「管理人作品」 「15桜祭」

追想花@管理人作品第5弾

2015/05/11(Mon) 16:07 No.487
 皆さま、こんにちは〜。 いつも祭にご投稿、レス及び拍手をありがとうございます。
 本日の北の国、最低気温は7.1℃と冷え込みましたが、最高気温は23.3℃、 ぽかぽか陽気でございます。 吹き込む風は様々な花の匂い、春爛漫でございます〜。 昨日とは10℃違うという(苦笑)。

 祭終了まであと七日、管理人は書きかけの山を前に溜息をついております。 取り敢えず出せるものから出してまいりますね。

 senjuさん作#107「花の下にて」の連鎖妄想でございます。 予王ではなく陽子主上を思い出す景麒、という設定でございます故、 苦手な方はご覧にならないでくださいね。こんな連鎖でごめんなさい 。

※ 管理人の作品は全て尚陽前提でございます。

追想花

2015/05/11(Mon) 16:10 No.488
 国主の執務室は空だった。案件を抱えた宰輔景麒はおもむろに辺りを見回す。その視線を捉えたものは、豊かに枝を伸ばす薄紅の大きな樹。こんもりとした淡い紅の下に鮮やかな緋色の影を見たような気がする。書卓に書簡を置いた景麒は静かに庭院へと降り立った。

 桜は慶の花。

 いつからそう言われるようになったのだろう。少なくとも、この樹が植えられた頃ではない。隣国の胎果の王が、同じく胎果の女王へと贈った蓬莱縁の樹。今や大木となったこの樹は、代替わりして尚、誇らかに花を開く。景麒はそっと眼を伏せた。

 幸せそうに花を見上げていた翠の宝玉が翳りを帯びる様を、景麒は声なく見守った。国中がこの花に包まれる春、薄紅の中に紛れることのない鮮やかな緋色は、いつもこの樹の下に佇んでいた。いつまでも独りで桜花と語らっていた。

 桜は慶の花。

 そう言われる度に景麒の心は抉られた。薄紅の花びらが散る度に、決して泣くことのない武断の女王が瞳の奥に隠す涙を思った。

 桜が代わりに泣いてくれるから。

 そう言っていた女王は、終ぞ涙を見せぬまま、陽が沈むように去っていった。

 主上。

 桜花の如き女王を胸に思い浮かべ、景麒は密かに胸で呟く。それから、振り返ることなく今の主の執務室へ歩みを進めた。

2014.05.11.

後書き

2015/05/11(Mon) 16:23 No.489
 senjuさん、こんな連鎖でごめんなさい〜。 傾国の景麒は私に陽子主上を喪って間もない頃を妄想させたのでした……。

 管理人、鋭意ラストスパート中でございます。 そんなわけでレスが滞るかもしれませんが、 皆さまの素敵な桜、まだまだお待ち申し上げておりますよ〜。 悔いなきようお楽しみくださいね。 毎年のことで恐縮なのですが、来年祭があるとは限りませんよ!  現に昨年の9周年は頓挫しておりますからね……(苦笑)。

 それでは後程レスしに戻ってまいりますね。

2015.05.11. 速世未生 記

しんみり senjuさま

2015/05/11(Mon) 22:59 No.495
 主上。その呟きがせつないです。

 陽子さんと過ごした日が幸せであったからこそ、静かに耐えられるのだとしても 残されて、膝を屈して慟哭することもできない彼が不憫でなりません。。

ただ 静か ネムさま

2015/05/11(Mon) 23:35 No.497
 花びらは次々と落ちていくのに、 音は聞こえない…そんな静寂に包まれたようなお話です。
 −桜が代わりに泣いてくれる −
 これは今では景麒の台詞になっているのでしょうか。
 いつか来る終わりを避けられないのなら、今度は景麒を看取ってくれる主だと良いな、 などと思いました。

背中を見ている方が 饒筆さま

2015/05/12(Tue) 21:47 No.543
 本人ももちろん辛いんですが、辛い思いを抱えている人の背中を見ている者の方が 余計に辛いことってありますよねー(しみじみ)  麒麟って不憫だなあ……さすがに三人目はしんどいだろうな……
 今度は泣けない景麒の背中をそっと見守っている誰かがいたらいいなーと思いました。
 そうだ! 植樹しよう。大事な桜の脇に小さな景麒の木を植えよう。 そうしたら寄り添って育つ喜びも感じられるかも。
 美しい哀しみをありがとうございました。

三度目・・・ さらこさま

2015/05/12(Tue) 23:39 No.550
 見送り続ける悲劇景麒・・・。 ものすごく切ないです。 美形麒麟の運命って気もします。 いつもは仏頂面過ぎて忘れちゃってますが、 景麒ってやっぱり不憫な麒麟ですね(TmT)

ご感想御礼 未生(管理人)

2015/05/14(Thu) 23:36 No.582
 皆さま、末声小品に温かなご感想をありがとうございました〜。

senjuさん>
 新しき主を戴いて、けれど、諡号を呼べずにいる……。 そんな頃の景麒でございます。 「主上」の一言に籠めた想いを察していただき嬉しくも切ない気持ちでございます。 ご感想に胸が詰まりました(泣)。

ネムさん>
 胸を打つご感想をありがとうございます。 泣かずに淡々と過ごす景麒を包みこむ主であってほしゅうございます。 なんだか、一緒に逝こう、 と病み衰えた景麒に囁く姿が見えたような気がいたします……(泣)。

饒筆さん>
 景麒の気持ちを慮ってくださりありがとうございます。 不器用故に声なく見守り続けた景麒もまた 心をすり減らしていったことでございましょう。
 そしてまた妄想を掻き立てるお言葉を! 植樹よいですね!  今度はそんな明るいお話を書いてみたいものでございます。

さらこさん>
 生真面目な景麒はきっと失道していないのに主と一緒に逝くとは言えないのだと思います。 不器用故に見せない気持ち、その葛藤が切ない……。 不憫な景麒を憐れんでくださりありがとうございました。
背景画像「花うさぎ」さま
「管理人作品」 「15桜祭」