桜祭開催ありがとうございました 壱草 楓 さま
2009/05/16(Sat) 23:14 No.360
もうそろそろ桜祭もおわりですね。
4月から忙しく、なかなかおじゃまできませんでしたが、終わる前にもう一つ、
どうしても投降したくやって来ました。
開催中の約2ヶ月大いに楽しませてもらいました。
ありがとうございました。
春の終わり
作 ・ 壱草 楓 さま
2009/05/16(Sat) 23:15 No.361
花の時期は過ぎ去り、桜はすっかり新緑に包まれていた。
辺りは一面萌葱色に染められ、梢から射す陽の光が時折吹くそよ風に踊る。
その静謐な空間にその緋色は静かにとけ込みつつも、やはりはっとするほど鮮やかにそして確固として存在していた。
「主上」
声を掛ければ少女がゆっくりと振り返る。
振り返れば新緑よりも鮮やかな翠の双眸が、男を見やって柔らかく細められた。
「浩瀚」
「すっかり葉桜になりましたね」
「もう、桜の時期は終わりだ」
大樹を見上げるその視線を辿って浩瀚もまた上を見上げる。
この桜の下で花見をしたのはつい先日のことだ。ささやかながら宴席を設け、皆で酒を酌み交わして大いに盛り上がった。
「花見はね、にぎやかじゃなくっちゃいけないんだ」
そう言って主催者自ら羽目を外した。
その時の様子を思いだすにつけ浩瀚の口元はついゆるむ。
「へぇ、それは何か理由があるんですか?」
皆を代表してそう問うたのは桓堆だ。それに対する少女の答えは浩瀚にはとても興味深いものだった。
「もちろん。だって、桜の神様はね、にぎやかなのがお好きなんだ」
「桜の神様?」
「そう、そして桜の神様をご機嫌にしてあげるとね、豊作を恵んでくださるんだよ。桜の神様は稲の守り神だからね」
「へぇ、では民のためにもここで大いに盛り上がって桜の神様をご機嫌にしないといけませんね!」
「そうだ桓堆。飲め飲め!今日は無礼講だ」
「だそうだ、虎嘯。今日は遠慮はなしだぞ」
「おう!」
こんな二人につきあって翌日ひとり二日酔いに悩まされた主はひどく後悔していたが、そんな少女に浩瀚はそっとささやいたのだ。
「これで今年の慶の豊作は約束されたも同然なのでしょう?二日酔いもお役目のうちですね」
その言葉に少女はただ苦く笑った。
あの宴の余韻が皐の空にそよ風と共に消えていく。
浩瀚は再び少女を見やった。
その視線を感じたように少女も再び浩瀚を見やった。
「さて、仕事だな。桜が終わればすぐに雨期だ。やることは山積みだな」
「御意」
背筋をしゃんと伸ばして少女がきびすを返す。執務室へと向かっていくその後に、浩瀚はゆっくりと続いた。