「管理人作品」 「17桜祭」

将軍の噂話@管理人作品第4弾

2017/05/17(Wed) 18:04 Home No.538
 皆さま、こんにちは〜。。いつも祭にレス及び拍手をありがとうございます。
 本日の北の国、最低気温は8.2℃、最高気温は20.4℃でございました。 最低気温はひとケタながら、久々に20℃を超えました。 漸くリラ冷えが終わったようでございます。 一度夏日を経験した後のひとケタ気温は堪えます。 ストーブを点けるのを躊躇ってしまうため、冬より寒く感じるでございます……(苦笑)。
 釧路のえぞやまざくらはまだ満開になっておりません。 祭が終わる前に満開になるでしょうか。

 さて、ラストスパート中の管理人、第4弾を仕上げました。 リクエスト作品第3弾でございます。笑っていただけると嬉しゅうございますが……。

将軍の噂話

2017/05/17(Wed) 18:08 Home No.539
「あの二人、いったいどうなっているのかしらね」
「――確かに、それは気になるな」

 男女の密やかな話し声が聞こえ、左将軍桓魋は回廊の角で足を止める。そっと顔を覗かせると、国主の執務室の前に、女御と大僕が立っていた。

 あの二人とはどの二人だろう。

 桓魋は眉根を寄せる。まさか祥瓊と桓魋のことではあるまいな、と思い至り、慌てて首を横に振る。それよりも、そこでひそひそ話している鈴と虎嘯はどうなんだ。みな気にしていると思うのだが。など考えていたその刹那。

「陽子、待ちなさい!」
「待つわけないじゃないか!」

 いきなり怒号が響き渡り、執務室から慶主が飛び出した。その後ろを、襦裙片手に女史が追いかけるが、追いつくはずもない。慶主は桓魋の横を猛然と走り去り、息を切らす女史が独り残された。桓魋は肩の力を抜く。女御と大僕はこの二人のことを話題にしていたのか、と納得したのだ。

 祥瓊が手に持つ物から、何が起きたかは推察できる。いつも官服を着込む女王に女性らしく襦裙を着せようとして、今日も逃げられてしまったのだろう。鍛錬を欠かさない武断の王に、女史が足の速さで勝てるわけがないのだが。
「懲りないな」
 まだ少し息を弾ませて回廊にへたり込む祥瓊に、桓魋は笑い含みの声をかけた。俯いていた祥瓊ははっと顔を上げ、ふいと横を向く。
「――余計なお世話だわ」
 祥瓊の不機嫌な応えを聞いて、桓魋は堪えきれずに笑い出す。少し頬を赤くした祥瓊は、すぐに顔を蹙めて立ち上がった。しかし。
「あっ」
 祥瓊は小さな悲鳴を上げてよろめいた。桓魋は素早くその華奢な身体を支える。どうやら祥瓊は足を痛めているようだった。
「大丈夫か」
「平気よ」
 慌てて身を離す祥瓊は再びふらついた。大丈夫なはずがないのに、どうしてこう強がるのだろう。桓魋は小さく溜息をつき、軽々と祥瓊を抱き上げた。
「な、なにするのよ!」
「大丈夫じゃないだろう」
 悲鳴のような声を上げる祥瓊に簡潔な応えを返し、桓魋はすたすたと歩き出す。祥瓊は気まずげに押し黙り、身を固くした。軽くて柔らかいなと思いつつ、前にもこんなことがあったような気がして記憶を辿る。そうだ、明郭で初めて祥瓊に出会った時のことだ。

「昔、こんなことがあったな」

 笑みを湛えてそう言うと、祥瓊は大きく眼を瞠った。桓魋は懐かしい出来事を思い出しながら、ゆったりと続ける。

「あの時は物騒なことから逃げていた。今は、平和だな」

 祥瓊は明郭で刑吏に石を投げた娘だった。兵士に追われて逃げていたところを助け、足を痛めていたので負ぶって連れ帰ったのだ。
「――そうね」
 祥瓊は仄かに笑う。そして、懐かしげに続けた。

「あの頃から男装で市井を闊歩する王さまだったわね、あの子は」

 桓魋は笑って頷く。石を投げた祥瓊を逃がすために、剣を抜いて囮になった赤髪の娘が慶主だった。後で知って、どれだけ驚いたことか。

 頑なだった祥瓊が、打ち解けた笑みを浮かべて語り出す。桓魋は己も笑みを返し、祥瓊との他愛のない会話を楽しんだ。このひとときがいつまでも続けばいいのに、と密かに願いながら。

「さあ着いた。無理しない程度に頑張れよ」
「あ……ありがとう」

 私室に着いて、下ろしたくない想いを隠しつつ声をかける。少し頬を染めた祥瓊が、桓魋を見上げてそう言った。桓魋は僅かに眼を瞠る。咲き初めた八重桜のようなその貌は思わず見蕩れるほど綺麗だ。桓魋は破顔して応えを返した。
「どういたしまして」
 祥瓊は頬をもっと赤くして、足早に私室へ入っていった。桓魋はわけが分からず首を捻る。しかし、思わぬ役得に胸を温めながら仕事に戻ったのだった。

「――ねえ、あの二人、結局どうなってるんだと思う?」
「謎は深まるばかりだな」

 一部始終を見届けて、こっそりと顔を出した女御と慶主が顔を見合わせて溜息をつく。それを見て、大僕は大らかに笑っていたのだった。

2017.05.17.

後書き

2017/05/17(Wed) 18:11 Home No.540
 管理人作品第4弾及びリクエスト作品第3弾「将軍の噂話」をお届けいたしました。
 御題其の百九十八「金波宮の日常茶飯」の熊将軍視点になります。 はい、読んでいなくても解ると思います〜。

 桜がほとんど出てこなくて失礼いたしました〜。 しかもあんまり諸説粉粉していないような気もいたしますが……。 どうぞご寛恕くださいませ。お気に召していただけると嬉しゅうございます。 リクエストありがとうございました!

 さてさて、残り5日、あと何本出せるでしょうか。天帝のみぞ知る……(苦笑)。
 そこ、こっそり覗いているあなた! 管理人とともに足掻きましょう(笑)。 まだまだあなたの素敵な桜をお待ち申し上げております。

2017.05.17. 速世未生 記

微笑ましい♪  饒筆さま

2017/05/17(Wed) 23:39 No.548
 ツンデレ気味の元公主も、ニブチン気味の左将軍もなんだか初々しくて微笑ましいですね〜 二人の周りの空気が桜色に染まっている様が浮かびます(うふふ♪)
 主上、謎じゃありませんよ、現在進行形で深化中なんですよ〜

 ほっこりハッピーなお話をありがとうございます。
 ええっと……私は現在ノープランですが、最後まで踊りきってみます(笑)

ほわ〜〜! 文茶さま

2017/05/17(Wed) 23:56 No.551
 良い、良いですこの二人!  もう祥瓊が可愛くて可愛くて。熊さんなんてカッコいいの〜!! (すみません、ちょっと興奮して本能のままに叫んでおります 笑)  この二人の光景が目に浮かんできてもう.....萌える萌える(笑)
 金波宮は平和ですねぇ♪ こんななんでもない日常が本当に嬉しいです。 ずっと穏やかな日々が続いていきますように。
 胸がほんわか温かくなりました。ありがとうございます!

桃色の世界 凛さま

2017/05/18(Thu) 01:24 No.553
 祥瓊と桓魋のやり取りは少女マンガの主人公みたいでキュンキュンします。 それを見ている周囲も。もう、なんて可愛いんだ。どいつもこいつも。
 二人の様子に桃色がしっかり見えて幸せデス。ああ、平和っていいわね。
 ありがとうございました。

その手に持ってるのをちょっと見せて。 minaさま

2017/05/18(Thu) 12:43 No.555
 もうし、衣裳部屋の女官ですけど、肩の縫い合わせの部分がうまくいかないので、 そのお手のお衣装ちょっと見せていただけませんか?  …というのは冗談ですけれども。笑
 陽子に豪華な衣装を着せたい祥瓊の気持ちが良くわかりますvv  美しいものに囲まれて育った素地がある祥瓊には、 あっさりした男装の陽子を飾らずにはいられないのでしょうね。 で、大きな商家(CDブック由来)に生まれた桓魋も、美しいものには目が利くのでしょう。 桓魋にとってもっとも美しいものは言わずもがなですが。笑
 お似合いの二人をどうもありがとうございました。

んふふ 篝さま

2017/05/18(Thu) 22:06 No.557
 や〜〜〜〜〜!! にけやっぱなしでございます〜〜〜〜〜!!!!  可愛いなあ、可愛いなあ、こんちくしょう…(動揺のあまり言葉遣いが乱れております)

 祥瓊さんから逃げ回る陽子主上も、それをのんびり眺める周囲もほっこりほこほこ和みますし、 その後の少女漫画展開も「ごちそうさま!」でございます、ええ、ええ。 鈴と虎嘯も気になりますねえ。
 嗚呼、金波宮の女官になって一部始終を見ていたいです(笑)

 楽しくもほっこりするお話をありがとうございました。

ご感想御礼 未生(管理人)

2017/05/19(Fri) 18:22 No.562
 皆さま、拙作にご感想をありがとうございました〜。

饒筆さん>
 初々しく微笑ましい二人をお見守りいたっだけて嬉しゅうございます。 おお、二人の周りの空気が桜色! なんと上手い例えでございましょう!  私もほっこりいたしました〜。
 ノープランと言いつついつも饒筆さんはやってくださる!  素敵な桜を最後までお待ち申し上げておりますね〜。

文茶さん>
 萌えていただけて嬉しゅうございます〜。 この二人の出会いの場面を読み直してまいりましたところ、結構殺伐としておりまして、 生き残れてよかったね〜と思いました。 こんな平和な日々がずっと続けばよいと私も願って已みません。
 文茶さんの呟きも密かに拝見して楽しみにしております。 間に合わせてくださいね〜。うふふ。

凛さん>
 ほんと少女漫画展開ですよね(笑)。君たち、実は結構歳喰ってるよね……(禁句/笑)。
 桃色ハッピーを凛さんにお楽しみいただけて嬉しゅうございます!

minaさん>
 友情出演ありがとうございます〜。思わず女官姿のminaさんを想像してしまいました!  違和感ないです(笑)。
 国で一番着飾れる立場にある女王がいつも男装、祥瓊にとっては言語道断かと(笑)。 懲りない祥瓊とそれを可愛く思っている熊将軍をお楽しみくださりありがとうございました〜。

篝さん>
 桓祥の雄、篝さんにお楽しみいただけてほっと安堵いたしております〜。 ベタな展開ではございますが、慶は平和だよっていう(笑)。
 みんなで女官に扮して覗き見してみましょうか(笑)。

熊さんパラダイス  葵さま

2017/05/21(Sun) 10:58 No.575
 未生さま、こんにちは!  あなたさまの植木鉢の後ろの小さい水抜き穴に引っかかった小石・葵でございます。
 熊さん、イケメン…!  女史をごく自然にお姫様だっこだなんて熊熊パラダイスでございます。
 「あの二人」から連想される組み合わせが無限にあって、 さらにそれぞれのくみあわせの間には桜がほころんでいるような、 あるいは咲き誇っているような視覚的な誘導までしてくださる、 素晴らしいお話の構図でございますね。
 とりあえず熊さんとお嬢さん(女史)は五分咲きぐらい??(笑)でございましょうか。 うっふっふ。物影からデバガメしてみたくてうずうずしております。
 素敵なお話を拝読させていただいてありがとうございました!

突っ伏し状態 ネムさま

2017/05/21(Sun) 23:59 No.601
 すみません。 どうしてもくま〇んが鮮やかな八重桜を一抱えして笑っている図しか浮かびません。 だって、あまりに可愛いんだモン(バンバン! ← うれしさの余り、突っ伏して机を叩く音) 普通そんなあっさりお姫様抱っこする?(バンバンバン!!←同)
 いやぁ〜、とっても幸せな気分にさせて頂きました。 今度は金波宮の関係図(噂の)を作ってくださいね(笑)  ありがとうございました!

物陰から見守り隊 由都里さま

2017/05/22(Mon) 19:47 No.625
 あ〜〜(語彙力が低下しております)
 相変わらずな二人ですね〜〜!! 大好きです。 祥瓊も桓タイも自覚してるんだかしてないんだか、 大人っぽい二人組でありながら肝心なところは天然ちっくです。 雰囲気だけは熟年夫婦なのに、初々しさときたら…たまりません。
 いつもハイライトが当たる陽子さんも、今回はそっと物陰から見守ります。 私も見守ります。真相やいかに(笑)

二人のやりとりが… 晃子さま

2017/05/22(Mon) 21:32 No.635
 お久しぶりです。ギリギリに書き込みですみません。
 お話拝見して二人のやりとりが可愛すぎてたまりませんでした(≧∇≦)  それも桓タイがお姫様抱っこして祥瓊を運ぶところがスゴくツボでした\(//∇//)\  どこまでもお姫様抱っこで運んじゃって〜〜‼とおもっちゃいました。
 とても素敵なありがとうございました。

ご感想御礼 未生(管理人)

2017/05/22(Mon) 23:10 No.649
葵さん>
 (思わず植木鉢を探してしまいましたが残念がらうちにはございませんでした……)
 もう、笑いの渦で、ご感想が滲んでよく見えません(爆)。 いや〜、楽しいご感想をありがとうございました!

ネムさん>
 ネムさんにそんなに悶えていただけるなんて……! 書いた甲斐がございました!  お楽しみくださりありがとうございました〜。

由都里さん>
 物陰から見守り隊員が増えてしまいましたね(笑)。 この二人深化するのに何十年かかるのやら……(苦笑)。 お楽しみいただけて嬉しゅうございました〜。

晃子さん>
 いえいえ、お声を上げてくださりありがとうございます!  熊将軍、フツーにお姫さま抱っこしちゃいましたよね。 私も実はそこツボでございました(笑)。
背景画像「篝火幻燈」さま
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