(開催期間 2021.09.01.~10.10.)
お祭は終了いたしました。ありがとうございました!
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これでも尚陽 ^^;
せっかくの尚陽祭なのに、甘やかなお話が書けない性分なので、今回は協力者を集めることにしました。
驍宗様が何故かお父さんになっている…
登場人物:陽子 驍宗 尚隆
作品傾向:ほのぼの
文字数 :2420文字
Re: これでも尚陽 ^^;
外堀を埋める ― 新しい風と親心 ―
「お忙しいところご指導を頂き、ありがとうございました!」
目の前で真紅の長い髪が揺れた。その生真面目な言葉に、驍宗の目元が緩む。
「延王から話は伺っていたが、景王は筋が良い。先が楽しみですな」
「いいえ。私はこちらに来るまで剣の稽古なんてしたことがないから、賓満を取ってしまうと、まだまだ…」
そこで景王・陽子は慌てて手を横に振った。
「でも、うちの冗祐は良い子です。景麒の言うことを聞くし、思いやりもあって」
どうやら驍宗が賓満憑きの兵士に襲われたことを聞いたらしい。懸命に自国の使令を弁護する若い女王の姿に、驍宗は堪らず声を上げて笑った。
王と麒麟が共に行方不明となり、天の条理が機能不全になるという、未曽有の混乱に陥った戴を救ったのは、一人の王師将軍の決死の行動と、それに応えた胎果の女王だった。世界の半数以上の国が協力し、蓬莱から泰麒を帰還させ、鉱山の底に落とされた王が戻ると偽王討伐への支援を行った。
驍宗は、戴の大恩人とも言えるこの女王とは、乱の平定中一度顔を合わせたが、凛とした風情ながらも幼い面影を残した少女の姿に驚いたものだった。
「しかし、こうして改めてお話すると、景王の真面目で思いやりのある気質が分かります。さすがにあの延王を動かされた方だ」
偽王が討たれ落ち着きを取り戻した白圭宮へ、ようやく招くことが出来た恩人に、驍宗は感謝と賛辞を伝えた。
「でも本当は、延王も戴のことが気になっていたと思うんです。私の無茶振りに乗ったような顔をしていますけど、いい機会だと思ったのかも」
「あの方はそれ程甘くはない。国に益が無ければ、例え情があっても切り捨てる」
驍宗の強い言葉に、陽子は思わず背筋を伸ばした。
「私が延王ならば、今回の戴の出来事は、やはり見て見ぬことにしたでしょう。しかし延王から貴女が“民を救済する新しい道を作りたい”と言って説得されたと聞き、目が開く思いでした」
驍宗の真紅の瞳がひたと陽子を見る。
「私は敵の手に落ちるまで自分の力を過信し、自分の力のみで国を救えると思っていました。今回のことで他人を頼ることと、信じることの違いを学びました。私は民を信じ、そして他国とも手を携えて行ける道を探したいーそれが王としての、これからの私の役目ではないか、と」
見開かれていた翡翠の瞳がふと伏せられ“よかった”という呟きが漏れた。
「申し訳ないと思っていたんです。あんな大きな啖呵を切って、そのくせいざとなると自分の宮殿で内乱を起こしてしまい、結局雁や奏、範の大国に全部任せるようなことになってしまった…」
「どの国の王も、景王を褒めこそすれ、お怒りになるようなことはなかった」
「でも、他国の王の言い出したことで、他国へ戦に駆り出された人々は…いろいろ思うでしょうね」
小さく首を左右に振る陽子の言葉に、驍宗は眉を顰める。驍宗も雁の軍と同行した際に耳にしたことがあるのだ。“延王は若い景王に甘い”と。
「その思いは、我が戴が受けるべきものでしょう。景王が一人悩まれることはない」
驍宗の言葉に肩を下しかけた陽子は、しかしすぐに顔を上げ言った。
「でも私の力が不足しているのは事実です。その不足を今だ延王に庇ってもらっている。
あの人は文句を言っても必ず受けてくれる。笑ってくれて…それが、くやしい」
そしてまた俯いてしまった少女の細い肩を見つめ、驍宗は“随分と矜持の高い娘だ”と苦笑しかけて、ふと気が付いた。幼く項垂れた少女の表情を隠す真紅の髪。その間から僅かに見える白い首が、ほんのり紅い。
― まさか ―
自他共に認める武骨者の驍宗だが、伊達に百年近く多くの人心を掌握していたわけではない。“くやしい”の一言に、自分の無力を嘆く気持ちや相手への思いやり以上の想いを感じ取り、思わず唸った。
― 悪い方ではないが、頻繁に妓楼へ出入りしているとも聞いている。いや、その前に、王同士ということに、天がどう判断されるか…。やはりここは大人の分別として ―
至極真っ当な年長者として悩む驍宗だが、不意にあることを思い出した。
「現在(いま)の胎果は人をこき使う。お前も気を付けろ」
声も表情も明るかった。多分泰麒の話をしていたのだろう。不調を抱えた己の麒麟を想い言葉が重くなりかけた驍宗に、延王・尚隆は景王を持ち出し、笑い飛ばした。その軽口に“相変らずな”と笑いかけて、驍宗はもう一度相手を見直した。
嘗て驕王に命じられ延王・尚隆と剣を交えて以来、驍宗にとって延王は乗り越えるべき目標となった。同じ歳月を過ごせば後れは取らない、と己を鼓舞してきた。
思い返せば己の傲慢さに羞恥さえ覚えるが、函養山の底で闇だけを見つめてきた今、不思議と延王・尚隆という人物がよく見えるような気がしていた。陽気な振舞の合い間にふと見え隠れする“陰”―施政者の冷酷、永く生きる者の無常観、脆さ―そうした諸々のものが以前の彼には纏わりついていた。
しかしこの時、若い女王の傍から見れば途轍もない無鉄砲な行動を話している彼からは、その“陰”がきれいに拭い去られていたのだった。
驍宗は目の前の少女を見た。自分の無力に項垂れる姿は、己の麒麟の幼い頃を思い出させる。外見は全く違う二人だが、自分の置かれた場所で必死に戦う、そのしなやかな強さは同じものだ。
― 確信はない。しかし…この少女にあの延王の“陰”と対峙する程の力があるというならば…面白い ―
驍宗の視線に気が付いたのか、陽子は顔を上げ慌て気味に言った。
「申し訳ありません。こんな愚痴なんか言って」
「いいえ。景王は我が国の恩人。私も泰麒も、貴女のためなら助力を惜しみません」
そうして驍宗はゆったりと微笑んだ。
「いざとなれば、李斎を蓬山へ遣わしましょう」
その後。
「ねぇ高里くん。泰王って包容力があって、何だか“お父さん”みたいだね」
「あ、中嶋さんもそう思います?」
景王と泰麒のはしゃぎ合いながらの会話を聞いて、白圭宮の人々が固まった、とか。
外堀を埋める ― 新しい風と親心 ―
「お忙しいところご指導を頂き、ありがとうございました!」
目の前で真紅の長い髪が揺れた。その生真面目な言葉に、驍宗の目元が緩む。
「延王から話は伺っていたが、景王は筋が良い。先が楽しみですな」
「いいえ。私はこちらに来るまで剣の稽古なんてしたことがないから、賓満を取ってしまうと、まだまだ…」
そこで景王・陽子は慌てて手を横に振った。
「でも、うちの冗祐は良い子です。景麒の言うことを聞くし、思いやりもあって」
どうやら驍宗が賓満憑きの兵士に襲われたことを聞いたらしい。懸命に自国の使令を弁護する若い女王の姿に、驍宗は堪らず声を上げて笑った。
王と麒麟が共に行方不明となり、天の条理が機能不全になるという、未曽有の混乱に陥った戴を救ったのは、一人の王師将軍の決死の行動と、それに応えた胎果の女王だった。世界の半数以上の国が協力し、蓬莱から泰麒を帰還させ、鉱山の底に落とされた王が戻ると偽王討伐への支援を行った。
驍宗は、戴の大恩人とも言えるこの女王とは、乱の平定中一度顔を合わせたが、凛とした風情ながらも幼い面影を残した少女の姿に驚いたものだった。
「しかし、こうして改めてお話すると、景王の真面目で思いやりのある気質が分かります。さすがにあの延王を動かされた方だ」
偽王が討たれ落ち着きを取り戻した白圭宮へ、ようやく招くことが出来た恩人に、驍宗は感謝と賛辞を伝えた。
「でも本当は、延王も戴のことが気になっていたと思うんです。私の無茶振りに乗ったような顔をしていますけど、いい機会だと思ったのかも」
「あの方はそれ程甘くはない。国に益が無ければ、例え情があっても切り捨てる」
驍宗の強い言葉に、陽子は思わず背筋を伸ばした。
「私が延王ならば、今回の戴の出来事は、やはり見て見ぬことにしたでしょう。しかし延王から貴女が“民を救済する新しい道を作りたい”と言って説得されたと聞き、目が開く思いでした」
驍宗の真紅の瞳がひたと陽子を見る。
「私は敵の手に落ちるまで自分の力を過信し、自分の力のみで国を救えると思っていました。今回のことで他人を頼ることと、信じることの違いを学びました。私は民を信じ、そして他国とも手を携えて行ける道を探したいーそれが王としての、これからの私の役目ではないか、と」
見開かれていた翡翠の瞳がふと伏せられ“よかった”という呟きが漏れた。
「申し訳ないと思っていたんです。あんな大きな啖呵を切って、そのくせいざとなると自分の宮殿で内乱を起こしてしまい、結局雁や奏、範の大国に全部任せるようなことになってしまった…」
「どの国の王も、景王を褒めこそすれ、お怒りになるようなことはなかった」
「でも、他国の王の言い出したことで、他国へ戦に駆り出された人々は…いろいろ思うでしょうね」
小さく首を左右に振る陽子の言葉に、驍宗は眉を顰める。驍宗も雁の軍と同行した際に耳にしたことがあるのだ。“延王は若い景王に甘い”と。
「その思いは、我が戴が受けるべきものでしょう。景王が一人悩まれることはない」
驍宗の言葉に肩を下しかけた陽子は、しかしすぐに顔を上げ言った。
「でも私の力が不足しているのは事実です。その不足を今だ延王に庇ってもらっている。
あの人は文句を言っても必ず受けてくれる。笑ってくれて…それが、くやしい」
そしてまた俯いてしまった少女の細い肩を見つめ、驍宗は“随分と矜持の高い娘だ”と苦笑しかけて、ふと気が付いた。幼く項垂れた少女の表情を隠す真紅の髪。その間から僅かに見える白い首が、ほんのり紅い。
― まさか ―
自他共に認める武骨者の驍宗だが、伊達に百年近く多くの人心を掌握していたわけではない。“くやしい”の一言に、自分の無力を嘆く気持ちや相手への思いやり以上の想いを感じ取り、思わず唸った。
― 悪い方ではないが、頻繁に妓楼へ出入りしているとも聞いている。いや、その前に、王同士ということに、天がどう判断されるか…。やはりここは大人の分別として ―
至極真っ当な年長者として悩む驍宗だが、不意にあることを思い出した。
「現在(いま)の胎果は人をこき使う。お前も気を付けろ」
声も表情も明るかった。多分泰麒の話をしていたのだろう。不調を抱えた己の麒麟を想い言葉が重くなりかけた驍宗に、延王・尚隆は景王を持ち出し、笑い飛ばした。その軽口に“相変らずな”と笑いかけて、驍宗はもう一度相手を見直した。
嘗て驕王に命じられ延王・尚隆と剣を交えて以来、驍宗にとって延王は乗り越えるべき目標となった。同じ歳月を過ごせば後れは取らない、と己を鼓舞してきた。
思い返せば己の傲慢さに羞恥さえ覚えるが、函養山の底で闇だけを見つめてきた今、不思議と延王・尚隆という人物がよく見えるような気がしていた。陽気な振舞の合い間にふと見え隠れする“陰”―施政者の冷酷、永く生きる者の無常観、脆さ―そうした諸々のものが以前の彼には纏わりついていた。
しかしこの時、若い女王の傍から見れば途轍もない無鉄砲な行動を話している彼からは、その“陰”がきれいに拭い去られていたのだった。
驍宗は目の前の少女を見た。自分の無力に項垂れる姿は、己の麒麟の幼い頃を思い出させる。外見は全く違う二人だが、自分の置かれた場所で必死に戦う、そのしなやかな強さは同じものだ。
― 確信はない。しかし…この少女にあの延王の“陰”と対峙する程の力があるというならば…面白い ―
驍宗の視線に気が付いたのか、陽子は顔を上げ慌て気味に言った。
「申し訳ありません。こんな愚痴なんか言って」
「いいえ。景王は我が国の恩人。私も泰麒も、貴女のためなら助力を惜しみません」
そうして驍宗はゆったりと微笑んだ。
「いざとなれば、李斎を蓬山へ遣わしましょう」
その後。
「ねぇ高里くん。泰王って包容力があって、何だか“お父さん”みたいだね」
「あ、中嶋さんもそう思います?」
景王と泰麒のはしゃぎ合いながらの会話を聞いて、白圭宮の人々が固まった、とか。
確かに驍宗様も陽子さんに甘そう・笑
ネムさま~!こちらではお久しぶりです!
驍宗様はお父さん説、確かにそんな感じがしますね!
「息子(泰麒)の同級生の娘さん」みたいな感じで優しく接してくれそうです。な、なんと、れ、恋愛相談まで受け付けてくれる……?(おお!)
お父さん公認(笑)のお付き合いなら胸を張ってラブラブできますね(うふふ)
ほっこりする一幕をありがとうございました♪
驍宗様はお父さん説、確かにそんな感じがしますね!
「息子(泰麒)の同級生の娘さん」みたいな感じで優しく接してくれそうです。な、なんと、れ、恋愛相談まで受け付けてくれる……?(おお!)
お父さん公認(笑)のお付き合いなら胸を張ってラブラブできますね(うふふ)
ほっこりする一幕をありがとうございました♪
頼りにしてます、驍宗さま!
文茶
2021/09/06(Mon) 21:55 No.19


ネムさま、こちらでまたお会いできて嬉しいです!
しょんぼりしている陽子さんを見ながら静かに百面相している(眉や目、口元のかすかな動きで表情を変えているので、周りからはポーカーフェイスにしか見えない) 驍宗さまが浮かんでまいりました(笑)
今は一人でぐるぐると考えていらっしゃいますが、きっと李斎と相談しながら二人を見守ってくださるでしょう!(おや?お父さんから仲人に!?笑)
しょんぼりしている陽子さんを見ながら静かに百面相している(眉や目、口元のかすかな動きで表情を変えているので、周りからはポーカーフェイスにしか見えない) 驍宗さまが浮かんでまいりました(笑)
今は一人でぐるぐると考えていらっしゃいますが、きっと李斎と相談しながら二人を見守ってくださるでしょう!(おや?お父さんから仲人に!?笑)
ありがとうございます!
饒筆さん> そうそう、小さい頃から知っている親戚の女の子みたいな感じですね。自分の子じゃないけど親身になるような。尚隆に対しても、7年の修行を経て(?)同業者としての親近感の方が増してきたかな、と思っているので、今後二人の強力な後ろ盾になってくれるでしょう(笑)
文茶さん> 驍宗様の百面相!!! 見てみたい!近くに麾下メンがいれば分かるんでしょうか。 驍宗様には是非、お式でバージンロードの付き添いをお願いしましょう(笑)
コメントありがとうございました ^0^/
文茶さん> 驍宗様の百面相!!! 見てみたい!近くに麾下メンがいれば分かるんでしょうか。 驍宗様には是非、お式でバージンロードの付き添いをお願いしましょう(笑)
コメントありがとうございました ^0^/
いらっしゃいませ!
未生(管理人)
2021/09/11(Sat) 02:00 No.24


ネムさん、早速のご投稿をありがとうございました! レスが大変遅くなって申し訳なく。
驍宗さまから見た尚陽とは、とわくわくして読み進めてまいりました。驍宗さまの洞察力の高さに唸り、陽子主上の可愛らしさに胸キュンし、闇を払っているかの方に胸を撫でおろし……。そして! ほのぼのと銘打ちながらのパワーワード! 笑わせていただきました。
きゃっきゃする胎果たちを見て固まる白圭宮の面々が見えるようでございます笑。
皆さまのご感想の秀逸さにも膝を打ちました。「ご感想までが作品」との名言をいただいたこともございます。感謝!
饒筆さん、文茶さん、先レスありがとうございました。
驍宗さまから見た尚陽とは、とわくわくして読み進めてまいりました。驍宗さまの洞察力の高さに唸り、陽子主上の可愛らしさに胸キュンし、闇を払っているかの方に胸を撫でおろし……。そして! ほのぼのと銘打ちながらのパワーワード! 笑わせていただきました。
きゃっきゃする胎果たちを見て固まる白圭宮の面々が見えるようでございます笑。
皆さまのご感想の秀逸さにも膝を打ちました。「ご感想までが作品」との名言をいただいたこともございます。感謝!
饒筆さん、文茶さん、先レスありがとうございました。
ありがとうございます!
未生さん> 陽子を可愛いと言って頂き、胸をなでおろしております。カップリングのお祭に、当人同士が一緒に出てこず、親(?)が出てくるなんて~。でも泰主従は最終兵器(?)を持って応援してくれるのでお許しを ^^;
お忙しいところ、お祭を開催して下さり、ありがとうございます!
お忙しいところ、お祭を開催して下さり、ありがとうございます!
尚、このお祭は個人の運営するもので、公的なものとは一切無関係でございます。
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