桜吹雪の中で@管理人作品第13弾
2010/05/26(Wed) 18:05 No.991
5/25に稚内にてエゾヤマザクラが満開となり、
気象庁の「さくらの満開情報」の頁の空欄がなくなりました。
今年の桜情報はこれにてお終いとなります。お付き合いありがとうございました!
さて管理人、書きそびれていた連鎖妄想小品を投下いたします。
#105の瑠璃さんの作品より、今回は尚隆視点でございます。
今更、とおっしゃらずお付き合いくださいませ〜。
※ 管理人の作品は全て尚陽前提でございます。
- 登場人物 尚隆・陽子
- 作品傾向 しっとり
- 文字数 638文字
桜吹雪の中で
2010/05/26(Wed) 18:08 No.992
頬を伝う一筋の涙。淡い笑みを湛えた唇。それでも、咲き誇る桜を見つめる瞳は勁いまま。
尚隆は黙して伴侶を眺める。向けられた細い背は尚隆を拒絶しているわけではない。が、手を伸ばすことはできなかった。受けとめる必要のない涙もあるのだ、と漠然と思う。ただ、見守ることしかできない時もあるのだ、と。やがて──。
「──私は、あなたが思うほど弱くはないよ」
小さいが決然とした声とともに、伴侶は振り返る。桜吹雪の中で、緋色の長い髪が優雅に靡いた。頬を濡らす涙は既にない。勁い光を湛えた翠の瞳が、真っ直ぐに尚隆を射抜いた。それは、自信に満ちた女王の瞳──。
射竦められて動けない。軽口を返すこともできなかった。そして、思い知らされる。我が伴侶は、その細い肩に一国を乗せる王なのだ、と。
「──景女王の仰せのままに」
恭しく頭を下げて拱手する。この時ばかりは本気でそう思った。そう、頭ひとつ分背の低い伴侶をいつも見下ろしている。しかし、目の前に立つ女は、延王尚隆に阿ることのない、隣国の王。
尚隆はやおら顔を上げる。微笑を浮かべて見つめると、凛々しき女王の頬は見る間に朱に染まっていった。
「またそういう莫迦げたことを……」
「まあ、そう言うな」
深く嘆息する伴侶はいつもの貌をしていた。幾分頬を膨らませ、不満げな伴侶ににやりと笑いかけ、軽く応えを返す。
「俺に頭を下げさせるのは、お前くらいのものだ」
伴侶はきょとんと目を見張り、分からないというように小首を傾げる。尚隆は、細い肩に腕を回し、呵々大笑したのだった。
2010.05.26.
後書き
2010/05/26(Wed) 18:12 No.993
なかなか題名が決まらなくて出せずにおりました。
この度は生きている陽子主上をお届けできて私が嬉しく思いました。
瑠璃さん、またも連鎖妄想で失礼いたしました〜。
2010.05.26. 速世未生 記
かわいいゾv けろこさま
2010/05/26(Wed) 21:29 No.995
尚隆視点はやっぱり乙女ビジョンですねぇ。
力強い女王様に射すくめられても、それで終わらずに女王様を一人の少女に戻してしまう。
管理人さまの尚隆にとって、陽子は隣国の女王ではあるけれど、
それ以上に「伴侶」なんだな〜、と改めて感じましたワ^^
凛として ネムさま
2010/05/26(Wed) 23:34 No.1009
桜は夢幻、儚いイメージがあるのに、不思議と凛としたものが似合いますね。
未生さんの描く陽子もそんな感じです。
また卑下するわけでものなく礼をする尚隆もいいですね。
普段からは連想できないような優雅な礼ではなかったかと、見てみたい気がします。
凛々しい 瑠璃さま
2010/05/26(Wed) 23:53 No.1010
けど、可愛いですねえ、陽子さんが。
未生さんの陽子さんを読むと、かわいらしい陽子さんを描きたくなります。
またまた素敵なお話をありがとうございました。
毅然とした姿 由旬さま
2010/05/26(Wed) 23:53 No.1011
尚隆の頭を下げさせるほど、陽子の姿は圧倒的だったのでしょうね。
そして弱さと強さを持つ陽子のギャップを楽しんでいる、そんな風に感じました。
Re: 最後の桜情報 みるくうさぎさま
2010/05/27(Thu) 23:19 No.1019
強がっている陽子は凛々しいけど、かわいいですね。
そして、ただ強がっているだけではない事をわかっていて、
見守っている尚隆も大人ですね〜。
(500歳以上だから当たり前!?)
リラ冷えにも程がある 未生(管理人)
2010/05/28(Fri) 14:19 No.1028
昨日のアメダスは9時で9℃、
中心部の公園のライラックは五分咲きのままフリーズしているそうでございます。
今朝も6時のアメダスは9℃。
予想最高気温も12℃。諦めてストーブに火を入れてしまいました(苦笑)。
ええ、13時も11℃でございますよ〜。
そんなわけで風邪を引いてしまいました。昨日は浮上できなくてごめんなさい〜。
早寝のお蔭で鼻水も落ち着き、蕁麻疹も引いてまいりましたので、
今日は大丈夫そうでございます。
拙作にご感想をありがとうございました。
けろこさん>
はい、尚隆の乙女フィルターは健在のようですね(笑)。
普段会えないだけに、二人の時には「女王」より「伴侶」でいてほしいのではないでしょうか。
恐らく、そんなことを指摘しても素直に頷いたりしないでしょうけどね〜。
ネムさん>
いつもながら、美しい言葉でのご感想をありがとうございます。心洗われます〜。
「凛とした陽子」を感じていただけて嬉しく思います。
「風の万里〜」のラストでの、陽子の「自然に頭が下がる」との言葉が忘れられません。
己もそういう存在である、と気づかない陽子主上も、己が頭を下げる意味を知る尚隆も
私の萌えツボでございます〜。
瑠璃さん>
私は「16歳の陽子」を可愛がりたいんですね〜、きっと。
今回の祭は瑠璃さんに妄想を刺激されまくりでございました。
なので、瑠璃さんの創作意欲を高めることができたなら、大変光栄に思います♪
由旬さん>
そうそう、尚隆は弱さと強さを併せ持つ陽子主上に惹かれているのだと思います。
そして、年若い伴侶に勝手に振り回されている自分を解っているからこそ、
困らせたり怒らせたりしたいんでしょうねぇ(笑)。
みるくうさぎさん>
涙を見せてもそれ以上甘えたくない陽子主上、私の萌えツボでございます。
で、尚隆にはそれを見守ってほしいのでございます。
ご理解いただけて嬉しく思います。
リラ冷え 瑠璃さま
2010/05/29(Sat) 00:22 No.1038
リラ冷えとは初めて聞きました。
成程、北海道はライラックの名所ですもんね。
以前、姫ライラックを鉢植えで育てていてお気に入りだったんですが、
3年後に枯らしてしまいました(T_T)
またいずれ育ててみたいとずっと思っています。
風邪は大丈夫ですか? お大事になさって下さいね。
リラ冷えは 未生(管理人)
2010/05/29(Sat) 07:45 No.1039
渡辺淳一の小説からきているらしいです。
北の国はライラックが咲く頃に一度冷え込むことが多いので、
ラジオのニュースなどでも使われているんですよ〜。
ライラックは我が街の木でして、花の時季には街がこの香りに包まれます。
姫ライラックは初めて聞きました。小さめのライラックなのですね〜。
ライラックは結構大きくなるので、コンテナサイズの大きさはよいですね。
風邪を労ってくださってありがとうございます。お蔭さまでだいぶ良くなりました。
6時の気温は9.9℃。勿論今日もストーブが点いております(笑)。