桜花信@管理人作品第2弾
2015/04/24(Fri) 14:41 No.282
咲きました!
皆さま、こんにちは〜。いつも祭にご投稿、レス及び拍手をありがとうございます。
本日の北の国、最低気温は7.7℃、予想最高気温は18℃。
けれど、13時現在12℃でございます。雨が降りましたからねぇ。
晴れてまいりましたので、これから上がるかもしれません。
それでは開花情報でございます。
4/21に函館、22日には札幌にてそめいよしのが開花いたしました。
桜前線、早くも北の国に上陸いたしました!
こんなに早いのは2008年以来でしょうか。
それでも津軽海峡を渡るのに7日かかっておりますが(苦笑)。
昨日絵描きに「学校の桜もぽちぽち咲いてるよ」と言われましたので、
見てこようかなと思います。
新たに見つけた桜並木も確認してみたいものでございます。
そんなわけで、今年は黒子になっておりました管理人、漸く第2弾を仕上げました。
北の桜が咲いたからには愚図愚図していられない!
昨年出しました「花信風」の蘭桂視点でございます。
けれど、読んでいなくても解るとは思います。
よろしければお楽しみくださいませ。
- 登場人物 蘭桂・陽子
- 作品傾向 ほのぼの
- 文字数 1530文字
桜花信
2015/04/24(Fri) 14:43 No.283
桜が綺麗です。
一言のみの短い書簡を書き終えて、蘭桂はまた窓の外を見やる。細い若木が可憐な花をほころばせていた。咲き初めも蕾も可愛らしく、笑みを誘われる。下に降りて、身近にこの花を見つけた時の喜びを改めて感じた。
――宮の桜はもう散ってしまっただろうか。
しばし想いを馳せた。金波宮の庭院には、国主のために植えられた桜の樹がある。当初は蘭桂の背よりも低かった若木は、あっという間に見上げるほど大きくなった。若木と蘭桂を見比べて、一緒だね、と笑ったひと。その美しい笑みを胸に抱き、蘭桂は手紙に封をした。
今年も陽子と桜を見ることはなさそうだ。蘭桂は小さな溜息をつく。宮にいたときは、毎年当たり前のようにあの桜をともに眺めた。常に多忙な陽子も、桜が咲く季節には皆を集めてささやかな宴を開いてくれたのだ。時には手ずから菓子を作ったり茶を淹れてくれたりもした。なんと贅沢な日々だったのだろう。
姉とも慕う陽子は国主景王。
本来であれば、雲の上に住まう手の届かない尊き方だ。己も雲上に暮らしていたことなど、下に降りた今では夢か幻のようにも思う。それでも。
蘭桂は官吏になると決めた。いつか、金波宮に集う人々のように、陽子を助けるひとつの手となるのだ。そのためにも、もっと学ばなければならない。蘭桂は改めて勉学に励むのであった。
その晩、蘭桂は夢を見た。懐かしい金波宮で、小さな蘭桂が、陽子とともに咲きほころぶ桜の樹を眺めていた。桂桂、と陽子が優しく小字を呼ぶ。あの頃は、陽子よりも背が低かった。桜花を見上げると、陽子の美しい横顔も見ることができた。それは、蘭桂にとって、小さな幸せだった。
ほんとうは、ともに桜を見たい、と書きたかった。けれど、書けなかった。きっと心配をかけてしまう。陽子の力になりたいと願う己が、そんなことをしてはいけない。だから自戒した。
夢は心に隠した淋しい想いを癒してくれた。目が覚めても胸が温かい。今日も頑張ろう。蘭桂はそう思いつつ、気を引き締めて書卓に向かった。
限りのよいところで筆を置き、蘭桂は大きく伸びをした。薄紅の可憐な花は昨日よりもほころんでいるだろうか。桜を求めて窓の外を見やる。若木の下には人かいて、花を見上げていた。鮮やかな緋色の髪が春風に揺れている。陽子と同じ色。そう思ったとき、そのひとは振り向いた。
蘭桂は声なき声を上げて立ち上がる。そして窓辺に駆け寄った。笑顔で手を振るひとを認め、蘭桂は即座に外へと走り出た。
「ほんとうに綺麗だね」
若木の下に、満面の笑みを浮かべる陽子が立っていた。見に来たよ、と言われて蘭桂は足を止める。夢でも幻でもない、本物の陽子がそこにいた。声を失くして立ち尽くす蘭桂に、陽子はにやりと笑んでみせた。
「桜花信をくれただろう」
庭院の桜は盛りを過ぎてしまったから、と続け、陽子は手を差し伸べる。その手を取って、蘭桂は漸く口を開いた。
「まさか、抜け出してきたわけじゃないよね?」
陽子は僅かに眼を瞠る。それから、弾けるような笑い声を立て、心配するな、と言った。半信半疑の蘭桂に、陽子は片目を瞑ってみせる。
「今日はちゃんと休暇をもらってきた」
陽子は楽しげにその顛末を語る。女御と女史が休暇を勧め、宰輔と冢宰が快く送り出してくれた、と。
「王さまの願いが叶わない国ならば、民の願いなんか叶うはずもない、とまで言われたら、休まないわけにはいかないだろう」
陽子は照れくさそうにそう言う。そんな陽子の手を、蘭桂はぎゅっと握りしめた。雲上の宮は夢幻ではなく現に存在する。離れていても、胸を温めてくれる場所。そして、いつか帰る故郷なのだ。
「ありがとう」
蘭桂は素直に感謝を告げる。地上に降り立つ神なる王は、咲き匂う桜花のような美しい笑みを見せた。
20015.04.24.
後書き
2015/04/24(Fri) 14:46 No.284
「桜花信」は管理人の造語でございます。
まあ、花信の頭に桜をつけただけですが(笑)。
実は昨年「花信風」より先に書き始めていたお話でございました。
第1弾にしようかと思いつつも纏まらず、
先に仕上がった「桜笑季」を出した次第にございます。
今年の書きかけはほとんどが利広でございます。
そんなわけで祭が始まっても沈黙しておりました(苦笑)。
今回は→Pia-no-jaC←の「夜桜」を1曲リピートして書き上げましたが、
この曲はどちらかというと「虚空桜」にお似合いかと。
北の桜が花開きました。
祭後半戦に向けて、管理人、気合を入れて残りを進めてみようかと存じます。
皆さまの素敵な桜、まだまだお待ち申し上げております。
2015.04.24. 速世未生 記
おめでとうございます! ミミズのミーさま
2015/03/22(Sun) 00:08 No.4
北にも桜が咲きましたか!
北の方では桜のみならずいろんな花が一気に咲くと聞きます。
冬のモノトーンな風景があっという間に鮮やかになるんでしょうね。
蘭桂は大きくなっても可愛い可愛い弟のまま。
蘭桂の為なら王も冢宰も目尻が下がってしまいます。
到着! ネムさま
2015/04/24(Fri) 23:32 No.288
ついに海を渡りましたね〜。今年は本当に早いです。
でもやはり花の開花便りは聞くとうれしくなりますね。
蘭桂の心にも花が咲きましたね。
「笑う」を「咲う」と書くのは、やはり笑みが幸せなものだからでしょうか。
人が幸せを感じた時、生命の息吹がふわりと開いてこぼれるのだと、
蘭桂と陽子を見ると思えてきます。
すてきな花だより、ありがとうございました!
追伸:→Pia-no-jaC←の「夜桜」、聞いてきました。
なるほど、花弁がこぼれるような素敵な音ですね!
「千本桜」も見つけたので、そちらも開いてみました。
昨年の熱狂コンサートが甦ってきました(笑)
開花おめでとうございます♪ 饒筆さま
2015/04/25(Sat) 00:43 No.294
GW前にもう後半戦だなんて、本当に今年の桜は猛ダッシュの勢いですね……
でもお天気がよさそうなので、これから咲き揃うのは羨ましいです。
(当地、ほとんど雨か嵐でした……)
たっぷり楽しんでくださいませ!
さてさて、大切な姉のために自分に鞭打つ蘭桂に、素敵なプレゼントが届きましたね !
わざわざ書かなくても、お姉ちゃんには弟の気持ちがわかっていたんじゃないかな〜
それとも、実は陽子さん自身が寂しかったんだったりして(笑)
仲良し姉弟の思いやりに私が癒されました。ありがとうございました。
桜咲く地に乾杯です! ミツガラスさま
2015/04/26(Sun) 07:58 No.300
実は私は蘭桂→陽子とまではいかないけれど、
ほのかな恋心を抱える蘭桂のお話が大好物です。
勿論そこには姉弟愛が多分に含まれているのでしょうけれど、
思慕の中にちょっぴり淡い憧れがあるといいな、なんて。。
おそらく未生さまのお話は思いやる仲良し姉弟、という間柄だと思うのですが、
勝手にそんな蘭桂を妄想させていただいております(笑)
だって蘭桂がとってもいじらしくて可愛い頑張り屋さんなんですもの。
陽子に会えて良かったなあ、と温かい気持ちになりました。
可愛い蘭桂と陽子、ありがとうございました!
男の子ですね senjuさま
2015/04/26(Sun) 18:18 No.307
未生さま
こちらでは咲いたと思ったらあっという間に通り過ぎてしまった今年の桜。
やはり駆け足のままそちらまでいきましたか。
せめて北の大地ではゆったりと進んで欲しいものですね。
ほんわか幸せ気分をありがとうございます。
桂桂が男の子らしくてまっすぐで良いですね。
早く大きくなって戻っておいでと、
宮の皆が楽しみに待っている様子まで目に浮かびます。
ご感想御礼 未生(管理人)
2015/04/27(Mon) 00:31 No.312
皆さま、拙作にご感想をありがとうございました〜。
ミミズのミーさん>
北の桜はあっという間に満開になってしまいました(苦笑)。
おっしゃるとおり、北の国では春になると様々な花がいっぺんにほころび、
百花繚乱でございます。
はい、蘭桂は背が伸びても大人になっても可愛い弟なのでしょうね。
ネムさん>
咲いてしまいましたよ! あっという間に満開でアセアセでございます(苦笑)。
こちらこそ美しいお言葉をありがとうございます。癒されます〜。
→Pia-no-jaC←の「夜桜」をお聴きくださりありがとうございます。
今中毒状態で困っております(笑)。
聴くと東山画伯の「夜桜」が浮かび、「虚空桜」の桜怪が浮かぶという。
「千本桜」もらしくてよかったです。
私も昨年の祭を思い出してニヤニヤしてしまいました〜。
饒筆さん>
ほんと、GW前に咲いてしまって顎が落ちそうでございます。
たっぷり楽しむ暇もなさそうで、いやはや……。
蘭桂はよい子だからこそ素敵なプレゼントが当たるのでしょうね〜。
そこがどこかの誰かとは違う(笑)。
ミツガラスさん>
お気に召していただけて嬉しゅうございます。
淡い恋心は抱いていることでございましょう。
女性の基準が陽子主上という恐ろしいことになっているような気がいたします(笑)。
senjuさん>
ほんと今年の桜はもう……(苦笑)。そんなに急がないで〜と叫んでおります。
この素直な子がしっかりお勉強してきっちり官吏になるところを
陽子主上も金波宮の皆も楽しみに待っていることと思います。
ご想像ありがとうございました!
蘭桂かわいいです。 海さま
2015/04/29(Wed) 00:20 No.346
このシリーズを読んでいると、いつか自分の力でまた金波宮に戻る日まで、
成長していく蘭桂をずっと見守っていきたいと思います。
蘭桂と陽子の組み合わせも大好きです。
ご感想御礼 未生(管理人)
2015/05/08(Fri) 17:48 No.454
海さん>
ご返信が遅くなってごめんなさい〜。
私も蘭桂が晴れて官吏として金波宮に戻る日を楽しみにしております。
気づけばこのシリーズ、毎年のように書き連ねております。
桜の他に七夕ネタもございます(笑)。
お楽しみくださる皆さまのお蔭でございます。ありがとうございます!