夜桜奇譚@管理人作品第10弾
2011/04/10(Sun) 06:39 No.338
皆さま、祭掲示板に沢山のご投稿をありがとうございます。
拍手をくださった方もありがとうございました。
桜が広がるにつれて祭も華やかになってまいりました。
つられて落ち着かないので、先に作品を投下させていただきます。
後程レスにまいりますね〜。
まずは桜の開花情報をお知らせいたします。
4/7に金沢・福井、8日には富山にてソメイヨシノが開花いたしました。
桜前線、北陸に到着でございます。
そして、7日には下関・長崎・熊本・岡山・大阪・京都・和歌山、
8日には高松・徳島・鳥取・奈良・熊谷・横浜・甲府にて満開宣言が出されました。
春は着実に北上しておりますね。
では管理人、一日遅れではございますが、小品を投下いたします。
瑠璃さん作#180「夜桜」の連鎖妄想でございます。
よろしければお楽しみくださいませ。
※ 管理人の作品は全て尚陽前提でございます。
- 登場人物 陽子・祥瓊
- 作品傾向 しっとり
- 文字数 944文字
夜桜奇譚
2011/04/10(Sun) 06:45 No.339
夕食後も執務室に戻ってしまった国主を労おうと、祥瓊は茶菓子を持って歩いていた。人少ない回廊には月光が射しこみ、行き先を明るく照らす。思わず窓の外を見やると、大きな月に照らされた満開の桜が淡く光っていた。
薄紅の花が月明かりで白く浮かび上がる様は幻想的で、祥瓊は思わず感嘆の溜息をつく。この景色をいつも忙しない毎日を送る友人にも見せてあげたい。祥瓊はそう思った。
「そうね、陽子を誘って夜桜見物でもしようかしら」
祥瓊はそうひとりごち、国主景王の執務室に足を運んだ。しかし、残業をしているはずの女王は不在であった。小卓には自ら淹れたであろう茶が微かに湯気を立てている。祥瓊は軽く舌打ちをした。まだそれほど時間が経ってはいないだろう。茶菓子を調達しに堂室を出たのなら、途中の回廊で出会うはず。ならば。
祥瓊は持参した茶菓子を小卓に置き、庭院に通じる大きな窓を開いた。隣国の主従から譲り受けた桜の樹は、今や満開の華やかさで祥瓊を誘う。微風にさやぐ桜花は、月光に照らされて、妖しいほどに美しかった。
「──陽子?」
夜桜に呑まれぬよう、祥瓊は声を張り上げた。しかし、応えはない。ただ、桜の枝が風にそよぐ音がするだけ。祥瓊は用心深く桜の樹に近づいた。そのとき。
くすり、と小さな笑い声がした。が、人の気配はない。そこには、ただ桜が立っているだけ。祥瓊は少し怖くなった。恐る恐る辺りを見回した。やはり、誰もいない。そんな祥瓊を楽しむかのように、笑い声は少し大きくなった。
「──よ、陽子?」
「ここだよ」
不意に笑い含みの声が降ってきた。祥瓊はつられて顔を上げる。その目に映ったものは、桜の枝に腰を掛けて艶やかに笑む女神であった。月の光に照らされて白く輝く桜花を纏い、緋色の髪を微風に靡かせるその夢幻の美しさに、祥瓊は息を呑んで立ち尽くした。
「祥瓊?」
緋桜の女神は不思議そうな顔をして瞠目する祥瓊を見つめる。名前を呼ばれ、祥瓊はやっとそれが探していた女王だと気づいた。
「──しばらく、そのまま微笑んでいてちょうだい」
我が友は黙っていれば女神のように美しいのだ、と気づかされた祥瓊は、にっこりと笑みを浮かべて陽子に素直な要望を述べる。枝から降りようとしていた麗しき女王は、小首を傾げながらもそんな友の願いを叶えたのだった。
2011.04.09.
後書き
2011/04/10(Sun) 06:47 No.340
瑠璃さんの素敵絵を拝見してからずっとむずむずしておりました。
漸く昇華できて嬉しく思います〜。
あの絵のイメージを壊していなければよいのですが。
まだまだ皆さまのご投稿をお待ち申し上げております!
2011.04.10. 速世未生 記
美しい陽子さん! 空さま
2011/04/10(Sun) 11:27 No.342
夜、人気(ひとけ)のない執務室の外で何か気配がする…。
桜が美しいだけに、祥瓊が不安になる気持ちが伝わってきました。でも、陽子さんでした。
祥瓊がぐっとくる美しさ! まさに瑠璃様の絵のような陽子さんではないでしょうか?
執務を抜け出して夜桜に登る陽子さんの様子がうかがえます。
このあと、外でお茶菓子をいただいたのでしょうか?
最近空の近所は暖かく、雲海の上と同じくらい夜もすごしやすくなりました。
絵も素敵でしたが、お話も素敵です!
名のとおり ネムさま
2011/04/10(Sun) 20:30 No.368
こちらのサイト名「夢幻夜話」その名のとおりのお話ですね。
月光の凄みがあるような、それでいて桜の霞がかかっている美しさです。
祥瓊はいつまでも離れられないでしょうね。
瑠璃さんの絵と一緒に並べて、また読みたいです。
ありがとうございます! 瑠璃さま
2011/04/10(Sun) 21:53 No.375
素敵なお話、連鎖妄想をありがとうございます。
電気がなく月の光にだけ照らされている桜は、確かに妖しい感じがしそうです。
「黙っていれば」という祥瓊のツッコミ(?)に頬がゆるみました。
悪戯心? 由旬さま
2011/04/11(Mon) 13:57 No.391
陽子は祥瓊が来ると予想して、隠れて脅かしてやろうかと悪戯心から木に登ったのでしょうか。
でも計らずしも祥瓊を驚かすだけでなく感嘆させてしまった陽子。
なんか、罪だなぁ〜ちょっぴり小悪魔的なのは、妖しい夜桜のせいでしょうか。
ご感想御礼 未生(管理人)
2011/04/11(Mon) 14:53 No.393
空さん>
祥瓊の不安を感じ取ってくださってありがとうございます。
その後に見たから余計に美しく見えたでしょうね〜、樹の上の陽子主上。
きっとその後は夜桜見物しながらお菓子を食べたのでしょうね。
空さんのご近所は暖かくて羨ましいです〜。
北の国の夜はまだひとケタ気温でございますので。
ネムさん>
私の文章よりもネムさんのご感想の方が余程美しいです〜。
いつもありがとうございます。
瑠璃さんの素敵絵と並べられたら見劣りしてしまうのでご勘弁を(笑)。
瑠璃さん>
連鎖妄想をお許しくださりありがとうございました。
祥瓊は身近にいるだけに、陽子主上の見た目と中身のギャップに溜息をついているでしょうね〜。
笑っていただけて嬉しく思います。
由旬さん>
樹に上ってからいつも気が強い祥瓊の不安げな姿に悪戯心を刺激されたのではないかと。
いつもながら自分の容姿のことなど頓着ないですよね〜。
皆さま、ご感想をありがとうございました。
背景画像 瑠璃さま