「投稿作品集」 「14桜祭」

氾主従バージョンです 饒筆さま

2014/04/27(Sun) 00:17 No.488
 すみません未生さま、大変遅くなりました…… 「桜下のふたり」氾主従バージョンが仕上がりましたよ!
 ……ええっと、もうお茶はどこかへ行きました。 というか、お茶を飲ませる隙も無かった(ぷっ笑)
 色気とか耽美とかが苦手なのでがんばったつもりですが―― 氾主従の麗しさをお伝えできるかどうか実に不安です(冷や汗)
 記事No332さらこ様投稿の枝垂れ桜(樹齢350年)を参考にしておりますので、 どうか脳内で補完してください!

桜下のふたり<氾バージョン>

饒筆さま
2014/04/27(Sun) 00:20 No.489

C眼福…なのか目の毒か:氾主従(美しさは罪)

 早くも満開を迎えた桜に急かされて、急遽、二人きりで慎ましやかな花見の席を設けたものの――空はあいにく真白い花曇り、挙句に冷たい風まで吹いてきた。
 華やかに垂れた花枝が揃ってなびく。その様に目を細め、藍滌が扇子で押さえた口を開く。
「これはなんとももの言いたげよの。桜翁のご機嫌は麗しくないようじゃ」
 その肩にしなだれかかり、大きな銀杯に盛られた干果を摘む氾麟が、愛らしい鼻をツンと伸ばして応じる。
「致し方ないわ。だって、今年は『野暮用』が多すぎるんですもの――お花見も碌にできないなんて、桜翁でなくても拗ねたくなるわ」
「おや」
 藍滌はふふと鼻を鳴らして笑い、麗しい顔を傾けて氾麟を覗き込んだ。
「嬌娘(ひめ)も臍を曲げていたのかえ?」
 愛おしげに見つめられて、氾麟は少し顎をひき上目遣いで氾を見つめ返す。瞬く睫毛の先を淡い花びらがかすめて落ちる。思わず目を閉じた氾麟の白桃の頬に藍滌が手を添え、鼻先が付くほどに顔を寄せれば――なんとも言えぬこそばゆさに、二人はくつくつ笑いだす。
「愛い嬌娘(ひめ)じゃ」
 かかる吐息の甘い香に、桜桃の唇がうっとりと綻ぶ。
「ねえ主上」
 氾麟は両手をあげ、その頬を包む主の手をしっかりと包んだ。そして、ひときわ愉しげに円らな瞳を輝かす。
「わたしね、時々、主上をたべてしまいたくなるの」
「それは困ったねえ」
 藍滌もおどけて身を反らす。
「どこから食べる気だえ? 嬌娘の愛らしい歯型がついてしまう」
 んもう。氾麟は一度唇を尖らせ、主の手を己の胸で抱きしめた。
「だって――どんなに長く、どんなにお側に侍っても、主上を全部わたしのものにすることができないんだもの」
 そのとき気まぐれに陽が射して、氾麟は菫色の瞳を瞠った。
 まるで落ちない雪のように天から垂れる花の帳が、柔らかく薫るように輝く。そしてそれを背に艶然と座す麗人は、今日もその全てで己の美学を体現している。
 感嘆と歓声が同時に洩れた。
「ああ主上!もう、なんて素敵なの――桜も主上も、とても綺麗すぎて困っちゃう。この気持ち、なんて言えばいいのかしら?」
 藍滌が笑みを深めた。おとなしく取られていた手で逆に氾麟の手を引き、抱き寄せる。
「それはねえ……」
 くつり。藍滌の潜めた声が氾麟の耳朶を撫でる。
「『あなたが欲しい』と言うのだえ」
 氾麟はぱちりと瞬き、今度は挑みかかるように目を細める。
「じゃあ、主上は?主上はわたしが欲しい?」
 白魚の一指が桜桃の唇を塞いだ。
「そういう台詞は――」
 いちいち心臓を跳ね上がらせる魅惑のウインク。
「此処では無粋じゃ。二人きりの秘密にしておくものであろ」
「あ。……そうね」
 藍滌と氾麟は同時に生垣を振り返る。

 
 バ……バタバタバタッ!!!
 当主従の必殺流し目を不意に向けられ、生垣の裏の臣下一同が将棋倒しになった。

<終わっとけ>

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背景画像「素材屋 flower&clover」さま
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