「管理人作品」 「14桜祭」

主従譚@管理人作品第7弾

2014/05/21(Wed) 15:34 No.726
 皆さま、こんにちは〜。いつも祭にレス及び拍手をありがとうございます。
 本日の北の国、最低気温は12.1℃、隣街は8.8℃、 またまたストーブのお世話になりました。 最高気温は20℃を超えましたが、陽射しがないせいか寒く感じます。
 朝外に出たとき、雨の匂いがいたしました。 乾燥する日々が続いていたので心地よい湿気でございました。

 さて、本命を纏めきれない管理人は小品をひとつ書き流しました。 拙作#691「花信風」にいただいた#705の翠玉さんのコメントに ムラっとして妄想が……(笑)。 というわけで、陽子主上に許可を与える景麒のお話をどうぞ。

※ 管理人の作品は全て尚陽前提でございます。

主従譚

2014/05/21(Wed) 15:34 No.727
「蘭桂から手紙が来たようですよ」
 所用で訪れた女史が、ついでのようにそう言って仄かに笑った。主を姉とも慕う養い子はなかなか里帰りできず、時折短い書簡を送って寄越す。蘭桂の手紙に笑みを見せる主の姿を、景麒も何度か目にしたことがあった。祥瓊はゆったりと話を続ける。
「桜が綺麗に咲いているとか」
 聞いて景麒も少し唇を緩めた。主が育てた小童は、やはり桜が好きだったことを思い出したのだ。主とともに細い若木にほころびる薄紅の花を見上げていた少年は、いつしか主の背を追い越すほど大きくなり、学業を修めるために金波宮を巣立っていった。
「後ほど主上も現れると思います」
 最後にそう告げて、女史は深く頭を下げる。景麒は小さく頷いてその意を受け入れ、主の先触れを務めた女史の背を見送った。やがて。
 暖かな陽光の気配が近づいてきた。慶を遍く照らすこの光は、景麒の気をも優しく満たす。しかし、宰輔の執務室に入ってきた国主景王は、存外に遠慮がちな声を上げた。
「――景麒」
 はい、と応え、景麒は立ち上がった。主は書卓の前で足を止め、躊躇するように口籠る。景麒が少し首を傾げて促すと、主はおずおずと口を開いた。

「――明日、休みをもらってもいいかな」

 慶東国国主景王である主が、小さな声でそんなことを言う。景麒はつきかけた溜息を呑みこんだ。主が嫌がるからだ。
 桜も散りかけた春の終わり。仕事を勢いこんで片付けて臨む恒例の花見も既に済んでいる。だからこそ、更に休暇がほしい、とは言いにくいのだろうが、主は王なのだ。臣に許可を求める必要はない。景麒はいつもそう思う。

「よろしいのでは」

 即座に答えると、主は輝かしい翠の瞳を見開いた。そこまで驚くことだろうか。景麒の方が不思議に思うほどだった。しばしの沈黙の後、主は景麒を見つめ返し、花ほころぶような美しい笑みを浮かべた。まるで緋桜のようだ、と景麒は密かに感嘆する。それから、主の朱唇は温かな言葉を紡いだ。

「ありがとう、景麒」
「礼など必要ありません」

 麒麟は王の下僕なのだから。嬉しげな勁い視線に耐えきれず、景麒はふいと横を向く。主は柔らかな声で続けた。

「それでも、私はお前に礼を言いたいんだ。そのくらい許せ」
「ご命令とあらば」

 そう言って景麒は慇懃に頭を下げる。本音を告げただけなのに、主は景麒を軽く小突いた。

「お前は頭が固すぎる」

 主はそう言って弾けるように笑った。景麒にはわけが分からない。しかし、困惑しつつも景麒は心地よい笑声に身を任せたのだった。

2014.05.21.

後書き

2014/05/21(Wed) 15:35 No.728
 翠玉さんからいただいたコメントでムラっとしたのですが、 浩瀚と景麒のどちらで書こうかちょっと迷いました。で、気づいたのでございます。 今回の祭、蘭桂・祥瓊・尚隆・虎嘯・浩瀚・鈴と全部視点違いだな〜と。 なのでまだ書いていなかった景麒で書いてみました。
 書いてみて思ったのですが、景麒は尚隆が絡んでいなければすぐにOKを出すのだな、 と(笑)。お粗末でございました〜。

 最終日まであと5日、皆さまの素敵な桜をまだまだお待ち申し上げております。

2014.05.21. 速世未生 記

何を言っても ネムさま

2014/05/22(Thu) 22:18 No.739
 景麒が言うと、突き放すように聞こえちゃいますね。 本当はとっても思いやりがあって、陽子に“そんなに気を遣わなくていいよ〜”って 思ってあげてるのに。 もうここまで来ると、一芸の域かも(不憫だけど笑えるのは何故?)
 でも、だからこそ「礼を言わせて」と笑ってくれる 陽子のような存在が必要なんですね。
 とっても“らしい”主従の会話でした ^^

わたしごときののコメントで、続きが〜@@ 翠玉さま

2014/05/22(Thu) 23:02 No.742
 未生さん、ありがとうございます!!!  陽子主上の我が儘を喜ぶ景麒ですよねv  能面でも喜んでいる様が伝わってきますよ〜!  つきかけた溜息を飲み込む景麒がまたいいですねぇ・・・ 祥瓊と景麒の連係プレーを楽しませて頂きました。
 これでは返礼に浩瀚編は不肖、わたくしめがお送りせねばなりませんね。 どうか、上記をご笑納くださいませ。

あと一歩! 饒筆さま

2014/05/23(Fri) 00:09 No.746
 あと一歩、歩み寄れそうで寄らない(寄れない?)景麒がかわいくて可愛くて、 夜中にもんどり打ちました(笑)  あったか楽しいひとコマをありがとうございます〜っ (ごろんごろん←まだ転がっています)

 私、実は密かに「蘭桂と景麒は大の仲良し説(景麒は子供にとっても優しい)」を 支持しておりますので、 いつか「よろしいのでは」だけでなく、 「勿論よろしいのでは――そして私もご一緒にさせていただけますか?」 って誘い返せるようになるといいですね〜 (何百年後の話かなあ・あはは)

惜しい!! さらこさま

2014/05/23(Fri) 00:40 No.749
 後もうちょっと何とかならんのかなぁ・・・という景麒の残念な感じが 「らしい」ですね。 その惜しいところがやっぱり景麒なんですけども(笑)
 ・・・でも、ちょっと想像してみたのですが、 天然のツンデレじゃない、笑顔で美辞麗句を述べる美形な景麒って、 ものすごく気持ち悪い(←失礼な;)かもしれないと思ってしまいます。
 やはり、どうやっても完璧にはなれないところに 可愛げなり魅力なりを感じるものですよね。

ご感想御礼 未生(管理人)

2014/05/23(Fri) 11:02 No.753
 皆さま、拙作にご感想をありがとうございました!

ネムさん>
 ほんとにねぇ、思ったことを素直に口に出していれば、 もっと陽子主上の笑顔が見られると思うのですが(苦笑)。 まあ、今回は即答OKで主の美しい笑みを引き出せてよかったよかった。
 「らしい」とのお言葉、嬉しゅうございました〜。

翠玉さん>
 こちらこそ、ツボを衝いてくださりありがとうございました〜。 楽しく一気書きいたしました。
 そうそう、溜息を呑みこめるようになったか、と私も感心いたしましたよ。 お楽しみくださり、更にお返しまで……! 感謝申し上げます〜。

饒筆さん>
 転げ回って喜んでいただけて大変光栄に存じます(笑)。 この不器用さが景麒の愛しいところでございましょう!
 思ったことを口に出せるようになったときには、 蘭桂は外見的に景麒よりも歳を取ってしまっているかも、 と妄想して吹き出しました(笑)。

さらこさん>
 はい、その残念さが景麒でございます。「らしい」とのお言葉、有難き幸せ(笑)。
 そして、「笑顔で美辞麗句を述べる美形な景麒」! 〜〜〜!  かなり悶えツボに入りました。妄想を誘うご感想をありがとうございました!
背景画像「素材屋 flower&clover」さま
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