「管理人作品」 「09桜祭」 「玄関」

視線の先には@管理人作品第15弾

2009/05/10(Sun) 07:18 No.325
 祭も終盤になりました。 管理人、今回初めての連鎖妄想かもしれません。 昨日書き流した小品、一晩寝かせてみました。 よろしければお楽しみくださいませ。
 けろこさんの#92「華見」及び#247「花見」の連鎖妄想でございます。

※ 管理人の作品は全て尚陽前提でございます。

華見

視線の先には

2009/05/10(Sun) 07:21 No.326
 満開の桜花の下で、延王尚隆は独り不機嫌に酒を飲んでいた。そんな尚隆に歩み寄り、笑い含みに声をかける者がいた。
「せっかく花見をしているというに、随分と辛気臭い顔をしておるの」
「不快なものが目に入ったからな」
 尚隆は不機嫌の源である人物の登場に顔を蹙める。反射的に応えを返すと、声の主は更に興をそそられたように笑った。

「あのように麗しき華を見ても、そんな貌をするのかえ?」

 天敵氾王はしたり顔で促す。扇の先にあるものは、豪華絢爛に咲き競う華であった。視線を移した尚隆は、にやりと笑んでみせる。
「──確かに美しいな」

花見
 景王陽子、供王珠晶、そして文公主文姫。観桜の宴に相応しく着飾った三人の高貴な娘たちが笑いさざめいている。
「猿にも分かる美しさであろ?」
「相変わらず減らぬ口だ」
 にっこりと笑う氾王に、尚隆は憮然と言い返す。そんな言には頓着せず、氾王は満足そうに続けた。

「もとより綺麗な華たちじゃが、範の匠が誂えた衣装はより美しさを引き立てておる」

「それだ」
 尚隆はここぞとばかりに氾王を睨めつけた。訝しげに見つめる氾王に、尚隆は大仰な溜息をつきつつ苦言を呈す。
「なんでまた景王陽子にわざわざ袍を着せるのだ? こんなときにこそ、女王らしく華やかな襦裙で着飾らせるべきだろうに」
 ああ、と呟いて、氾王ははんなりと笑む。腹に一物ありそうな、その不気味な貌。尚隆は背筋に走った悪寒を隠さずに黙した。

「景女王の装いについては、特に強いご要望をいただいたものでな。私も惜しいとは思ったのじゃが」

 思わせぶりに嘆息し、氾王は尚隆に流し目をくれる。尚隆は眉根を寄せて先を促した。

「供王と文公主から、是非に長袍を着せてほしい、と」

 やはり、凛々しき男装の麗人の風評は、そこまで轟いていたか。

 その噂をばらまいたであろう風来坊の爽やかな笑顔が胸を過って消えた。尚隆が深い溜息をつくと、氾王は爆発的に笑い出す。顔を蹙めたまま、尚隆は尚も言い募った。
「──口八丁は得意技だろう?」

「強く美しい華に逆らう趣味は持たぬ」

 そう返し、氾王は目を細める。そしてまた、咲き誇る桜花に負けず劣らず咲き匂う華たちに視線を移した。酒杯を干した尚隆もまた唇を緩める。
「やれやれ、大人しく華見を続けるか」
「珍しく意見が合ったな」
 犬猿の仲の二人の王は、そうしてにやりと笑みを交わしたのだった。

2009.05.10.


後書き

2009/05/10(Sun) 07:29 No.327
 「華見」を拝見した時からムラムラしておりました。 「花見」の後、もっとムラムラしてしまいました。 けれど、会議やら連休やらで落ち着かず……。
 やっと昇華できました〜。 けろこさん、妄想を誘う作品をありがとうございました!

2009.05.10. 速世未生 記

一時休戦 由旬さま

2009/05/10(Sun) 21:24 No.330
 三人の華の前で、延王と氾王の間にこういうやりとりがあったのですね。
 いかにも二人の会話らしい。ちょっぴり氾王が優勢かな?
 そうそう、意地の張り合いはやめて、今は華見をして下さいね。 花の時期は短いのですから。
(あぁ、でもこっちの華は皆今のところエンドレスでしたね)

負けてますねぇ(笑) けろこさま

2009/05/10(Sun) 22:07 No.333
 延帝の天敵というだけあって、さすがに氾さまには勝てませんか(笑)
 延帝の、悪寒の走った姿や不満顔なんて氾さまじゃなきゃ引き出せませんね(クス)
 でも、氾さまが見立てたことじゃなくって、襦裙じゃないことが不満だったのですね。
 でも自分以外の者に、陽子さんの麗しいあで姿を堪能させずにすんでよかったじゃないですか、 ね? 尚隆?(ニヤリv)

ご感想をありがとうございます 未生(管理人)

2009/05/11(Mon) 06:16 No.335
 5/10に根室にてチシマザクラ、釧路と稚内にてエゾヤマザクラの開花が宣言されました。 桜前線、終着いたしました!
 昨日のお昼の段階で、根室到着の報を耳にし、驚いていたのです。 たいがい根室は終着地点ですから。 けれど、先ほど確認したら、釧路と稚内も開花しておりました(笑)。

 さてさて、連鎖妄想にご感想をありがとうございました。

由旬さん>
 この二人ならこんな会話をしているのでは……との妄想でございました。 「らしい」とのお言葉、嬉しいです!
 確かにこちらの「華」はエンドレスですが、一堂に会すことは少ないでしょうからね〜。 眼福でございましょう。

けろこさん>
 はい、拙宅の尚隆は、なかなか氾さまに勝てませんね(笑)。 ほんと氾さまの前では表情豊かだし、私も書いていて楽しいです。

>でも、氾さまが見立てたことじゃなくって、襦裙じゃないことが不満だったのですね。

 ──#254の陽子主上の科白が頭を過りました(苦笑)。 なんだかまたムラムラしてきましたよ(爆)。 妄想を誘うご感想をありがとうございました!

 さて、楽日まで1週間でございます。 ラストスパート! あと何本書けるかな。
 皆さまの素敵な「桜」もまだまだお待ち申し上げております!

エェ〜〜〜っと ひめさま

2009/05/12(Tue) 00:02 No.339
けろこさん>
 あで姿……思い出しちゃったじゃないですか(笑)
 長袍でよかったですね。

だから、 けろこさま

2009/05/12(Tue) 21:37 No.344
ひめさん>
 わざわざ漢字変換しなかったんですけど、思い出しちゃいました?(笑)
 や〜、他に適当な言葉が見つからなかったもんですから。ごめんなさいです^^
背景画像「工房 雪月華」さま
「管理人作品」 「09桜祭」 「玄関」