桜下のふたり<供主従バージョン>
饒筆さま
2014/06/11(Wed) 12:39
E思テタント違ウ……:供主従(それが定番)
※あてんしょん!
恭国の国主・蔡珠晶は(見た目)ローティーンの小柄な美少女、付き従う供麒は(見た目)三十路手前の(麒麟にしては)ガタイの良い青年です。
言わずもがなですが、ご確認まで(笑)
早くも満開を迎えた桜に急かされて、急遽、二人きりで慎ましやかな花見の席を設けたものの――空は真白い花曇り、大好きなひとはつまらなさそうに黙り込んだまま。挙句に冷たい風まで吹いてきた。(しくしく・供麒かなしい)
――何がいけないのでしょう……?
せっかくの「おでぇと」ですのに、これじゃあ寂し過ぎます。
供麒は致し仕方なく、小鳥のように唇を尖らせた尊顔をチラチラ覗き見る。
ほら。見てください。ぼんぼりみたいな八重桜は、盛りを過ぎてもまだまだ華やかで綺麗ですよ。あの薄紅の毬をひとつずつ、左右のお耳の側に飾ったら――あああ主上!可愛い!(きゅうん)可愛すぎます!!(トキメキと鼻息が止まりません)絵師を呼んで参りますから、ぜひやってくださいよぉ〜!!(顎下に両拳を添えて身悶え)
ふう。
珠晶は眉間を寄せ、短く嘆息する。
さらに供麒は、さりげなく黒塗りのお重を並べ変えてみる。
ほらほら。こちらもどうぞ。早起きしてお弁当をつくったんですからぁ。菜食中心なのは許してください(くすん)……でもね、このちまき、本当に自信作なんですよ!中まで味が滲みてとっても美味しいんですってぇ――ねえ、ねえってば主上!まずはひと口、召し上がってくださいよぉ〜ッ!!(大事そうにちまきを抱えてお目目キラキラ)
はあ……ッ!
苛立たしげな呼気とともに、珠晶がそっぽを向いた。
――ひどいッ!!
供麒は青ざめ、口を押さえて身を引く。
た、確かにもう百年近く連れ添っておりますから、今さら何を……とおっしゃる向きもわかります。うう、頭ではわかりますが(ぐすん)――でも!でもでも!今でもこれからもずっと主上と仲良くしたいんです!だって大好きですもん!らぶらぶ上等じゃありませんかッ!うわあん(泣)主上!主上おぉ〜お願いですからこっち向いてくださいよぉ〜ッ!!(四つん這いで声も無く号泣 ←ダメだこりゃ)
「あ・の・ねえ!!!」
ついに、青筋を立てた珠晶が振り返った。
「あんた!少しはじっとしなさいよ!ずっとゴソゴソされちゃ、落ち着いて風情を楽しむことができないじゃないのッ?!」
毎度おなじみの怒声――だが、これが供麒を落ち着かせるのだから不思議だ。
「え……っ?」
供麒はぼんやり呆けた面を上げる。
「怒って……疎んじておられたのではないのですか……?」
「ハア?せっかく花見に来たのに、何に腹を立てなきゃならないのよ?あたしはね、一分一秒も無駄にしたくないの。今は全力で桜を愛でたいのよ。だからちょっと黙って。じっと動かないで!」
「か、かしこまりました!」
良かった!嫌われてなかった!
供麒の憂いは一瞬で晴れる。(ぱあああ)
そして言いつけどおり、かしこまって座りなおしたものの――
ぶえええっくしょーいッ!!!
意外と冷えていたようで、盛大なくしゃみが出てしまった。(こんな時はおっさん臭い)
再び、珠晶がキリリと供麒を睨む。
――うひいっ!また怒られてしまいますぅ〜(垂れる青鼻・滲む涙)
珠晶の手が上がる。軽いビンタを予測し、供麒は眼を瞑って身がまえる。
が。
痛みなど永遠に来なかった。
それどころか、ふぁさ……彼の主は供麒の肩に、そっと自分の上着をかける。そして恐る恐る目を開けた供麒の前で、フンと小鼻を鳴らした後に勝気な微笑。
「まったく。寒いなら寒いと言いなさいよ。さっきは怒って悪かったわね。身体が冷えているなら戻りなさい。無理して付き合わなくてもいいのよ――風邪をひかれちゃかなわないし」(←オットコマエェ!)
「い、いいえ。そんな、無理などしておりません……」(トゥンク……!)
「本当に?青鼻がたれているわよ?」
「えっ?えええっ?!」(キャッ!本当です!恥ずかしい)
「仕方ないわねえ。この手巾を使いなさい」(ステキに男前)
「あ、ありがとうございます……」(いやん惚れ直しちゃう……)
ぽっと頬を赤らめて俯く供麒を、腰に手をあてた珠晶が笑いながら見守る――
やっぱり、ナンカ違ウ。
百年経っても消えない違和感を押し殺しながら、霜楓宮の面々は粛々と熱いお茶をご用意するのだった。
<了>
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。