「管理人作品」 「11桜祭」

「紅枝垂れ」@管理人作品第6弾

2011/04/26(Tue) 09:26 No.656
 皆さま、祭掲示板にご投稿及びコメントをありがとうございます。
 今朝9時の気温は10.9℃。ふたケタでございますよ!  予想最高気温は15℃。ゆるゆると桜が近づいてくるような気がいたします〜。
 さてさて、管理人はまたも連鎖妄想小品を仕上げました。 今回はさくやさんの#353「桜だより その8」ベニシダレ及び #364空さん・#366ネムさんのコメントからの妄想でございます。
 原作では利広と陽子は出会っておりません。捏造注意!  苦手な方はご覧にならないでくださいね〜。

※ 管理人の作品は全て尚陽前提でございます。

紅枝垂れ

2011/04/26(Tue) 09:28 No.657
 麗らかな春の風に薄紅の花が揺れている。慶東国国主景王はこの花をこよなく愛しているのだ、と人々は目を細めていた。王都堯天を中心に少しずつ増えているその樹の名は桜。春の訪れとともに誇らかに花開く数多の桜花を、利広は感慨深く見上げていた。
「綺麗だろう?」
 同じように桜の樹を見上げていた男がそう声をかけて破顔する。土地の者であろう男を見やり、利広は素直に頷いた。
「ほんとうに綺麗ですね」
「桜には色々な種類があるらしくてな、淡い色だったり、濃い紅だったりするんだ。ほら、あんなふうに」
 そう解説し、男は自慢げに指差した。視線を移した利広は感嘆の溜息を零す。そこには、春風に緋色の枝を靡かせる見事な桜が立っていたのだ。あれは枝垂れ桜という種類なのだ、と説明する男に礼を述べ、利広はゆっくりとその桜に近づいた。
 濃い紅の八重花が微風に揺れる様は、正にこの国の女王の姿そのものだ。緋色の髪を簡素な組紐でひとつに括り、男物の袍を纏いながらも凛然と美しい景王陽子。年若き女王を思い出し、利広は唇を緩めた。
 鮮烈な紅の女王との邂逅。偶然とも必然とも言えるあの僥倖から幾年が過ぎただろう。初勅にて伏礼を廃した胎果の女王は、着実に国を立て直している。荒れていた大地には緑がかなり戻った。国に恵みを齎す王を慕う民人は、感謝を籠めて主が好む桜花を植える。そうしてこの国は美しき薄紅の花に包まれていくのだろう。

「──いつか、また会おう」

 忘れ難き鮮やかな笑みにそっと語りかける。その頃には、国主を象徴するこの花が、国中に咲き誇っているかもしれない。揺れる紅の枝垂れ桜の枝に手を伸ばし、利広は楽しげに笑ったのだった。

2011.04.26.

後書き

2011/04/26(Tue) 09:30 No.658
妹が名に 懸けたる桜 花咲かば 常にや恋ひむ いや年のはに
万葉集 巻16-3787

(愛しいあの娘の名にかかわりのある桜、その桜の花が咲く時になると、 いつも恋しさにたえきれないであろう。来る年も、来る年も。)

 さくやさんが添えてくださったこの歌を読んで、私が真っ先に思い浮かべた人物は 利広でございました。 空さんとネムさんのコメントがまたえらくツボに入って悶え苦しんでしまったのでした。
 捏造激しくて申し訳ないのですが、書かずにはいられなかった小品でございます。 お粗末でございました〜。

 後程レスしに戻ってまいりますね。

2011.04.26. 速世未生 記

利広 由旬さま

2011/04/26(Tue) 10:40 No.664
 歌のイメージとシンクロして、利広の密やかで強い想いが伝わってくるようです。 まるで利広が詠んだ歌のように思えてきました。
 慶から遠い土地を彷徨っていても、春になって桜を見ると陽子を思い浮かべ 想いを募らせている利広。 瞬発力のあるどこかの御仁とはまた違う形の恋だなぁ。

ご感想御礼 未生(管理人)

2011/04/26(Tue) 17:37 No.679
 由旬さん、「まるで利広が詠んだ歌のように思えてきました」で吹きました!  でもそう思っていただけて嬉しいです〜。
 そうそう、かの方ならば、思い立ったが吉日ですぐ来てしまうでしょうから、 こういう想いは利広ですよね〜というのが管理人的脳内妄想でございます。 ご感想ありがとうございました!

いやもうほんとに 瑠璃さま

2011/04/26(Tue) 20:14 No.685
この未生さんのお話を読んだら、あの歌は利広が詠んだようにしか思えなくなりました(笑)。
 仙であり、すでに長い時を生きてきたからこそでしょうか、この気の長さ…。 しかも単純に気が長いわけでもないし。
 秘めた想いの強さが歌とともに伝わってくるようでした。

同じ感想で誠に申し訳ありませんが… 空さま

2011/04/26(Tue) 20:31 No.688
 空も、あの歌は利広さんが詠んだんだと思ってしまいました。 とはいえ、やはり桜は周りに住んでいる人に好かれるんですね〜〜 通りすがりのおじさまも(若者か??)桜を地味に自慢していますし(にっこり)。 蓬莱全国、こんな方がたくさんいらっしゃると思います。
 ブラボー桜祭!!

そうです。 桜蓮さま

2011/04/26(Tue) 20:36 No.689
このお話を読んだら、あの歌はもう利広さんのものにしか聞こえません(笑)。
 桜に手を伸ばしながら微笑む利広さんの様子が、目に浮かぶようでした。 きっと彼はずっと、例え二度と会えなくても、桜と共に陽子を想っていくのでしょうね。 思わずそんな想像をしてしまうお話でした。

今年も深い ネムさま

2011/04/26(Tue) 22:11 No.694
 自分が何を言ったかと、先程必死で地層を掘り起こしていました。 やはり今年のお祭りも発掘作業ですね(でも宝物がいっぱいで楽しい^^v)
 確かに遠くから想い、しかも近くまで来ても、するっと過ぎてしまう風来坊振りは利広ですねぇ。 一筆書いて、枝垂れの枝に結んで行ってしまう姿を想像してしまいました(笑)

オトコ心と春の空?  饒筆さま

2011/04/27(Wed) 00:35 No.699
 確かに一番似合います! 利広さんにかかると、片想いまで粋ですねえ〜。
 でも一体、あの御仁の「我が妹」は何人居るのでしょう?(笑)

にやり(笑)  未生(管理人)

2011/04/27(Wed) 09:15 No.705
 皆さま、ご感想をありがとうございます。あの歌の詠み人は利広ということで(笑)。

瑠璃さん>
 にやりと笑いたくなるようなご感想をありがとうございます。
 そうです、ただ単純に気が長いわけではないのが拙宅の利広でございます。 腹黒い深謀遠慮の中に強い想いを秘めておりますよ〜。 それも天意を信じているからだと妄想が暴走しております(笑)。

空さん>
 一慶国民をお気に留めていただき、嬉しく思います。 モブの人物は描写を控えるよう心掛けております。どうぞご自由にご想像くださいませ!

桜蓮さん>
 妄想を邁進させるご感想をありがとうございます。 実は連作の一場面を切り取ったような小品でございますので、 あれこれ想像していただけて嬉しいです!

ネムさん>
 はい、今年は1頁につき親記事5つにしてみましたが、やはり地層が堆積してまいりましたね。 祭大盛況で有り難く思っております。 その地層発掘作業を促してしまって恐縮でございます。 私も瞬発力が減少し、即興連鎖ができなくなってご迷惑をおかけしております〜。
 一筆書いてってよいですね!  ちょっとムラムラしてしまいます〜。 祭掲示板では無理かもしれませんが、昇華してみたいです!

饒筆さん>
 利広の片思いを「粋」とお褒めくださりありがとうございます!
 管理人的妄想では、本命は陽子主上ただひとり。尚隆とは腹黒く対決いたしておりますよ〜!
背景画像 瑠璃さま
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