「管理人作品」 「15桜祭」

桜守風@管理人作品第3弾

2015/05/01(Fri) 20:41 No.393
 皆さま、こんばんは〜。いつも祭にご投稿、レス及び拍手をありがとうございます。
 本日の北の国、最低気温は8.8℃、最高気温は18.8℃、 時折強風が吹き荒れ、桜が散らされてしまいました。 掃除のために窓を開けていたら、湿度が40%になりました。お肌が乾きます〜。
 それでは開花情報でございます。

 4/30に網走にてえぞやまざくらが開花いたしました。 また、5/1には室蘭のそめいよしのが満開となりました。

 残すところは北の稚内と東の釧路のみとなりました。 GW後半の連休を前にこんなことが……! 

 そんなわけで管理人は明日から2泊3日で旅に出ます。 レスは5日以降となりますが、祭をどうぞよろしくお願いいたしますね。

 出かける前にひとつ投下してまいります。 尚隆登遐後末声及び利陽注意の代物ではございますが、 よろしければご覧くださいませ。

※ 管理人の作品は全て尚陽前提でございます。

桜守風

2015/05/01(Fri) 20:43 No.394
「主上」
 女史祥瓊は庭院で花見をしながら賓客と語らう国主に声をかけた。傍に行って火急の用を伝えると、景王陽子は済まなそうに頭を下げ、客人に暇を告げる。鷹揚に手を振る賓客に見送られ、国主は足早に去った。

 独り残された客人は慣れた風に手酌で酒盃を傾ける。祥瓊は少し離れてそれを見守った。やがて。
「何か言いたいことがありそうだね」
 くすり、と笑い、卓郎君利広は祥瓊を見やる。微苦笑を浮かべ、祥瓊は応えを返した。
「お分かりになりますか」
 そりゃあね、と風来坊の太子はおどけてみせる。そしてまた酒杯を呷った。
「陽子が去っても君はここにいるのだから、何かある、と思うよね」
 そう言って賓客は柔和に笑んだ。祥瓊は小さく溜息をつく。何があっても笑みを絶やさない。けれど、物柔らかな南国の太子は、ただそれだけの人物ではないのだ。祥瓊は太子の傍に跪き、空になった酒杯に酒を注ぐ。そして静かに問いかけた。

「――ずっと慶にお住まいになるおつもりはないのでございますか」

 へえ、と太子は大仰に眼を瞠って口笛を吹いた。
「君がそんなことを口にするとはね」
「そんなに意外でございましょうか」
「無論。これまでのことを思い浮かべるとね」
 賓客はそう言って肩を揺らす。祥瓊は嘆息した。伴侶を亡くした女王に言い寄る男を周囲の臣が警戒するのは当然のことであろう。しかも、武断の女王は殺気を持たぬ者には無防備な己を曝すのだから。しかし。

「主上は、あなたさまを受け入れました」

 それが全てを物語る。ずっと桜と語り続けてきた緋桜は、気長に通い続けた南国の風に導かれて現へと戻った。女王の亡き伴侶は隣国の王。大公として金波宮に留まることはできなかった。しかし、この御仁は王ではない。
 陽子は風来坊の太子を鷹揚に受け入れる。そして、寛いだ笑みさえ見せるのだ。伴侶亡き後の憔悴した姿を見続けてきた祥瓊にとって、それは複雑な想いを齎す。けれど、陽子が幸せであるならば。祥瓊は賓客に深く頭を下げた。

「光栄だけどね……。恐らく陽子はそんなことを望んではいない」

 ふと真面目な貌をして、卓郎君利広は満開の桜を見上げる。微風にさざめく枝が花びらを散らした。それにね、と太子は爽やかな笑みを向ける。

「祥瓊、私は旅人なんだよ」

 いつかと同じ応えに祥瓊は言葉を失う。悠久の時を風のように生きてきた太子。風は桜の梢を通り抜けるだけ。決してそこに留まりはしない。そして、緋桜もそれを知っている。

 風には風のままでいてほしい。

 かつて陽子はそう言った。風を待ち、風に揺さぶられながらも桜は大地にすっくりと立ち続ける。その様は強く美しい。祥瓊は花びらを散らす桜を見上げた。

「それでも、私は陽子を見守るよ――」

 最後まで、と聞こえたような気がした。驚き振り返る祥瓊を見ることなく、風の太子は笑みを湛えて降る花びらに手を差し伸べていた。

2015.05.01.

後書き

2015/05/01(Fri) 20:48 No.395
 昨年出した「散降桜」の続編になるでしょうか。 けれど、読んでいなくてもお解りになるとは思います。
 今年の管理人は利広ばかり書きかけて撃沈しております。 こちらは祥瓊に語ってもらって何とか纏りました。 さて、あと何本仕上げられるでしょう(苦笑)。

 皆さま、纏ったお休みを有効利用してできかけの桜を仕上げてくださいね〜。 管理人、楽しみにしておりますよ!  さあ、あなたも清水の舞台から飛び降りてみましょう。 新たな世界が開けるかもしれません(笑)。

2015.05.01. 速世未生 記

お待ちしておりました! 桜蓮さま

2015/05/03(Sun) 04:30 No.398
 秘かな利陽好きとしてお待ちしておりましたv
 縛らず型にはめず、ただそのままの相手を愛するって結構難しいことですよね。 陽子さん、隣の王様を相手に色々女性としても年季を積んできたんですねー(笑)。
 しっとりとしたお話、堪能いたしました。

ちょうどよい距離 饒筆さま

2015/05/04(Mon) 00:05 No.402
 まず最初に、心配性のお姉さんみたいな祥瓊が微笑ましくって ほのぼのしてしまいました(笑) そう言う自分はどうなのさぁ祥瓊さ〜ん(肘でうりうり)

 確かに利広さんは王ではありませんが、 あの一家は全員参加の恐ろしく強固なスクラムを組んでいるので、 その一角を崩すことはできないという意味で真の自由はありませんもの。
 お互いに負担にならない、ちょうど良いクールな距離を置いた、 大人のお付き合いなんでしょうねえ。 陽子さん、イイ女におなりだなあ……(ひたすら感嘆)
 どこまでも穏やかに麗しい桜をありがとうございました。

花に嵐 ネムさま

2015/05/05(Tue) 23:16 No.410
 見事に咲いた桜花が風で散るのは残念だけど、実は桜が一番美しいのは散る様だ、 という話を聞いたか読んだことがあります。 もしかすると、風は自分の役目は桜花の姿を止めるのではなく、 最高の姿にさせることだと分かっているのかもしれませんね。 花は散ってもまた咲くことも。だから風のままでいるのかなぁ、 なんてことを思いました。
 やさしくて、ちょっと切ないお話ですね。

ご感想御礼 未生(管理人)

2015/05/06(Wed) 00:32 No.412
 管理人、京より無事に戻ってまいりました〜。 いやはや、清水寺行きのバスは信じられないくらいの混みよう、 清水の舞台は飛び降りるどころか見るのも大変な模様でございました(苦笑)。
 皆さま、管理人留守中にも拙作にご感想をありがとうございました。

桜蓮さん>
 利陽をお待ちくださりありがとうございます。 需要が少なくていつも出すのを躊躇う代物でございます故、 その告白は勇気を与えてくださいます。
 はい、かの方には色々鍛えられて悟りを開いたようでございますね、 拙宅の陽子主上は(笑)。こちらこそお楽しみいただけて嬉しゅうございました。

饒筆さん>
 ――(爆)。思わず心配性のお姉さんのアレコレを想像してにやついてしまいました。
 そうそう、奏は強固なスクラムを組んでますよね。 陽子主上はそれを崩してまで傍にいてほしいとは思っていないだろうし、 風来坊はひとところに留まれないとも思います。 「イイ女」認定、嬉しゅうございます。
 妄想を誘うご感想をありがとうございました。

ネムさん>
 ああ、今回も美しいお言葉をありがとうございます。 それなのにそれなのに、思い切り陽子末声を思い浮かべてしまいました……(泣)。
 散る様が一番美しい。風もまたそう思っているのかもしれません。
背景画像「花うさぎ」さま
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