桜下のふたり
饒筆さま
2014/04/06(Sun) 15:52 No.254
@良いお手本:廉主従(万年新婚夫婦)
早くも満開を迎えた桜に急かされて、急遽、二人きりで慎ましやかな花見の席を設けたものの――空は真白い花曇り、挙句に冷たい風まで吹いてきた。
世卓は肩をすくめ、廉麟を気遣う。
「肌寒くなってきたね」
「ええ、本当に」
「大丈夫かい?」
「ありがとうございます。でも、もう少し見ていたいんです……」
廉麟は慈しむように目を細め、こよなく愛する花の天蓋を見上げる。その心から嬉しそうな横顔を眺め、世卓も温かな笑みを浮かべる。
風の気まぐれにはらはらと零れる花びらが、しばし、その幸せな沈黙を彩って――
温かい飲み物を淹れてあげようと伸ばした手が、ちょうど水筒の上で重なった。
『あ……』
重なる視線。出るともなしに出た呟きが甘い気まずさを呼び、廉麟も世卓も慌てて顔を逸らす。が、大きな手だけが正直に、たおやかな白い手をぎゅっと握りしめた。
とっさに俯く廉麟の耳が赤い。
そしてそのまま廉麟は、コトンと金色の頭を世卓の肩に預けたのだった。
――か、かわいいいいいいいッ!!!(生垣の裏から見守っていた漣国臣下一同、萌えのあまり悶絶)