佳氈の秘密@管理人作品第2弾
2013/03/22(Fri) 22:15 No.104
皆さま、いつも祭に沢山の拍手をありがとうございます!
昨日積雪30cmを記録いたしました北の国でございます。
未だ冬将軍と春の女神がせめぎあっております。
今朝の最低気温は我が街で−4.2℃、隣街はなんと−9.9℃!
私の体感は−6℃くらいでございました。最高気温は+3℃。
春分を過ぎた暖かな陽射しが道路をどんどん沼化してまいりました(苦笑)。
そんな目まぐるしい北の国より桜開花情報をお知らせいたします。
3/20に鳥取、21日に大阪・神戸・岐阜・水戸・宇都宮・銚子、
22日に京都・奈良・前橋にてそめいよしのが開花いたしました。
また、22日には福岡・熊本・宮崎・高知・東京・横浜にて満開となりました〜。
週末はお花見ができそうな地域が多いですね!
北の国の住人、お裾分けをいただけると嬉しゅうございます。
さて、本日も桜雪を眺めていた管理人は、本物の桜が恋しくてなりません。
そんなわけで、小品を書き流してみました。
よろしければお楽しみくださいませ。
※ 管理人の作品は全て尚陽前提でございます。
- 登場人物 陽子・祥瓊・鈴・尚隆
- 作品傾向 ほのぼの
- 文字数 960文字
佳氈の秘密
2013/03/22(Fri) 22:18 No.105
空の色が変わり、空気が和らぐ。厳しい冬が去った途端、春は足早にやってきた。吹き抜ける風が宮に甘い香りを齎す。
仕事を勢いこんで片付けて、景王陽子は今年も花見の準備を始めた。弁当と甘味と酒と飲み物、陽子は二人の友に手伝ってもらいながら手際よく必要な荷物を纏めていく。そんなとき。
「この佳氈、くたびれているわねぇ」
「そろそろ新しいものにしたら?」
祥瓊と鈴が古い佳氈を手に取って口々にそう言う。陽子は笑みを浮かべ、静かに首を横に振った。
「これがいいんだ」
二人の友は怪訝そうに顔を見合わせた。しかし、言い出したら引かない頑固な主をよく知っているせいか、諦めたように肩を竦めたのだった。
やがて迎えに現れた伴侶とともに、陽子は淡く霞む春の空を駆ける。風はもう暖かく、花の匂いを含んでいた。眼下には薄紅色の塊が幾つも点在している。そして、いつもの樹は満開の花を誇らかに咲かせ、ふたりを歓迎していた。
時折花びらを散らす美しい桜を充分に堪能し、陽子は花見の支度をする。古びた佳氈を桜の根元に広げたとき、伴侶が声を上げた。
「ずいぶん擦り切れた佳氈だな。取り替えた方がよいのではないか?」
「ふふ、やっと気づいてくれた」
陽子は満面に笑みを浮かべて応えを返す。二人の友に指摘されても、この佳氈に拘ってきた。それは、このひとに気づいてほしかったから。案の定、伴侶は訝しげに片眉を上げている。陽子は想いを籠めて伴侶に告げた。
「この佳氈がぼろぼろになっちゃうくらい、ここで花見をしたんだよ」
知らぬ間に季節が移ろっていくほどに片意地張って仕事ばかりしていたあの頃。なのに、案件は一向に減らず、疲れは溜まるばかりだった。誰もが陽子に休めと勧めた。けれど、陽子は頑なに休息を拒んだ。そんなとき、伴侶が半ば拉致の如く執務室から陽子を花見へと連れ出したのだ。
満開に花ほころびる桜は、心身ともに強張っていた陽子を解いた。肩の力を抜いた陽子は、己が宮城全体を緊張させていたことに気づいた。そして、気づかせてくれた伴侶と桜花に深く感謝した。
あれから、毎年花見を欠かさない。この佳氈が、こんなに擦り切れるほど永い間、ふたりでこの桜を愛でてきたのだ。
驚きに目を見張っていた伴侶が、不意に目許を和らげた。優しい笑みを浮かべた伴侶は。そっと陽子を抱き寄せて、甘い口づけをくれた。
2013.03.22.
後書き
2013/03/22(Fri) 22:20 No.106
久々に甘めの尚陽を書きたくなりました。
連作「花見」の一編ではございますが、読んでいなくてもお解りになると思います。
お粗末でございました〜。
(因みに「常世語のお題(尚陽編)」す「擦り切れた佳氈」の
陽子視点でございます)
2013.03.22. 速世未生 記
ご感想御礼 未生(管理人)
2013/03/24(Sun) 14:16 No.112
今朝の最低気温は−3.4℃、そんなはずはないと思いましたところ、
隣街はやはり−8.8℃でございました。
まだまだ湯たんぽは手放せそうもございません。
最高気温はプラスになりますので、
北の国なりに春は近づいているところなのでしょうね〜(苦笑)。
皆さま、拙作にご感想をありがとうございました。
ネムさん>
おお、なんとも嬉しいお褒めのお言葉をありがとうございます!
陽子主上の視点で書くと、素っ気なくなりがちですので、
スイーツ認定していただけて安堵いたしました〜。
饒筆さん>
視覚的イメージはあまり持たずに書き流しましたので、
コメントを拝見して私が楽しくなりました。
妄想を誘うお言葉をありがとうございます〜。
senjuさん>
ご、ごめんなさい、
祭に相応しくないイケない妄想に走りそうになってしまいました〜(恥)。
こほん。お花見はおそらく年に一度でございましょう。
そして、この佳氈は2度目のお花見の際に陽子主上が用意した慶のものでございます。
色々ご想像くださりありがとうございました〜。