主従の観桜@管理人作品第4弾
2019/04/10(Wed) 23:44 No.260
皆さま、こんばんは。いつも祭にご投稿及びレス、拍手をありがとうございます。
本日の北の国、最低気温は+1.2℃、最高気温は+12.8℃でございました。
関東では雪が降ったようでございますが、北の国の我が街では冬将軍殿は暴れませんでした。
さて、桜開花情報でございます。
4/7に徳島・前橋・甲府、8日に彦根・福島、9日に鹿児島・宇都宮、
10日に仙台にてそめいいよしのが満開となりました。
あまりの寒さに桜前線も足踏み中のようでございます。
北の国の桜はいつ咲くでしょうか。
本日4/10は主従の日。ということで慶国主従のお話を書き流しました。
縷紅さんがご投稿くださった雪桜に萌えてしまいましたね〜。
よろしければご覧くださいませ。
- 登場人物 景麒・陽子
- 作品傾向 ほのぼの・シリアス
- 文字数 1061文字
主従の観桜
2019/04/10(Wed) 23:48 No.261
「どちらへ行かれるのです」
低い声で問いかければ、忍び足で禁門を抜けようとしていた主は小さく肩を跳ねさせた。景麒は大きく溜息をつく。主はそろそろと振り返り、にっこりとよい笑顔を見せた。
「仕事に限りがついたので、息抜きに、だな」
そんな主の言い訳に、景麒は眉間に皺を寄せて冷たく言い放つ。
「息抜きならば茶を淹れさせますので執務室にお戻りください」
「お茶を飲むならちょっと欲しいものがある。来い」
そう言い様に主は悪戯っぽい貌を見せて景麒の手を取る。身体を強張らせた景麒とは対照的に、主は流れるような動作で歩き出し、あっという間に禁門を抜けてしまった。
「班渠、驃騎」
主上、と咎める暇もなく、姿を現した使令に乗せられて、景麒は蒼穹に連れ出されたのだった。
班渠に跨る主の背を眺め、景麒は再び大きな溜息をつく。景麒を乗せた驃騎はちらりと景麒に視線を移したが何も言わなかった。桜ももう満開を迎えたという下界は花冷えなのか肌寒い。やがて。
「わあ!」
近郊の山に来てみれば、薄紅のはずの花が白く見える。主を叫ばせたものを認め、景麒もまた眼を瞠った。
「ほんとに雪が桜に積もってる……」
主はそう言って感嘆の溜息をついた。景麒もまた雪を載せて重そうに枝をしならせる桜花に見入る。もしかして。
「――これを見にいらしたのですか」
「うん。昔、雁で見たことがあったけれど、まさか自国で見られるとは思ってなかったよ……」
景麒を見上げ、主は笑みを見せて頷いた。そしてまた白く染められた桜花を眺める。
「綺麗だけど、ちょっと可哀想……」
「直に融けるでしょう」
枝先からは雫が滴っている。遠からず雪は融けてなくなるだろう。主は景麒を見上げ、少し意地悪な顔をした。
「分からないぞ。国が傾いていて、この先もっと降るかもしれない」
「主上!」
楽しげに不吉なことを告げる主を咎めると、冗談だよ、と答えが返ってきた。冗談でも口にしてほしくない言葉だ。国は落ち着いている。景麒の体調も良好だ。しかし、主は真面目に何かを考えているように見えた。
「主上……」
「――いつかはそんな日が来る」
雪桜を見つめたまま、主は静かにそう言った。景麒はそんな主の横顔を声なく眺める。主がいなくなる未来など想像したくもない。それなのに。
「まあ、それは今じゃないかな」
顔を上げた主は爽やかな笑みを見せる。それは、景麒がよく知る陽光の笑顔。
「――勿論です」
景麒は大きく頷く。主は明るい笑い声を立てた。
「この貴重な景色はよく見ておこう」
陽に照らされて融けていく桜の上の雪を、景麒は主とともにゆっくりと眺めたのだった。
2019.04.10.
ご感想御礼 未生(管理人)
2019/05/24(Fri) 18:39 No.618
自作のレスが遅過ぎて申し訳なく。
文茶さん>
相変わらずのぐるぐる模様、お楽しみいただけて嬉しゅうございます。
景麒にはずっとこの雪桜を覚えていてほしいものでございます。
饒筆さん>
いつもながら妄想を邁進させるご感想をありがとうございます(笑)。
こちらこそ楽しませていただきました〜。
瑠璃さん>
陽子主上の咄嗟の行動に固まる景麒を可愛がってくださりありがとうございます。
陽子主上は勿論わかってやっております(笑)。
主従の日に間に合ってほっとしておりました〜。
ネムさん>
意地悪を言っても、景麒の「直に融けるでしょう」との即答は
陽子主上にとって嬉しいことなのだと思います。
似た者生真面目主従は実は管理人のツボでございます(笑)。
温かいお茶の差し入れ、痛み入ります〜。
きっと持ち帰った花びらを浮かべて楽しむことでございましょう。