御題其の二十二
奇妙な物体
「六太」
宰輔延麒の執務室、堂室の主はいない。その書卓の上に、奇妙なものがあった。
「──?」
延王尚隆はまじまじと「それ」を眺めた。「それ」は金属でできた円筒状の物体で、桃の絵が描いてあった。
「???」
持ち上げるとそれなりの重量がある。桃の絵が描いてあるということは、中に桃が入っているのか。しかし、どうやって開けるのだろう。尚隆は「それ」をひっくり返してみた。後ろには金属の輪と、開け方の説明図があった。
「ほう……便利になったものだな」
そうひとりごち、尚隆は説明図のとおり、輪に指をかけた。
「わ〜! 止めろ! 開けるな! 莫迦殿!」
六太の喚き声が耳に入ったときには、もう指に力が入っていた。パキッと小気味よい音が響き、甘い香りが漂った。中には切られた桃が汁に漬かって入っていた。
「あー……。陽子にやろうと思って持ってきたのに、桃缶……」
「桃缶、というのか?」
「桃の缶詰だよ……。あ、一人で食ってんじゃねーよ!」
「〜〜! 甘いな」
「だから止せって言ったのに……!」
六太は顔を顰める尚隆から缶詰を奪い取ろうとした。尚隆は軽々とそれをよけた。六太は恨めしげな顔をする。
「返せ! せっかくの土産を台無しにしやがって……」
「このまま持っていけばよいではないか」
「そういう問題かよ……。あっ、待て! 早まるな! っつーか、おれも行く!」
さっさと踵を返す尚隆の後を、六太は必死に追い縋った。
2006.06.16. 速世未生 記
裏タイトル、「尚隆、缶詰を知る」をお届けいたしました〜!
(お解かりにならない方は、御題其の二十一
「かの方のある決心」をご覧くださいませ)
──またバカバカしいものを書いてしまいました。
しかも、これ、一気書きできなかった代物でございます……。何やってんの、私。
(リングプルのある桃缶は存在するのか? と考えたのです……。
お店に行ったら、ちゃんと売ってました! ←確かめるなよ……)
だんだん、「御題」と「拍手」のボーダーが曖昧になってまいりました。どうしましょう……?
2006.06.16. 速世未生 記
(御題其の二十二)
ひめさま
2006/06/16 22:15
こんばんは〜。
なるほど、こうやって尚隆は缶詰の汁を・・・
じゃなかった、缶詰を知ったのですね。
なんだか楽俊の作る桃の甘露煮を食べたいような・・・。
今、おなかはいいはずなのについつい食べ物のほうへ話題が行ってしまいます。
困ったもんだ!!
未生(管理人)
2006/06/17 04:20
ひめさん、いらっしゃいませ〜。
こんなバカバカしいものにまでコメントをありがとうございます。
前回ポカしたのを、開き直ってこれかよって感じでございます。
実は書いてて、私も食べたくなりました、桃缶。
メッセージ、ありがとうございました〜。
ひめさま
2006/06/18 00:17
こんばんは〜
季節が訪れれば桃の宝庫。
ただし高級なものはナカナカお口には入りません。
“少々傷あり”がいい感じです。
たま〜〜に“ウェ〜〜”もありますが、これは大当りの部類でしょう。