桜花雨@管理人作品第10弾
2015/05/17(Sun) 21:01 No.655
皆さま、こんばんは〜。
いつも祭にご投稿、レス及び拍手をありがとうございます。
管理人、ラストスパートを終了いたしました。
最後の小品を投下いたします。
ほんの短いものですが、よろしければご覧くださいませ。
※ 管理人の作品は全て尚陽前提でございます。
- 登場人物 鈴・陽子
- 作品傾向 シリアス(尚隆登遐後末声注意!)
- 文字数 565文字
桜花雨
2015/05/17(Sun) 21:03 No.656
満開の桜花が花びらを散らす。それは、まるで降りしきる雨のよう。その薄紅の霞の中に、緋色の髪が舞っている。鈴はそっと階を降り、友の背を見つめた。
はらりはらりと降る淡紅の雨に、陽子は手を差し伸べている。掌には幾枚もの花弁が載っていた。時折強く吹く風が、数多の花を新たに降らせる。そして風は陽子の掌の花びらをも攫っていった。
「こうやって手を伸ばしても、ほとんどの花びらが擦り抜けてしまう」
桜を見上げたまま陽子は静かにそう言った。
「――全てを受け止められればいいのに」
淋しげに、切なげに、陽子は桜吹雪を見つめる。鈴は黙して拳を握りしめた。ただ、友の横顔を見守るだけ。何もできない己が哀しかった。
「――でもね」
陽子は鈴に目を向けて淡く笑む。
「手を差し伸べることを止めたりはできないんだ」
そうして陽子はまた桜花に目を戻す。
「手を出さなければ、何も掴めはしない」
陽子は再び右手を差し伸べる。舞い降る花弁が一枚掌に落ちた。
「――後悔は、したくない」
小さいが決意に満ちた声。鈴は思わず陽子の左手を握る。何も言えない。何もできない。それでも、友の傍にいたかった。ここにいる、と伝えたかった。喪われたひとの代わりになど、なれるはずもないけれど。
陽子は薄く笑んだ。握り返す手の強さが、鈴に感謝を告げる。優しい桜花の雨は、静かに手を繋ぐふたりを包みこんだ。
2015.05.17
後書き
2015/05/17(Sun) 21:12 No.657
最後のひとつ、どうしようかと迷いました。
利広か、浩瀚か。でも、時期尚早かな〜とか。
迷うときは止めておいた方がよいですね。
で、六太・蘭桂・祥瓊・景麒・陽子・利広・浩瀚・尚隆と
小品は同じ視点がないものですから、まだ書いていない鈴にご登場願いました。
思春期の子たちのお悩みを聞いた時に「全部話すのが友達というわけでもないんだよ」
と言うと怪訝な顔をされました(苦笑)。
そんなわけでそんなふうなガールズトークを書いてみました。意味不明ですね(笑)。
本日投稿最終日、皆さまの素敵な桜、まだまだお待ち申し上げております。
後程レスしに戻ってまいりますね。
2015.05.17. 速世未生 記
もつべきは友 饒筆さま
2015/05/18(Mon) 00:01 No.674
全部話す訳じゃなくても、重荷を半分背負ってくれる友は有り難いですね。
恋人でも家族でもない、友達だからこそのありがたさってあると思います〜
とりあえず鈴ちゃんは良い子ですね!(贔屓目・笑)
素晴らしきラストスパートをありがとうございました。
そうそう(笑) 桜蓮さま
2015/05/18(Mon) 14:40 No.691
幼い頃、お互いを知り尽くすのが友情の証のように思っていた時期もありますが、
そうではないんですよねぇ(笑)。
黙っていても、鈴の手のぬくもりはきっと陽子の心まで届いているんだと思います。
怒涛のラストスパートに脱帽です。お疲れ様でした!
美しい情景です ネムさま
2015/05/18(Mon) 22:11 No.708
誰かが誰かの代わりにはなれない、今年の桜が去年の桜と同じものではないように、
それでも今年も桜は美しいーそんなことを思いました。
今年も美しい桜の情景をたくさん見せて頂き、ありがとうございました。
ご感想御礼 未生(管理人)
2015/05/19(Tue) 00:13 No.715
皆さま、意味不明なラスト作品にご感想をありがとうございました(笑)。
饒筆さん>
今年の管理人は溜めすぎましたね(苦笑)。大変失礼いたしました〜。
同性の友達だからこそ言えることかしらと思います。
意味不明でも頑張って寄り添ってくれる鈴は有難い友達なんだと思います。
桜蓮さん>
いやほんと、今年が一番酷いラストスパートでしたね(苦笑)。ごめんなさい〜。
私も「友達だからって何でも話すわけじゃないよ」と言われたことがございます。
そのときはよく解りませんでしたが、後になってじんわりきましたね〜。
黙って傍にいてくれる友達は有難いものでございましょう。
ネムさん>
毎年桜を見ておりますが、同じようで違いますね。時季も色も形も。
それでも春になれば桜は咲く。
再び桜を美しいと思えたとき、
傍にいてくれる人の有難さに気づくのかもしれませんね。
こちらこそ、今年も数々の美しいお言葉をくださりありがとうございました。