「管理人作品」 「10桜祭」

密かな対決@管理人作品第14弾

2010/05/30(Sun) 07:34 No.1050
 3/10に高知で最初のソメイヨシノが開花して始まった今年の桜祭も大団円の時を迎えました。 北の国は近年稀に見る低温状態が続き、祭開催期間は過去最長でございます。 長い祭にもかかわらず、掲示板はいつも皆さまのご投稿で賑わっておりました。 管理人、ほんとうに感謝しております。

 会期が長い割に管理人の作品は大した数ではないのですが、 最後の連鎖妄想小品を投下いたします。
 瑠璃さん作#630「挿頭花(かざし)」及び#803「挿頭花 浩瀚Ver.」、 翠玉さん作#833「桜の戯れ」及び#851のコメントから妄想しております。
 けれど、素敵な作品の続きではなく、あくまで管理人が妄想するとこんなお話になるよ、 と書き流したものでございます。 瑠璃さん、翠玉さん、管理人に萌えをくださってありがとうございました〜。

※ 管理人の作品は全て尚陽前提でございます。

密かな対決

2010/05/30(Sun) 07:39 No.1051
「お招きありがとうございます」
 そう口上を述べて、男装の麗人は優雅に拱手した。緋色の長い髪がさらりと音を立てて肩から滑り落ちる。その、下げられた頭を飾る、薄紅の花。簡素な装いを好む女王には珍しいそれに、延王尚隆は目を細めた。
「──お気づきになりましたか」
 顔を上げた景王陽子は悪戯めいた笑みを浮かべ、そっと桜の挿頭花に触れる。尚隆はにやりと笑って頷いた。
「用意のよいことだ」
「用意させたのは誰だと思います?」
 陽子もまたにやりと笑い、楽しげにそう訊ねる。尚隆は破顔した。
「そう言うからには、祥瓊や鈴ではないな」
 観桜の宴に招かれて、桜の生花の挿頭を用いるのは女史や女御のやり方ではない。陽子はくすくすと笑い、問いを重ねる。
「では、誰だと?」
「答えは後だ。お前は衣服を改めろ」
 そう言い様に居並ぶ女官に合図した。隣国の美貌の女王を飾る機会を心待ちにしている女官たちはすぐさま国主の命に従う。
「延王!」
 女王の抗議を黙殺し、挿頭花に合うように、と女官に言い添える。女官は速やかに女王を宮城に連れ去った。後には女王の悪態が長く尾を引いていた。

「え、延王……」
「楽俊、花見は美しい華とともに過ごしたいとは思わぬか?」
「へー、お前でもそんなこと思うんだなー」
 口を開きかけた女王の旧友は苦笑を浮かべ、事態を静観していた雁国宰輔は面白げに感想を述べた。やがて。
 簡素だが上品な襦裙に身を包んだ女王が蹙め顔で宴席に現れた。雁国国主の命どおり桜の挿頭が引き立つその装いに、六太は口笛を吹き、楽俊は感嘆の溜息をつく。尚隆はその様子を満足して眺めた。
「──たまにはよいものだろう?」
 楽俊も喜んでいるぞ、と続けると、女王はますます嫌な顔をした。
「気の毒な私の友を引き合いに出さないでください。こんなことが続いたら、もう雁には来ませんよ」
「──景麒かとも思ったが、浩瀚だな」
 憎まれ口をにやりと笑って聞き流し、先刻の女王の問いに答えを返す。陽子は素に戻り、翠の瞳を大きく見張った。
「──どうして?」
「どうやら正解のようだな。では褒美をいただこう」
 尚隆は呵々大笑し、困惑する女王に酒杯を差し出す。陽子は眉を顰め、楽俊と六太を見やった。楽俊は苦笑を隠さない。そして、延麒六太は大仰に肩を竦めて見せただけ。尚隆は再び陽子を促した。
「どうした? 正解なのだろう?」
「あなたというひとは、ほんとうにわけが分からない」
 陽子は諦めたように酒瓶を手に取り、尚隆の杯に酒を注いだ。尚隆はそれを美味そうに飲みながら笑う。
「お前が来ないなら、俺が行くからよいぞ。但し──」
 楽俊には会えなくなるがな、と続けると、陽子は大きく嘆息した。雁国国主と慶国冢宰の密かな対決を、当の女王だけが理解していない。女王の旧友と雁国宰輔は、顔を見合わせて苦笑するのみだった。

2010.05.30.

後書き

2010/05/30(Sun) 07:45 No.1052
 ──やっぱりコメディになってないような気がいたします。あはは(乾笑)。 それでも、自分をめぐることについては鈍感な陽子主上は私の萌えツボでございます〜。

2010.05.30. 速世未生 記

どうもありがとうございました! 空さま

2010/05/30(Sun) 15:55 No.1054
 桜祭、今年も大変面白かった!
 たくさん感想を書きたいのですが、いろいろあってすみません。 実は、空は未生さまの書かれる浩瀚、好きなんですよ〜出てきませんけど、 浩瀚の影が見えてうれしいお話でした。
 お祭りが終わってもよろしくお願いいたします。 また、こちらのお祭りに書き込まれた皆様。 いろいろなお話、写真や絵、コメントなどなど、大変楽しく読ませていただきました。 お返事できなくて大変申し訳ありません。 終わってしまうのが切ないですが、本当にありがとうございました。 未生さま、お疲れさまでした!

最後の最後に ひめさま

2010/05/30(Sun) 16:47 No.1055
浩瀚の影が見え隠れするお話で嬉しかったです。 楽俊、尚隆、六太とともに華見もできましたし(笑)。 しっかり対決できてましたね〜

やはり、延王は受けて立つのですねv 翠玉さま

2010/05/30(Sun) 21:49 No.1060
 慶国官吏達の主上への思い入れを知っていてもなお成り立つ尚陽 というのを読んで見たかったのですよねーv  物分かりのいい慶国官吏ばかりだと延王も面白くないのでは、と思うわたしって、 どこまでvs好きなんだと思われることでしょう。
 正当な二次はらぶらぶいちゃいちゃだということは理解しているのですが、 ついつい面倒を持ち出してしまいます。 未生さん、お付き合い下さり、ありがとうございますm(__)m

お疲れ様でした ネムさま

2010/05/30(Sun) 22:16 No.1063
お疲れ様でした
 お祭りの最後に尚隆がやってくれました。 ライバルの着けた簪が映える装いをさせるとは、さすが500年の年の功ですね。 でもそれを聞いて浩瀚も笑ってそうだけど。 間でちょっと困っている楽俊が可愛いです。
 3ヶ月間、本当に楽しかったです。あらためてお礼申し上げます。 家の桜もこうなりました←。 このお祭りでたくさんの花が咲いて実がなった―そんな気分を味わってます。

感想とあいさつを兼ねて けろこさま

2010/05/30(Sun) 22:47 No.1064
 受けて立ったのか、これ幸いにと衣服を改めさせる口実に使ったのか…… どっちかわからないところが、管理人さまの延帝らしいですわ〜^^
 それにしても、鈍チン陽子さんが不憫〜(笑)  普段の陽子さんは延帝に勝つ気があまりないから仕方ないか^^

 約80日もの間続いた今年の桜祭、本当にお疲れさまでした。 参加者数、コメント数も最多じゃないでしょうか?
 自身を振り返ってみて、途中休場で半分ほど参加できず 妄想を消化しきれなかったのが心残りです。
 管理人さま並びに常連の方々、新しく参加された方々、 皆さんと明るく楽しい交流の時間が持てましたこと、本当に有り難く思っております。 きっと開催されるであろう(笑)次回、またお会いしましょうv  そして、管理人さま、残りのログ作成お疲れ様ですv

お疲れ様です。 瑠璃さま

2010/05/30(Sun) 23:45 No.1069
 鈍感? 天然? いやここまでくるとある意味とても罪作りな陽子さん(笑)。 素に戻るところがたまらなく可愛いです。

 過ぎてみると、あっというまの3ヶ月でした。 こんなに長く、楽しく桜の時期を過ごしたことはありません。 ありがとうございました。

お疲れさまでした! みるくうさぎさま

2010/05/30(Sun) 23:56 No.1071
 最後に楽しいお花見のお話で、楽しかったです! 浩瀚もちゃっかり存在を主張してましたね。

 そして未生さま、3ヶ月もの長い桜祭、本当にお疲れさまでした!  初めてだったのですが、とても楽しかったです(^o^)
 参加されていた皆さまも、これをご縁に末永くよろしくお願いしますm(_ _)m  ありがとうございました。

Re: 最後の連鎖妄想 griffonさま

2010/05/31(Mon) 01:12 No.1080
 延帝らしいっ(^_^)v
 きっちりと切り返すとこがさすがです。 陽子を介してのやりとりが洒落が効いてるんですが・・・ 当の陽子さんが(^_^;) この自身へのニブさが陽子さんの売りではあります(笑)けどね

ご感想御礼 未生(管理人)

2010/05/31(Mon) 09:40 No.1082
空さん>
 本文に登場しない陰の浩瀚をお楽しみくださってありがとうございました! 今年は浩瀚本人を書くと全て末声になってしまって……。 ここで存在を感じていただけて嬉しく思います。
 お忙しい中、今年も祭にご参加くださり感謝の言葉もございません。 また、管理人業を労ってくださってありがとうございます。 これからもよろしくお付き合いくださいね。

ひめさん>
 浩瀚好きのひめさんに末声じゃない浩瀚をお送りできてよかったと思います(笑)。 密かな対決をお楽しみいただけて嬉しいです。ご感想をありがとうございました。

翠玉さん>
 「慶国官吏達の主上への思い入れを知っていてもなお成り立つ尚陽」になっていたなら 嬉しく思います!  そう、尚隆なら笑いながら受けて立つでしょう! との妄想でございました。 私の妄想では尚隆が来ると「露骨に嫌な顔をする景麒」と 「涼しげに笑いながらも慇懃無礼な浩瀚」が定番かもしれません。 「尚浩対決」は萌えツボのひとつでございます。 らぶいちゃに飽きると書いているかもしれません(苦笑)。
 今回は翠玉さんにツボを押され捲りでございました。 「小松乙女」とかも纏めたかったのですが、己の容量の小ささに負けました……残念!  萌えを沢山くださってありがとうございました!

ネムさん>
 後日譚を書きたくなるようなコメントをありがとうございます(笑)。 きっと、浩瀚は事の顛末を密かに班渠から聞くんだろうな〜。 それと、一言で口を塞がれてしまった楽俊に目を留めていただけて嬉しかったです。
 今年もご参加くださりありがとうございました。 ネムさんの数々の美しい言葉に心癒されましたよ。  可愛いサクランボも微笑ましいです。最後まで妄想を誘う美しい言葉をありがとうございました! ああ、実はさくらんぼネタもひとつあったのですよ〜。間に合わなくて残念です。

けろこさん>
 「受けて立ったのか、これ幸いにと衣服を改めさせる口実に使ったのか」 そりゃあもう両方でございましょう(笑)。うちの尚隆は陽子主上の困り顔がお好き♪  そうそう、考えてみれば「尚陽対決」は「黄昏」と「昏闇」だけですね。 実はどちらも好きです(邪……/笑)。
 今年もバナー作成からご協力くださり、ほんとうにありがとうございました。 けろこさんなしの祭は考えられないです。途中離脱はほんとうに残念でございました。 無事に戻られてよかったです〜。無理なさらずに少しずつ社会復帰してくださいね。
 またまた鬼が笑うようなことをおっしゃる……(苦笑)。鞭片手にこき使いますよ!  とりあえずログ作成、頑張ります〜。

瑠璃さん>
 天然陽子主上を可愛がってくださってありがとうございます。
 初参加にして大量の萌えをくださり、なんとお礼を申し上げてよいのやら……。 「花見」「花陰」の妄想も昇華したかったです〜。 こちらこそ3ヶ月間ありがとうございました!

みるくうさぎさん>
 拙い小品をお楽しみくださってありがとうございます!  そして、本文に出てこない浩瀚の存在を感じ取っていただけて嬉しく思います〜。
 サイトをお持ちでない読み専の方にもお気軽にご参加いただきたいと願っておりました。 写真やコメントでのご参加、ほんとうに感謝いたしております。 これからもよろしくお願いいたしますね!

griffonさん>
 尚隆の切り返しをお褒めいただけて嬉しいです♪  そうそう、この鈍さが陽子主上の魅力のひとつでございましょう(笑)。 ご感想をありがとうございました!
背景画像「Studio Blue Moon」さま
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