月照夜@管理人作品第2弾
2014/03/29(Sat) 18:43 No.135
皆さま、こんばんは〜。
桜前線は歩みを速めているようでございますね。
それでは桜開花情報まいります。
3/28に岡山・熊谷・甲府、29日に徳島・水戸・宇都宮・前橋・銚子にて
そめいよしのが開花いたしました。
また、28に宮崎、29日には松山にて満開となりました。
皆さまのお住まいの地域は如何でしょうか? ご報告をお待ち申し上げております。
さて、本日、管理人は纏まった時間を手に入れることができました。
久々にワードを開けられて嬉しゅうございました。
けれど、思ったものを仕上げることができず……(苦笑)。
末声、しかも連作の一場面でございます。
尚隆登遐後の利広→陽子、大丈夫な方のみご覧くださいませ。
※ 管理人の作品は全て尚陽前提でございます。
- 登場人物 祥瓊・利広・陽子
- 作品傾向 しっとり(尚隆登遐後末声及び利陽注意!)
- 文字数 922文字
月照夜
2014/03/29(Sat) 18:44 No.136
月光が降り注ぐ夜だった。祥瓊は賓客を先導し、ゆっくりと回廊を歩む。目指す庭院では宮の主がひとり佳氈に坐り、懐かしげに桜花を見上げていた。月の光に浮かび上がる淡い笑みは、見る者を惹きつけて已まない美しさを持つ。見慣れているはずの祥瓊でさえ、はっと息を呑むほどに。そんなとき。
「──綺麗だね、夜桜も、緋桜も」
感嘆の溜息とともに、囁くような声がした。祥瓊はおもむろに振り返る。南国の太子は、足を止めて庭院に見入っていた。
「ええ、どちらも慶国自慢の美しき花にございます」
祥瓊は友でもある主に目を戻して応えを返す。麗しき女王を緋桜に例える太子の雅さは、招かれざる客を疎む祥瓊の心をひととき解いた。いつもはしない昔語りを聞かせる気になるくらいに。
「あの桜は……今は亡き隣国の主従が、主上のために植えさせたものでございます。そして、国中に植えられた様々な桜は、主上と同じく胎果であられたお二方への手向けなのでございましょう……」
植えられたときは、ほんの小さな若木だった。それから幾年も経った今ではすっかり大木となった。豊かに花を咲かせる桜の傍らには、女王の亡き伴侶が佇んでいるような気がする。明朗で鷹揚だったかの方を、陽子は今も忘れない。月の光の中、夜桜と緋桜は静かに語らう。祥瓊はしばし言葉を失い、月下の桜花に見蕩れた。
不意に視線を感じ、そっと目を移す。風来坊の太子が柔和な笑顔で見つめていた。祥瓊は僅かに目を見張る。俄かに頬が熱くなった。束の間とはいえ、案内すべき賓客の存在を失念していたとは。
「──失礼いたしました。どうぞ」
祥瓊は深く頭を下げて太子を促した。春風のような笑みを残し、賓客は宮の主が待つ庭院へと降りていく。祥瓊はその背から目を離せずにいた。
太子はゆっくりと歩を進め、佳氈の前で足を止める。気づいた陽子は寛いだ笑みを見せた。そして、賓客を隣へ誘い、手ずから茶を淹れてもてなす。太子は楽しげに茶杯を受け取った。
そしてまた、陽子は黙して桜を見上げる。太子は茶を啜りつつ笑みを湛えて陽子を眺めた。桜花はそんな二人を優しく見下ろす。庭院は再び静寂に包まれた。
月が照らす、美しい情景。祥瓊は賓客への鬱憤をも忘れ、桜と風の饗宴に寸刻魅せられたのだった。
2014.03.29.
後書き
2014/03/29(Sat) 18:47 No.138
管理人、祭が始まって間もないというのに頭がすっかり末声モードでございます。
連作の一編で大変失礼をば。取り敢えず雰囲気をお楽しみいただければ、と思います。
因みに「心守」第4章お終いの祥瓊視点でございます。
次は末声でないものを出せるよう精進いたします〜。
2014.03.29. 速世未生 記
Re: 3/29桜開花情報 瑠璃さま
2014/03/29(Sat) 22:25 No.145
夜桜に引き込まれそうです。祥瓊が見蕩れるのもわかる。
そして利広の独特の存在感は、その場を壊さずでも確実に何を変えているのでしょうね。
なんせ祥瓊が鬱憤を忘れるくらいですから(笑)。
素敵なお話をありがとうございます。
Re: 3/29桜開花情報 さらこさま
2014/03/30(Sun) 00:30 No.160
しっとりとした夜桜 素敵ですね。
月下に照らされた緋桜も、夜桜も見惚れるのは無理もないことです。
相手は忘れられるくらいどうってことないような風来坊さんですしね。
利広はたしかに風のような人かもしれません。
そよそよと揺らすのか、はたまた突風のように吹き荒れるのか・・・。
余韻も素敵なお話でした。
その麗しさに酔いそうです 饒筆さま
2014/03/30(Sun) 22:18 No.166
優しい春風さえ息をひそめているような、静かな静かな夜ですね。
拝読後の余韻の中で、
利広さんも実は真面目にかの名主従を偲びに来たのかなあと思いました。
その形見の桜花と彼が残した緋桜を愛でながら、追憶の感慨に浸る……
酒はなくとも酔ってしまいそう。
無題 ネムさま
2014/03/31(Mon) 00:11 No.175
月の光に浮かび上がる美しい花の情景。
いろいろな想いはあるでしょうけれど、この一時、共に花と月の美しさを静かに愛でる、
そうした人々の姿の美しさも浮かび上がるようなお話です。
それにしても未生さんの描く祥瓊の眼差しの切なさは、尚隆や利広よりも、
もっとドキドキしますね(笑)
ご感想御礼 未生(管理人)
2014/04/01(Tue) 16:39 No.198
遅くなりました。末声モードになると言葉に詰まりやすくて……(苦笑)。
皆さま、ご感想をありがとうございます。
瑠璃さん>
誰もが遠慮していた場所にするりと入りこむ風の御仁に対する祥瓊の心は
複雑なのだと思います。利広に的確なお言葉をありがとうございました。
さらこさん>
気配を殺すも曝すも自由自在の妖怪変化の域に達している御仁だと思っております。
普段はそよそよしつつ、時には突風となって揺さぶりをかけるのでございましょう……。
饒筆さん>
口には絶対に出さないでしょうけど、かの方を悼む気持ちは強いのだと思います。
だからこそ桜と語らう緋桜を見守れるのかと。
ネムさん>
己にはできないことをやってのける御仁への悔しさや切なさを感じてくださり
ありがとうございます。それだけ祥瓊は陽子主上を大切に思っているのだと思います。
桜に末世も合うと、わたしは思っています 翠玉さま
2014/05/04(Sun) 01:56 No.560
伴侶が死んでまでも思い続けらるのは男の方だと思えるのですが、
漢前な陽子主上ならば有り得るのですね・・・
尚隆ならば俺が身罷った後は他の男を捜せ、と言うような気がするのは、
わたしが女ゴコロを理解できないせい?
(その昔、友人に言われてました(-_-;)
であるからこその祥瓊の憂いなのでしょうか・・・
その尚隆の気持ちがわかるからこその、利広の訪問なのかと思っています。
反応が皆様とかけ離れていて申しわけありませんm(_ _)m
ご感想御礼 未生(管理人)
2014/05/06(Tue) 16:43 No.569
翠玉さん>
遠距離恋愛故に、伴侶がいなくなっても実感しにくいのでは、
と思ったりいたします。
うわぁ、語りツボを押されてしまいました……!
けれど、語ると本文よりも長くなってしまいそうなので、ここらで黙ります。
もしも、お時間とご興味がおありであれば、
拙宅末声別館「夢幻夜想」をご覧いただけると嬉しゅうございます。
8年に亘ってちびちびと綴ってございますので……。
妄想を邁進させるご感想をありがとうございました。。