 No.238
昨日、吹雪で通行止めになった峠が多かったようでございます。
今日も、積雪のため通行止めのままの峠があるとラジオの道路情報が知らせておりました。
さすがに平地では雪は降っていないようですが。
そんなわけで、むらむらと散文くさい小品を書き上げたのでございました。
もうとっくに桜が散っている地域の皆さま、まだ雪でごめんなさいね〜。
今が桜の盛りの地域の皆さま、素敵な桜を見せていただけると嬉しいです!
まだまだ募集しておりますよ〜。
2009.04.22. 速世未生 記
実は…… 未生(管理人)
2009/04/24(Fri) 06:33 No.242
けろこさん、いらっしゃいませ〜。
さすがに管理人も実際に桜に雪が積もっているところを見たことはございません。
ただ、昨年のGWに見たニュースの映像が忘れられなくて……。
寒暖の差が激しい北の国の北東地域のものでした。
確かに尚隆も最初に雁に来た時には驚いたでしょうねぇ。
妄想を誘うご感想をありがとうございました!