供王の横顔@管理人作品第1弾
2019/03/20(Wed) 18:02 No.1
本日3/20、気象庁より長崎にて最初のそめいよしのが開花したと発表されました。
長崎トップバッターは初めてだな〜と思いましたところ、
なんと41年振りだそうでございます。
今年は最初の予想日が早く、管理人、
毎日ドキドキしながら開花宣言を待っておりました。
というわけで、今年も祭を始めさせていただきます!
投稿掲示板へようこそいらっしゃいました。
皆さまのご参加を心よりお待ちいたしております。
投稿の見本も兼ねて、管理人作品第1弾を投下いたします。
よろしければお楽しみくださいませ。
- 登場人物 利広・珠晶
- 作品傾向 ほのぼの
- 文字数 1289文字
供王の横顔
2019/03/20(Wed) 18:04 No.2
霜楓宮に少女王を訪ねてみれば、宮の主は眉間に皺を寄せて動きを止めていた。その視線の先、小卓には薄紅の花が活けてある。利広はくすりと笑いを零し、声をかけた。
「――難しい貌をしているね」
はっと我に返った女王はすぐに顔を上げた。利広を認めた供王珠晶は露骨に眉を顰める。
「相変わらず無礼なお出ましね、利広」
いつもの小言を聞き流し、利広は軽く訊ねた。
「慶に行ってきたんだろう。何かあったのかい」
泰麒捜索時の礼も兼ねた観桜の宴が東の国で開かれた。蓬莱を探索した雁や範は勿論、崑崙を担当した奏、恭、才にも声がかかったのだ。奏からはたっての願いで公主文姫が参列した。恭からは供王珠晶が自ら出席したと聞いている。
珠晶は眉根を寄せてそっぽを向いた。よほど話したくないらしい。そう思いつつも利広は笑みを浮かべて応えを待った。珠晶は小さく溜息をつき、重い口を開く。
「御物を盗んで逃走した芳の元公主に会ったわ」
「へえ」
恭が芳の州侯に依頼されて元公主を預かった話は聞いていた。その娘が供王の御物を盗んで逃亡したことも。供王珠晶は直ちに追っ手をかけ、隣国の柳と範にも手配書を送った。その後、慶から元公主が出頭する故減刑してほしいとの書簡が届き、更には芳からも同様の嘆願があったが、供王珠晶は国政への干渉を許さず、芳の使者を追い返したという。
国外追放、以後一切恭国への入国はまかりならず、恭国にあるを発見されれば、委細問わず叩き出す。
元公主に下された刑罰を聞いて、利広は手を叩いて笑ったものだ。他国からの内政干渉は許さない、と言いつつ元公主に寄せた温情がなんとも珠晶らしい。
「元公主と景王は友達なんですって」
にっこり笑って先を促す利広に、珠晶は不機嫌な応えを返す。まったくもって理解できない、と続けた珠晶は顔を蹙めた。
「景王は、内乱を治めようと降りた街で元公主と出会って意気投合したそうよ」
なるほど、あの女王ならやりかねない。登極時に手助けした大国の王もふらふらと出奔を繰り返す破天荒な御仁だった。利広はそう思い、堪えきれずに笑声を零す。事情を知らない珠晶は柳眉を顰めて利広を睨めつけた。
「笑い過ぎよ、利広」
癇癪を起こす珠晶を見つめ、利広は少女との出会いを思い浮かべる。恭の里の閑地、墓地にて寝そべる
騶虞を撫でようとしていた剛胆な少女。蓬山を目指すと漏らした彼女を追って、利広もまた乾の街に向かった。朱氏を剛氏として雇った珠晶と再会を果たし、利広はあのとき初めて昇山の旅を体験したのだ。
恐らく共に内戦を治める戦いに身を投じたのであろう慶主と元公主。二人が固い絆で結ばれているとしても、珠晶と利広もまたあの厳しい昇山の旅を共に越えてきた仲間なのだ。それから九十年もの間、こうして会話を重ねている。利広は人の悪い笑みを浮かべて問うた。
「私たちだって街で知り合って意気投合した友達だろう?」
聞いた珠晶は大きく眼を瞠って動きを止める。それでも珠晶は嫌味を一言返した。
「ただの腐れ縁よね」
ぷいと横を向いた珠晶の頬は小卓に飾られた花の如き薄紅に染まっている。素直でない友の可愛らしい横顔を眺め、利広はいつまでも笑い続けた。
2019.03.20.
後書き
2019/03/20(Wed) 18:07 No.3
桜祭第1弾としてはお初の利広でございました。
ラスト開催の今年は利広で書こうと思いつつ、
末声にしてはいけないというプレッシャーで筆が止まっておりました。
途中で諦めて別なものを書こうと考えて、振り返ってみました。
浩瀚・桜・浩瀚・尚隆・景麒・陽子・祥瓊・蘭桂・六太・鈴・虎嘯・楽俊。
う〜ん、やっぱり利広。
というわけで、御題其の二百十一「隣の芝生」の利広視点を仕上げてみました〜。
皆さまの素敵な桜、お待ち申し上げておりますね!
2019.03.20. 速世未生 記
ご感想御礼 未生(管理人)
2019/03/29(Fri) 01:25 No.79
自作のレスは忘れがちで申し訳なく。
ひめさん>
早速いらしてくださりありがとうございました。
ただの腐れ縁では済まない関係なのですがねえ(笑)。
素直になれない珠晶を可愛いと言っていただけて嬉しゅうございました。
饒筆さん>
祭に寿ぎをありがとうございます! 今年もよろしくお願いいたしますね。
いつも舌鋒鋭い珠晶の可愛さについ揶揄ってしまう利広でございます〜。
スウグでナンパ(笑)。ノーコメントで(笑)。
瑠璃さん>
祭を寿いでいただき嬉しく思います。今回もどうぞよろしく。
そうそう、ぷりぷりしているイメージでございますよね!
時にはこんなふうに可愛らしく(笑)。利広も飽きないことでございましょう。
ネムさん>
はい、今年も皆さまと一緒に盛り上がってまいりたい所存でございます!
正直こんなに変わるとは思っていなかったでしょうね〜。
素直でないからこそより可愛い珠晶でございます。
お楽しみくださりありがとうございました。
文茶さん>
今年も無事に祭を開催できました。桜開花までやきもきいたしましたが(苦笑)。
利広と珠晶はやはりいいコンビだと思います〜。
なんだかんだ小言を浴びせても来るなとは言わない珠晶でございます(笑)。