君偲ぶ@管理人作品第5弾
2013/05/26(Sun) 07:10 No.554
皆さま、おはようございます。いつも祭に拍手をありがとうございます。
今朝の我が街、最低気温は9.5℃と相変わらずのひとケタでございます。
予想最高気温は22℃!
でも今部屋はほんとに20℃超えるのかというくらい寒うございます(苦笑)。
祭開催期間も残り僅か。管理人、漸く第5弾を仕上げました。
拙作#352「桜の雨」浩瀚視点でございます。
景陽の方々はご覧にならない方がよいかもしれません。
陽子主上登遐後で、オリキャラの景王が出ます。
色々問題ありの一作ではございますが、大丈夫な方はお楽しみくださいませ。
- 登場人物 浩瀚・景麒・陽子・景王(オリキャラ)
- 作品傾向 シリアス(陽子登遐後末声注意!)
- 文字数 728文字
君偲ぶ
2013/05/26(Sun) 07:11 No.555
庭院の古木が薄紅色に染まっている。ひらりひらり、時折花びらを散らす桜を見上げる人影。足を止めた冢宰浩瀚は、しばし回廊に佇んだ。
こんなふうに桜に見入るひとを、浩瀚は幾年も見守ってきた。それは、舞い降る花弁を掌で受け止める宰輔も同じだったはず。再び半身を見送り、三たび王を選び、今尚この国を支え続ける。麒麟だから、それだけが理由ではないだろう。
柔らかな風が薄紅の花を散らし、金色の髪を靡かせる。その背に重なるもうひと回り小さな背。鮮やかな緋色がそこにいる。仄かに笑みを浮かべる美しい横顔すら見えるような気がして、浩瀚はそっと目を閉じた。そんなとき。
ゆっくりと古木に歩み寄るもうひとつの人影。何も言わず、静かに半身へと寄り添う。穏やかな笑みを湛えたその貌に憂いはない。今の主は、浩瀚にも、桜は慶の花だ、と言って朗らかに笑った。
浩瀚は古木に目を移す。細い若木だった桜は、愛でられ、慈しまれてここまで大きくなった。今や、この姿しか知らぬ者も多いほどに。
主上、もう大丈夫です。
唇を緩めた浩瀚は、喪われたかつての主に胸でそっと呼びかける。残される宰輔とともに国を守ってほしい。そう言い残して逝った女王。最期まで、その言葉は命令というよりも願事であった。だからこそ、ずっと守り続けてきたのだ。しかし、慶はもう大丈夫。冢宰が野に下っても――。
桜花のように、この身に時を刻んで生き、やがて散っていく。只人のように、年を取りながら生きていく。王には望むべくもないことも、仙には可能だ。
稀有なる女王が夢見た叶わぬ願いを、いつか己が叶える。胸に秘めた望みを実現する日が近づいてきた。浩瀚は笑みを浮かべる。薄紅の枝を広げる古木は、寄り添い見上げる主従を抱くように花びらを降らせていた。
2013.05.26.
後書き
2013/05/26(Sun) 07:18 No.556
出してよいものかとしばらく悩んでおりました連作の一場面でございます。
これだけでも解るように仕上げたつもりではございますが……。
お気に召さなかったらごめんなさい〜。
祭開催期間も残り僅かでございます。
あと幾つ仕上げられるかな……(苦笑)。
2013.05.26. 速世未生 記
こんな風に穏やかに… 空さま
2013/05/26(Sun) 16:24 No.557
野に降りて桜を愛で、ただ人として高里にむかう決心をした浩瀚を、私は好きです。
空のところの浩瀚も、末世があるならこんな風に過ごしてほしいと思ってしまいます。
悲しいけれど穏やかな春のひと時を感じることができました。
ありがとうございます。
切ないけれど ネムさま
2013/05/26(Sun) 23:28 No.562
こうやって人の世は続いて行くのでしょうね。
そして続いて行くと信じられるから、逝く人々は微笑んで去れるのかもしれません。
静かに佇む浩瀚の姿が美しいです。
ご感想御礼 未生(管理人)
2013/05/27(Mon) 13:02 No.567
空さん>
いつの日かこんな日も来るのではないか、との妄想でございました。
拙作にご共感をありがとうございます。
ネムさん>
去る人がいて、来る人がいる。
人の世とはそんなふうに流れていくのではないかと思います。
どちらも幸せであれと願って已みません……。
万物流転 饒筆さま
2013/05/27(Mon) 21:40 No.573
新景王の包容力がハンパなくて素敵ですねえ。
季節が移ろい生命が輪廻を繰り返すように、
ごく自然に新旧が入れ換わる景色には心静かな幸福さえ感じます。
この桜が朽ちる頃には、古き良き全てが穏やかな眠りについていますように。
陽子主上を偲ぶ浩瀚がいいのデス 翠玉さま
2013/05/28(Tue) 10:49 No.587
浩瀚の最期は陽子主上の為に死ぬか、
陽子主上登遐後に仙籍を返上して野に下るかが似合うと思っています。
錯乱して死ぬのは駄目です。←誰が書くって?(笑)
そして、残された景麒は幸せにならなければなりません、絶対に!
桜の花に陽子主上を偲び、金波宮を去ろうとする浩瀚が理想的でした。
そして、未生さんのラストスパートをお待ちしていました。
残り少ない祭りを楽しませて頂きます。
ご感想御礼 未生(管理人)
2013/05/28(Tue) 22:10 No.597
饒筆さん>
残される景麒の幸せを願いつつ書き上げました。
そんなわけであのような景王になりました。
いつもながら、敢えて描写を削いでおります。
ほんとうに、この桜が朽ちる頃も、慶が穏やかな争いのない国であってほしいと
願って已みません……。
翠玉さん>
全く以て同意でございます。
他意なく浩瀚を朝に引き留める遺言を置いて逝く陽子主上というのも私の萌えどころ。
語り出すと止まらなくなりますのでこの辺で止めておきますね(苦笑)。
管理人の遅すぎるラストスパートをお見守りくださりありがとうございます。
引き続き頑張ります〜。