「管理人作品」 「10桜祭」

春に吹く風@管理人作品第12弾

2010/05/24(Mon) 18:40 No.947
 5/22に北の国の北端、稚内にてエゾヤマザクラが開花いたしました。 桜前線、ようやく終着でございます。 5/22には釧路にてエゾヤマザクラが、また24には根室にてチシマザクラが満開となりました。 根室の測候所が今年の秋に廃止となるため、気象庁の「さくらの開花情報」から チシマザクラが消えてしまいます。淋しいな……。

 桜祭も終わりが近づきました。管理人、本領発揮の末声小品をひとつ投下いたします。 またも連作の一編で申し訳ないのですが、よろしければお楽しみくださいませ。

※ 管理人の作品は全て尚陽前提でございます。

春に吹く風

2010/05/24(Mon) 18:42 No.948
 麗らかな春の陽射しを浴び、咲き初めた桜花を見上げ、利広は破顔した。そして、桜の下に佇み、桜よりも鮮やかに咲く紅の花に視線を移す。すると、同じくその花に見入る者と目が合った。
 春の陽気を寄せつけぬ冷たい眼差しを向けるその男に、利広は人懐こい笑みを返す。男は慇懃に拱手しつつ、冷気を緩めることはない。

 ここ、慶東国の国主が住まう金波宮は、利広の訪れを厭う。歓迎してくれる者は、宮の主ただ一人。そして、利広が気紛れに金波宮を訪うことを止めないわけを知らぬ者も、麗しき紅の女王だけであった。
 君が好きだ、といくら告げても愛しい女は本気にしない。それでも、気儘に現れる利広を鷹揚に迎え、他愛のない会話を楽しんでくれる。
 故に利広は鋭い視線を投げかける冢宰に頓着することない。利広にとって、女王に会いにくることは必然なのだから。

「──陽子」

 振り返る女王は、少しだけ目を見張る。それから、柔らかな笑みを見せた。利広は女王に笑みを返す。そのままゆっくりと庭院に降りた。鋭く冷たい視線は利広を追いかける。そして、己の主と語らう闖入者をいつまでも監視していた。それでも──。

 今は、春に物想う女王を笑顔にすることができれば、それでいい。

 少女のように笑う陽子を見つめ、利広はただそれだけを思った。

2010.05.24.

後書き

2010/05/24(Mon) 18:44 No.949
 夢幻夜想」(末声別館)連作「来訪」の一編でございます。 金波宮の面々に嫌がられても懲りない利広のお話でございました。 気の長い風の御仁ですが、このお話はまだ序盤戦の頃でございましょうね〜。
 実は「利浩対決」は萌えつぼのひとつでございます。 お目汚し失礼いたしました。

2010.05.24. 速世未生 記

利浩対決  由旬さま

2010/05/24(Mon) 21:08 No.952
 利広を菌扱いしてしまいましたが、 わたくしも実は密かに利広応援隊なのでございます(コホン)。
 管理人さまの作品の中では、浩瀚よりも利広にエールを送ってしまいます。 やはり陽子の消失したものを埋められるのは利広しかいないだろうと思います。
 浩瀚の冷視も利広にとっては予測済み。 嫌われ役を承知の上で陽子の元へ来る利広は、本当に献身的です。

利広を冷たく見つめる理由は、  けろこさま

2010/05/24(Mon) 22:33 No.960
浩瀚の場合「伴侶なき後の主上を誑かす者」以外の理由がありますもんねぇ。
 小さな利浩対決はしばしばあっても、全面衝突はかわされたり避けたりして、 くすぶり続けそうですよね、浩瀚は(クフフ…)
 「夜想」の利広は、本当に思わず応援したくなるくらいイイ漢です。 (「夜想」の、ですよ!/^^;)

ご感想御礼 未生(管理人)

2010/05/25(Tue) 18:03 No.970
 連作の一編にご感想をありがとうございました〜。

由旬さん>
 利広応援隊宣言をありがとうございます!  しかも、浩瀚よりも利広とのご発言は拙宅でもお初かも……。 この連作は先に進むのに躊躇いを感じているものなのでエールが嬉しいです〜。

けろこさん>
 但し書き付きでも「イイ漢」とのお言葉は嬉しいです〜。 確かに「夜話」本館の利広は皆さまを叫ばせてしまう黒い奴ですからね……(苦笑)。 はい、いつかは「追憶の果て」に辿り着きたいものでございます。

 次は連作ではないものを出せるとよいなと思います!
背景画像「Studio Blue Moon」さま
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