「投稿作品」 「11桜祭」

今日はメーデーなので! 空さま

2011/05/01(Sun) 07:02 No.749

 直接桜の話ではありませんが、新作投稿いたします。

登場人物   塙麒の使令・塙麒(オリキャラ)・班渠・什鈷  
作品傾向   ブラックなギャグ(末世厳重注意)  
文字数   2230文字  

十二国全使令労働組合連合会議

空さま
2011/05/01(Sun) 07:03 No.751

 俺は妖魔だ。
 いや、今では使令と呼ばれているか?
 その種を錆翡と言う。見知り置いてもらいたい。
 まだ若き塙麒の使令である。は?何代目の塙王かって?いや、俺は使令なのでそんなことは知らない。塙麒は、まだ幼さの残る少年だが、誠実で気持ちの良い少年だ。仕えることになったのは塙麒が塙王と出会う少し前だったようだ。
 俺は久しぶりの黄海で、自分の欲するままに飛び、駆け、屠っていた。そんな休日まがいの気分もつかの間だったな。塙麒の熱い視線を感じたのさ。あの、麒麟独特の良い香りに囚われ、自分の名を吸い取られたように思った。
 こんな経験は何度もするものではないと思いながらも、俺は山と積まれた玉よりも、もっともっとかぐわしい馳走に狂った。そして、気付いた時にはもう塙麒の使令となっていたのだ。
 こう見えても、俺は塙麒の筆頭使令だ。
 塙麒はその若さに似合わず、とても力の強い麒麟だったようで、何匹もの使令を従えていた。しかし、俺、錆翡の右に出る妖魔はいなかったようだな。
 
 巧国はかなり荒廃していた。俺は塙麒の命ずるままに、新しく起った塙王のために国中を駆けまわった。そんな時だ。使令の集まる会議が存在していると、塙麒が知ったのは。無垢な塙麒は俺に出席しろと言う。辞退したんだが、お前が出ろと言うのだ。国として初めて出席するのに筆頭使令のお前が出なくてどうすると言われた。

 塙麒は、確かこんな風に言っていた。
「解るかな。これは、使令のための使令による団体なんだよ。『十二国全使令労働組合連合』って言うんだって。慶の赤髪の女王が作るように進めたんだそうだよ。すごい王様だよね。使役される使令にも幸せになる権利があるんだなんて、そんなこと一体誰が考えつくと思う?! だから、行ってきておくれ?頼むから。お前たちのためになると思うんだよ」
 
そりゃ、塙麒に褒められ持ちあげられて嬉しくないわけがない。しかし、正直あまり行きたくなかった。留守居をする俺以外の塙麒の使令も、俺ほどじゃないが実力者ぞろいだったから、俺がいなくても巧国の復興に支障が出たりはしないだろう。それは解る。
 しかしな……。
 向こう隣りの雁は、滅びたばかりだった。大国だったんだがな。
 すぐ隣の慶は、巧が復興するまでは絶対に倒れたりしないのだそうだ。赤髪の女王がそう言ったのだと。ふん、細かい事情なんか素人にはわかりゃしないからな。

 十二国全使令労働組合連合の会議など、行きたくないさ。しかし、塙麒は俺に命じた。無邪気な顔をして、本当に俺や俺たちのこと思って、塙麒は命じたんだ。悪気があるわけがない。行かずに済むわけがないんだよ。それに、命じられればやらざるを得ないように俺たちの頭も体もできている。

 そんなことを考えているうちに芳国の会場に着いた。遁甲すれば一飛びだからな。桜がちょうど咲き始めていた。芳は北の国だから、まだこれから満開になるのさ。十二国の王たちが、起こり、また倒れて行くように、少しずつ季節を移し、桜もまた咲いては散って往く。どうも、あの花は十二国の王に気に入られるようだな。
今日は五月一日。「めーでー」と言うのだそうだ。麒麟に使役されている使令と女怪の待遇改善のための話し合いが計画されている。会場に入るのは、気がめいる。今でもまだ健在な麒麟は沢山いるからな。
おっと、見たことのない女怪だ。芳国の女怪なんだろうな。何?名札をつけろ?!ああ、誰が見てもどこの国の使令か解るようにか。ふっ、笑っちまうな。普通に歩いていれば俺たちは妖魔だからな。なるほど、こういう気の回し方もあるのか。正直感心した。

会場では、俺とは別の使令同士が世間話をしていた。う、あいつらか。あまり顔を合わせたくない相手だった。できればそっとやり過ごしたいもんだ。

「おう、什鈷じゃないか。やっと代表を下りたのか?」
「ああ、おかげさまでね。班渠、そちらはどうだ?」
「慶はまあまあだな」
「心配は無いのか?」
「無いと言えば嘘になるな」
「待遇の方はどうだ?」
「いや、毎年のことで、もううんざりだよ。いつだったか、うちの主上が教えてくれたようにテンキンでもしてみたいぜ」
「職場を変わる、というやつか?」
「あれ、お前よく知ってるな」
「ああ、崑崙や蓬莱じゃよく要求の一つに挙がっているらしいからな」
「へえ、人間の話だろ?」
「当然だ」
「向こうに使令はいないのか?」
「軍隊はあるけど、使令はいないようだな」
「そうだよなあ、俺たちは簡単にテンキンなんてできないからな」
「麒麟が死ななきゃ、完全な自由は無いからな」
「おい、めったなこと言うなよ」
「何を言うか、お前さんから言い出したんだぞ」
「ああ、不公平だ。なんとかならねえのかな」
「そう言えば、今年は巧が代表を送ると言ってきた」
「へえ、そりゃすごいや」
「あそこは、しばらく荒廃していたからな」
「そうだったな」
「どんな奴が、くるかな?」

ちょうど嫌な感じで、二匹は俺の方を向いた。
「「!」」

よりによってこいつらか、と俺は思った。だから嫌だったんだ、ここに来るのは。
まあ、今は俺の方が新参なんだからこちらから声をかけるのが礼儀だろう。
「班渠、息災か?」
「おう、久しぶり。うちは微妙だな」
「什鈷はどうだ?」
「ああ、なんとかやってるよ、よく来たな。塙麒の使令で間違いないよな」
「なんか、受付で名札を貰ったぜ。間違いなんかねえよ」
そう答えると、あいつら声をそろえて言いやがった。

「「テンキンしたのか? 悧角!」」

おわり

毎度失礼いたします。 空さま

2011/05/01(Sun) 07:08 No.752

 実は空はリアルで転勤しました。
 昨年のことです。以前の職場はかなり遠くてもう体力が限界だったので、 無理を言って変えさせてもらいました。
 どちらが仕事が楽かといえば、何とも言えないのですが 通勤時間は40分ぐらい短くなったので、これで良しとしています。
 現実の十二国ではほとんどないかもしれない話ですが、絶対ないかといえば、 そうでもないかもしれません。
 十二国の使令(妖魔)は人にはあまりものをしゃべらないので、 あっても教えないかもしれませんが。
 麒麟が元気なうちはテンキンはないですよね〜

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