「管理人作品」 「14桜祭」

桜回想@管理人作品第5弾

2014/05/09(Fri) 13:28 No.622
 昨日、下に上げました桜公園を見てまいりました。 風に散らされる花びらが物哀しくも美しく……。
 そんなわけで末声小品でございます。 苦手な方はご覧にならないでくださいね〜。

※ 管理人の作品は全て尚陽前提でございます。

桜回想

2014/05/09(Fri) 13:32 No.623
 今年も薄紅の花がほころびる。年々高くなるこの樹を見守るようになってから、幾歳が過ぎたことだろう。そして、官職を辞して野に下り、桜とともにこの身に時を刻みはじめたのはいつのことだったか。浩瀚は揺れる桜花を見上げながら物想いに耽った。

 春は追憶の季節。散りゆく花びらは喪われた佳人の眼差しを呼び覚ます。楽しげに、淋しげに、懐かしげに、いつもこの花を眺めていた翠の瞳。緋色の髪を靡かせる細い背。そして。

 只人のように年を取りながら生きてみたかった。

 そう呟いた、麗しきひと。それは、十六で時を止めた王には叶うはずもないことであった。浩瀚は即座に答えた。その願い、いつか私が叶えてみせましょう、と。仙ならば可能なことゆえに。ありがとう、と淡く笑んだ主は、年相応の少女に見えた。哀しいほどに。

 今なお、喪われた佳人はあの頃のまま鮮やかに甦る。咲き初めては散っていく桜花の如く様々な貌を見せながら。永遠をも望める生を、自ら断ち切った、紅の女王。その真意を知る者はいない。

 ゆっくりと老いていける己は、きっと幸せなのだろう。

 変わらぬ面影を抱きつつ、浩瀚は唇を緩める。ふわりふわりと花びらを散らす桜が微笑んで頷いたような気がした。

2013.05.09.

後書き

2014/05/09(Fri) 13:34 No.624
 久々の浩瀚がこれですか! はい、ごめんなさい。 管理人、桜が散り始めるともう末声妄想を止められません。 観念してほぼ一気書きいたしました。
 この調子で懸案の中編最終回を何とか仕上げてしまいたいと切に願っております。

 皆さまの素敵な桜、まだまだお待ち申し上げております。

2014.05.09. 速世未生 記

「君偲ぶ」の続きですね 翠玉さま

2014/05/10(Sat) 01:14 No.627
 もう、己がいなくても大丈夫だと判断して下山したのでしたね。
 わたしの妄想する悲劇的な末世はやはり陽子主上に先立たれることで、 浩瀚は陽子主上との約束で景麒を見守るために生き続け、 徐々に心が壊れていくという非情な結末にしているので、 未生さんのSSSはそれよりもずっと優しいです。 (狂っている方が浩瀚には幸せかもしれませんが・・・)
 どちらの結末にしても、 浩瀚ならば代われるものならば己の命を盾にしても陽子主上を守ると 決めていたのではないかと思えます。
 もっとも、未生さんのストーリーではそれは叶わない ということも理解できるのですけどね。 だからこその約束かと思っています。

しあわせな情景 饒筆さま

2014/05/10(Sat) 16:52 No.636
 記憶と感情の全てが時の波に洗われた末の、穏やかで幸せな情景ですね。 うん。こんな風に思い出すのなら、 追憶に浸る側も思い出してもらえる側も幸せだと思います。
 そしてこんなに優しい閣下のことですもの、 そのうち老師を慕う塾生や子供たちが寄って来て昔話をせがんでくれるでしょう。 (拙宅の性格キッツイ閣下では無理ですね・とほほ)
 ああ。こぶ茶が飲みたくなってきました……(←なぜ?)
 穏やかな末声をありがとうございました(私は末声話も割と好きですよ)

美しい情景 ネムさま

2014/05/11(Sun) 00:38 No.641
 まるで浩瀚も景色の一部のように溶け込んでいますね。
 亡くなった人を穏やかに思い出せるのは、 きっと良い思い出がたくさんあるからでしょう。 陽子が自分が望んでいたように、しっかり人と向かいあって生きてきた証を見るような、 そんな気がします。
 末声ものということですが、自然な季節の移行を見るようで、 じんわり幸せな気持ちになりました。

ご感想御礼 未生(管理人)

2014/05/11(Sun) 17:36 No.650
 皆さま、末声小品に温かなご感想をありがとうございました。

翠玉さん>
 「君偲ぶ」を思い出してくださりありがとうございます。 何もなければ、後を追ってしまったかも、と思います。 だからこそ、ふたつの約束が必要なのかと。 汲んでくださり嬉しゅうございました。
 翠玉さんの悲劇的なお話、いつか拝読させてくださいね。

饒筆さん>
 実は、若き徒弟が浩瀚の背を見守っております。 纏まりがなくなったので削ぎ落としてしまいましたが(苦笑)。 慶の民は各々が胸に抱く桜を持っていると思ってしまうのでございます……。 妄想を刺激するご感想をありがとうございました。

ネムさん>
 野に下って老いていく時間よりも、 陽子主上の傍にいた時間の方が圧倒的に長かったと思います。 様々な思い出を抱きつつ残り少ない生を過ごしていくのでしょうね……。 温かなお言葉をありがとうございました。

桜の花びらのように 桜蓮さま

2014/05/12(Mon) 05:17 No.666
優しく柔らかく降り積もった陽子主上との思い出の中で生きているのかもしれませんね、 この頃の浩瀚は。
 尚隆の傍らにいる陽子主上を近くで支え続け、 登遐後も彼女の望みを叶える浩瀚… 優しいなぁとしみじみホロリとしてしまいました(泣)。

ご感想御礼 未生(管理人)

2014/05/12(Mon) 16:31 No.670
桜蓮さん>
 はい、陽子主上を想い続ける浩瀚の姿に管理人も心が痛みます。 昔、「追憶」というお話を書いた時に 「浩瀚が可哀そう」とのご感想を幾つかいただきまして、様々な妄想をいたしましたが、 浩瀚は結局陽子主上への想いに戻ってしまうのですよね……。
 拙宅の浩瀚はこの道を選びとった、ということでどうぞご寛恕くださいませ。 ご感想をありがとうございました。
背景画像「素材屋 flower&clover」さま
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