古の紅枝垂れ@管理人作品第10弾
2012/05/20(Sun) 14:31 No.1080
皆さま、こんにちは。管理人、ラストスパート終了の時がまいりました。
末声連発で大変失礼いたします。今年の最後の投稿となります。
さくやさんの#464の写真と歌を拝見し、昨年書いた拙作「紅枝垂れ」が頭を過りました。
というわけで、「紅枝垂れ」の遠い未来、拙作#1036「春慶の夢幻」利広視点、
陽子主上登遐後のお話でございます。苦手な方はご覧にならないでくださいね。
- 登場人物 利広・少年(オリキャラ)
- 作品傾向 しっとり(陽子登遐後末声注意!)
- 文字数 498文字
古の紅枝垂れ
2012/05/20(Sun) 14:34 No.1081
季節は巡り、今年もこの樹は美しく花開く。久しぶりに見た濃い紅の花びらは、懐かしい笑顔を思い起こさせる。利広はふと唇を緩め、胸で呼びかけた。
(陽子)
いつか文を結んだこの樹は、老いてなお美しい花を咲かせている。君が残したこの国は、未だ桜を想い、大切に手をかけているよ。君が愛したとおりに。
「――その桜は、古の女王の形代と言われているんだよ」
不意に声をかけられて、利広はゆっくりと頷いた。少年の声に、登遐した女王を厭う色はない。寧ろ、憧れと言っていい響きが籠められていた。それならば。
「彼女は、美しい緋色の髪をしていた……こんなふうに」
風に靡く優美な枝に手を伸ばし、利広は少年に答えた。鮮烈だった紅の女王を思い浮かべながら。
「――女王を……知ってるの?」
少年は、信じられない、というように目を見張る。長大な朝を築き上げ、桜のように潔く散っていった古の女王の伝聞は、年若い少年でさえ耳にしているのだろう。かの女王は、今尚この国に息づいているのだ。
利広は少年に笑みを返す。そして、春風に見事な花枝を揺らす紅枝垂れを眺めた。いつかまた、と胸で呟き、歩き出す。緋色の花が、待っているよ、と笑ったような気がした。
2012.05.20.
後書き
2012/05/20(Sun) 14:41 No.1082
花のごと 世のつねならば すぐしてし 昔はまたも かへりきなまし
古今和歌集 読み人知らず
(花のように一年経てば再び咲くことが世のすべての慣わしだとしたら、
過ぎ去った昔もまたかえってくるだろうに。)
さくやさんがご投稿くださったこの歌とベニシダレの写真で、
昨年のことがぶわっと頭を過りました。
けれど、なかなか上手く纏められずに四苦八苦……(苦笑)。
漸く風の御仁が語ってくださいましたので書き留めてみました。
これだけでも解るとは思いますが、連作の一編で失礼いたしました〜。
さて、これから少しずつレスをしてまいります。
作品投稿は本日中ですが、
ご感想及びレスは明日まで受け付けますので遠慮なさらずにご投稿くださいませ!
最後までよろしくお願い申し上げます。
2012.05.20. 速世未生 記
また還る ネムさま
2012/05/20(Sun) 19:41 No.1088
「春慶の夢幻」「花散時」と一緒にコメントさせて頂きます(m--m)
昨年と同じように咲いていても、
今年咲いた花は同じではないという歌があったと思いますが、
確かに陽子自身は戻っては来ないでしょう。
でも形代を懐かしそうに見上げる人の姿に、その行動によって、
赤女王に会ったこともない先の時代の人々が、彼女の魂を受け継ぎ、
慶に美しい花を咲かせていくのでしょうね。
やはり来年も花は咲く、そう思えるお話でした。
管理人としてご自分の作品以外に時間を費やされて、大変だったでしょう。
おかげさまで今年も楽しい時間を持てました。ありがとうございます。
長すぎる時 瑠璃さま
2012/05/20(Sun) 21:47 No.1110
利広の背負っている時の長さを思うと、なんだか押しつぶされそうな気がします。
でもそこを飄々と歩んでいけるのが利広ならではなのかな。
お祭の運営、お疲れ様でした。
今年も楽しい時間を過ごさせていただきました!
ありがとうございました。
ご感想御礼 未生(管理人)
2012/05/21(Mon) 14:21 No.1139
捏造満載末声小品にご感想をありがとうございました〜。
ネムさん>
過ぎたものは戻らないけれど、春が来る度に桜は花開き、懐かしい想い出を蘇らせる。
残された者が語り継いでいける国であってほしいなと願って已みません。
瑠璃さん>
利広はこれだけの時の重さに耐えて生きていける人なのだと妄想してしまう
管理人でございます。風のように飄々と渡っていってほしいと思っております。
お二人とも祭運営に労いをありがとうございます。
いえいえ、ご支援ご参加くださる方々のお蔭で祭を続けることができるのでございます。
今年も大変お世話になりました!
背景画像 瑠璃さま