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御題其の十二

邪な胸の内

「──よくやったな」
「うん……」
 片手を挙げて笑う尚隆に、陽子はゆっくりと歩み寄った。輝かしい翠の瞳は少し潤んでいる。尚隆は、もう我慢しなくていいぞ、と囁き、陽子を抱き寄せた。
 陽子は尚隆にしがみつき、嗚咽する。尚隆はその華奢な身体を抱きしめ、頭を撫で続けた。
 やがて陽子は潤んだ目を上げた。尚隆は微笑を浮かべ、その涙を唇で拭う。そして、瞼を閉じた陽子に口づけを落とす。
「──落ち着くまで、どこかで休んでいくか?」
「ううん、もう大丈夫……」
 今の今まで泣いていたとは思えぬ、揺るぎない女王の笑み。尚隆は苦笑を浮かべてもう一度口づけを落とす。──立ち直りが早すぎるぞ、と胸で呟きながら。

2006.04.29.
 昨日、錯乱して書き流した一文でございます。 さすがに昨日アップするのは思いとどまりました。 ああ〜! 邪なのは尚隆でしょうか、それとも……この私ですか!?  でも、でも! 陽子主上、鈍いよ、あなたは鈍すぎる……。これって、邪ですか……?

 ──というわけで 「黎明」第23回69章の裏話でした。 本編が純なだけに……。別窓開きます。(2006.05.13.追記)

2006.04.29.  速世未生 記
(御題其の十二)
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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