「束の間の静寂」@管理人作品第1弾
2011/03/25(Fri) 10:38 No.78
本日3/25、松山にてソメイヨシノが開花いたしました。(12時追記)
週末はなかなか浮上できない管理人でございます。
金曜日の内にひとつ小品をば。「早春の緋桜」浩瀚視点をどうぞ。
※ 管理人の作品は全て尚陽前提でございます。
- 登場人物 浩瀚・景麒・陽子
- 作品傾向 ほのぼの
- 文字数 680文字
束の間の静寂
2011/03/25(Fri) 10:41 No.79
暖かな風が回廊を吹き抜けていた。季節は確実に春に向かっている。冢宰浩瀚は季節が進むにつれて華やぐ麗しき主を思い、唇を緩めた。
浩瀚の向かう先である国主の執務室からは控えめな話し声が聞こえる。衝立から覗き見ると、主が宰輔と並んで庭院を眺めているところだった。
大きく開かれた窓から花の匂いを孕んだ風が吹きこみ、主の緋色の髪を靡かせている。主は嬉しそうに花芽が膨らんだ桜を眺めていた。そして、宰輔はそんな主の麗しい横顔を見つめている。それは一幅の絵のように美しい光景で、浩瀚は目を細めた。
やがて、主は宰輔の視線に気づき、不思議そうに己が臣を見やる。宰輔は口籠り、横を向いて答えた。
「──そろそろ仕事に戻られては如何ですか?」
あまりにも宰輔らしいその応え。浩瀚は笑いを堪えつつ主の反応を窺う。主は呆れたように目を見張り、宰輔に言葉を返した。
「お前はいつも朴念仁だな。まあ、景麒だから仕方ないか」
主は満開の緋桜の如き鮮やかな笑みを己が半身に向けた。宰輔は主に向き直り、深く頭を下げる。その背を軽く叩き、主は書卓に戻った。
国主の執務室は静寂に包まれる。聞こえるものは、筆が滑る音と時折風が揺らす紙の音のみ。が、書簡を捌く国主の側に控える宰輔は、柔らかな眼で主を見つめ、穏やかな空気を醸していた。
浩瀚は気配を殺し、そっと踵を返す。そうして蕾が膨らみ始めた庭院の桜を眺めた。
この桜よりも美しい緋桜を素直に褒め称えられない不器用な宰輔。その憩いのひとときに水を差すまい。どのみち、近い内に春の大嵐がやってくるのだから。
束の間の静寂を、己も楽しもう。
そう思い、浩瀚はひとり微笑した。
2011.03.25.
後書き
2011/03/25(Fri) 10:49 No.80
「早春の緋桜」を書きながら、同じ状況で浩瀚だったら流れるように陽子主上を
褒め称えるのだろうな〜と思っておりました。
で、あの状況を浩瀚が見たらどう思うのかな〜と思って書き流しました。
──そうか。浩瀚、景麒思いだな〜。
これで中にいるのが尚隆ならば、きっと慇懃無礼に入っていくのでしょうね(笑)。
さて、週末になります。皆さまのご投稿をまだまだお待ち申し上げております!
2011.03.25. 速世未生 記
あ、なるほど! 空さま
2011/03/25(Fri) 21:37 No.81
浩瀚は帰って行くのですね。
やっぱりそっとしておきたかったんですね〜ほのぼの主従。
あとがきを読んでさらに納得しました。
延王でしたらそれは入って行くでしょう!
慶には慶の桜が咲く、浩瀚の包み込むようなまなざしが目に浮かびます。
桜祭り開催を楽しみにしておりました☆ 翠玉さま
2011/03/25(Fri) 21:47 No.82
お久しぶりです。
近頃ネットはニュースしか見ていなかったので、こちらで命の洗濯をさせて頂きますねー!
ソメイヨシノの開花に気付いたのは2日前、こちらは昨日から覗いておりました。
せめて拍手でもお送りするのだったと今頃気付きました。マヌケ過ぎるっ(^^ゞ
わたしはビジュアルならやはり、景麒&陽子が好きですー!
今年は景陽派の方の参加もあって楽しみですワv
「早春の緋桜」も良かったけど、この少し離れた位置から垣間見る方がもっと萌えますね!
それに浩瀚なら確かに言葉を連ねて陽子を誉め称えられますよ。
わたしが浩陽を作る楽しみがまさしくそれでしょうv(^◇^)
陽子に捧げられる称賛は読んでいて心地良いですv
他は藍滌とか六太君、熊将軍でしょうか。春の大嵐はからかっていると思われそう・・・
静寂というより、嵐の前の静けさに感じるのはわたしだけではありますまい。
嵐編も楽しみにしていますねv
空さんもご無沙汰してますー!
今年もよろしくお願いしますm(__)m
リベンジかな? ネムさま
2011/03/25(Fri) 22:47 No.85
確か昨年は景麒の出番が少なかったような…今年は復活の兆しで楽しみです。
慶は一丸となって大嵐から陽子を護っているようですね。
浩瀚と景麒の会話も一度じっくり聞いてみたいです。
翠玉さん、お久しぶりです。またお話を読めるのを楽しみにしています。
ご感想御礼 未生(管理人)
2011/03/26(Sat) 07:22 No.90
皆さま、ご感想をありがとうございます。励みになります〜。
空さん>
はい、浩瀚はほのぼの主従を温かく見守っております。
そんな浩瀚を目に浮かべてくださってありがとうございます。
翠玉さん>
ご無沙汰しております。今年もいらしていただけて嬉しいです。
拙作にご感想をありがとうございました。今年は何故か景麒が出張っております。
今まで出番が少なかった鬱憤を晴らすかのようでございます。
お楽しみいただけてよかったです〜。
確かに、静寂というより嵐の前の静けさなのかもしれません。
今年はかの方が何をしてくださるか、私も楽しみでございます。
翠玉さんのご投稿もお待ち申し上げておりますよ!
ネムさん>
景麒、確かに昨年はあまり書いていないかも。リベンジの年なのかもしれません(笑)。
実は「陽子主上の側近VS延王尚隆」というのは、私の好物かも。
対策を練る景麒と浩瀚というのも面白そうですねぇ。
タッグチーム 由旬さま
2011/03/26(Sat) 13:14 No.94
良いですね! 浩瀚と景麒が組んで対延王。
それでも、よほどの必殺技でも編み出さない限り、延王の一人勝ちでしょう。
それにしても、同じほのぼのでも視点が違うと、浩瀚のはちょっと黒いと思ってしまいました。
嵐を前にしても、さすが浩瀚は落ち着いてますね。
たしかに! 黎絃さま
2011/03/27(Sun) 18:13 No.123
浩瀚は隣国の王様より自国の台輔に優しそうです。
態度がガラリと変わるでしょう。
うーん、実際に尚隆の前では打って変って邪魔をする浩瀚も見てみたいところです。
ご感想御礼 未生(管理人)
2011/03/28(Mon) 15:53 No.142
由旬さん>
タッグチーム、想像してちょっと笑ってしまいました〜。
そうですね、私が書くと、浩瀚はいつも微妙に黒くなってしまいます。
なんででしょうね?
そして、冷静さを保つことが逆にかの方への対抗心の表れなのかもしれませんね(笑)。
黎絃さん>
浩瀚は不器用な景麒を不憫に思っていることでしょう。
そして、かの方には冷静に対処しつちょいと邪魔をするのでしょうね(笑)。
背景画像 瑠璃さま