(開催期間 2021.09.01.~10.10.)
お祭は終了いたしました。ありがとうございました!
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セッセ、セッセ
今回も周囲から固めていきます。
My設定では、雁の三官吏は現在三公になっています。
登場人物:尚隆 陽子 六太 帷湍 成笙 朱衡 氾麟
作品傾向:ほのぼの3割 コメディ7割 ?
文字数 :2033文字
Re: セッセ、セッセ
外堀を埋める ― 本音と弱味 ―
いつまでも変わらないものなど無い。どれほど長きにわたり続いたものでも、いつかは形を変え、やがて消えていく …
のはずだが、雁州国の玄英宮では五百年経った今でも変わらぬものが、ここにある。
「朝っぱらから どこへ行ったんだ、あの馬鹿は!!!」
帷湍の大音声に庭院の鳥達が一斉に飛び立つ。それを横目に成笙が溜息を吐く。
「既に馴染みとは言え、他国の王と麒麟が見えているというのに」
「王気は宮殿内にあると、台輔が断言されましたから、まぁ大丈夫でしょう」
既に必要な確認作業を済ませている朱衡が、落ち着き払って答えた。
下級官吏または罪人の身分から現王に取り立てられ今や三公にまで上り詰めた、雁の官吏・武人達の憧憬の的である三人の、これが五百年続く朝の日課だった。
「俺は自分がどうしてあの連中に仕えていられるのか、最近よく考えるぞ」
「最近か?」
「この年齢(とし)になると、月日が経つのは早いと言いますからねぇ」
変わらぬ絶妙のボケとツッコミを交わしながら三人が回廊を歩いていくと、一つ先の曲がり角に、彼らの主である延王と延台輔が辺りを伺うように歩いている姿があった。
「尚隆――!!!」
帷湍の大音声に二人はびくりと立ち止まる。特に延王・尚隆は呆然としている。
「今日は景王と氾台輔との会見の日だぞ、忘れたか!」
「美女二人をお待たせするとは、主上らしくありませんねぇ」
成笙と朱衡の二人が立て続けて言うと、延台輔・六太が上目遣いで尋ねる。
「あのさ … お前ら、誰に言ってるの?」
「無論、目の前にいる我が雁の王だ!」
更に言い募ろうとする帷湍の言葉に、朗々とした声が重なった。
「そこにいるのは、陽子か」
五人が一斉に振り向くと、回廊の反対側から『延王・尚隆』が快活な足取りで近寄って来る。二人の『延王』が向かい合う様に、さすがの三人も凍り付いた。しかしそうした三人をよそに、少し背が低い方の『延王』が掠れた声で言った。
「私が … 見えるのですか」
問いと同時に、薄い膜が剝がれるように片方の『延王』の姿が崩れ、鮮やかな緋色の髪が流れ出た。
「おいおい、お前を見間違えるほど耄碌はしていないぞ」
周囲の空気なぞ全く気付かず笑う尚隆だったが、次の瞬間、景王・陽子がその胸にしがみついて泣き出したのには、驚き呆然としたのだった。
「もう、こんなに皺だらけにして!主上にどう言えばいいのよぉ~」
「わりぃ、小姐ちゃん。でも蠱蛻衫のお陰でいろいろ分かったし~」
「分かってどうするのよ。陽子ったら、何でうちの主上でなく、尚隆になんか」
愛らしい頬を膨らませて文句を言う氾麟を見ながら、六太は苦笑する。
― だって仕方ないじゃないか。尚隆には陽子が見えたんだから ―
瀬戸内の海で領民と共に死ぬはずだった尚隆を、国と民とを引き換えに、雁へ連れて来たのは六太だ。六太が約束通り国をくれたからと、尚隆は雁を豊かで美しい国として返してくれた。
― でも、その先は? ―
五百年続く大王朝、北の大国と褒め称えられて久しいが、六太は時々思う。この美しい国は永遠に続くのか、永遠に続くのなら、それを支える王はどうするのか、と。
― 永遠に、囚われ続けるのか?ここに ―
尚隆は自由に常世中を巡る。でも雁からは決して抜け出せない。そうした尚隆の後姿を六太は見続けた。
― でも尚隆は振り返ったんだ。王になる自信は無いのに必死で王になろうとする陽子に。そして陽子と一緒なら、新しい行く先が見つかるんじゃないかって ―
見る者にとって好ましい人物を見せると言う蠱蛻衫。たまたま他人に見つからぬよう尚隆を探しに、陽子は氾麟から借りて被って行っただけだが、尚隆に見えた姿は陽子その人だった。
― それなら … 俺は応援するしかないだろ ―
六太はまだむくれている氾麟にニカッと笑いかけた。
「けどさ、王同士の婚姻、なんてなったら、すごいよな」
「何言ってるの。そんな例は今までに無いわよ。天帝がお許しになるわけ…」
「でもさ、でも実現するとしたら、宴会なんか超豪華になるだろ」
「まぁ…そうよねぇ」
「全国の王や麒麟を呼ばなくちゃならないしぃ。でも玄英宮(うち)って金はあるけど野暮なんだよねぇ~。範なら、そんな心配はないだろうけどぉ」
氾麟の肩がぴくりと動いた。
「当り前じゃない。うちの主上が采配すれば、常世史上に残る素晴らしい宴になるわ」
「だろう?小姐ちゃんも見たいよなぁ~」
氾麟がぶつぶつと“陽子は大丈夫だし、尚隆も黙らせておけば”と呟いていたが、ふと顔を上げて言った。
「でも玄英宮の三人!あの口煩い連中がこんなこと、許してくれるの?」
「大丈夫。ちゃんと弱味を握ったから」
蠱蛻衫が見る者にとって好ましい人物に見えること、そして三人が三人とも蠱蛻衫を被った陽子を『尚隆』と認識したこと― それを尚隆に言えばどうなるか、と六太が言った時の帷湍等三人の表情を、あと千年経っても忘れないだろうと、六太は思う。
「これはこの先、いろいろと使えるぞ」
そう呟いた六太は、とても仁獣には見えない笑みを浮かべたのだった。
外堀を埋める ― 本音と弱味 ―
いつまでも変わらないものなど無い。どれほど長きにわたり続いたものでも、いつかは形を変え、やがて消えていく …
のはずだが、雁州国の玄英宮では五百年経った今でも変わらぬものが、ここにある。
「朝っぱらから どこへ行ったんだ、あの馬鹿は!!!」
帷湍の大音声に庭院の鳥達が一斉に飛び立つ。それを横目に成笙が溜息を吐く。
「既に馴染みとは言え、他国の王と麒麟が見えているというのに」
「王気は宮殿内にあると、台輔が断言されましたから、まぁ大丈夫でしょう」
既に必要な確認作業を済ませている朱衡が、落ち着き払って答えた。
下級官吏または罪人の身分から現王に取り立てられ今や三公にまで上り詰めた、雁の官吏・武人達の憧憬の的である三人の、これが五百年続く朝の日課だった。
「俺は自分がどうしてあの連中に仕えていられるのか、最近よく考えるぞ」
「最近か?」
「この年齢(とし)になると、月日が経つのは早いと言いますからねぇ」
変わらぬ絶妙のボケとツッコミを交わしながら三人が回廊を歩いていくと、一つ先の曲がり角に、彼らの主である延王と延台輔が辺りを伺うように歩いている姿があった。
「尚隆――!!!」
帷湍の大音声に二人はびくりと立ち止まる。特に延王・尚隆は呆然としている。
「今日は景王と氾台輔との会見の日だぞ、忘れたか!」
「美女二人をお待たせするとは、主上らしくありませんねぇ」
成笙と朱衡の二人が立て続けて言うと、延台輔・六太が上目遣いで尋ねる。
「あのさ … お前ら、誰に言ってるの?」
「無論、目の前にいる我が雁の王だ!」
更に言い募ろうとする帷湍の言葉に、朗々とした声が重なった。
「そこにいるのは、陽子か」
五人が一斉に振り向くと、回廊の反対側から『延王・尚隆』が快活な足取りで近寄って来る。二人の『延王』が向かい合う様に、さすがの三人も凍り付いた。しかしそうした三人をよそに、少し背が低い方の『延王』が掠れた声で言った。
「私が … 見えるのですか」
問いと同時に、薄い膜が剝がれるように片方の『延王』の姿が崩れ、鮮やかな緋色の髪が流れ出た。
「おいおい、お前を見間違えるほど耄碌はしていないぞ」
周囲の空気なぞ全く気付かず笑う尚隆だったが、次の瞬間、景王・陽子がその胸にしがみついて泣き出したのには、驚き呆然としたのだった。
「もう、こんなに皺だらけにして!主上にどう言えばいいのよぉ~」
「わりぃ、小姐ちゃん。でも蠱蛻衫のお陰でいろいろ分かったし~」
「分かってどうするのよ。陽子ったら、何でうちの主上でなく、尚隆になんか」
愛らしい頬を膨らませて文句を言う氾麟を見ながら、六太は苦笑する。
― だって仕方ないじゃないか。尚隆には陽子が見えたんだから ―
瀬戸内の海で領民と共に死ぬはずだった尚隆を、国と民とを引き換えに、雁へ連れて来たのは六太だ。六太が約束通り国をくれたからと、尚隆は雁を豊かで美しい国として返してくれた。
― でも、その先は? ―
五百年続く大王朝、北の大国と褒め称えられて久しいが、六太は時々思う。この美しい国は永遠に続くのか、永遠に続くのなら、それを支える王はどうするのか、と。
― 永遠に、囚われ続けるのか?ここに ―
尚隆は自由に常世中を巡る。でも雁からは決して抜け出せない。そうした尚隆の後姿を六太は見続けた。
― でも尚隆は振り返ったんだ。王になる自信は無いのに必死で王になろうとする陽子に。そして陽子と一緒なら、新しい行く先が見つかるんじゃないかって ―
見る者にとって好ましい人物を見せると言う蠱蛻衫。たまたま他人に見つからぬよう尚隆を探しに、陽子は氾麟から借りて被って行っただけだが、尚隆に見えた姿は陽子その人だった。
― それなら … 俺は応援するしかないだろ ―
六太はまだむくれている氾麟にニカッと笑いかけた。
「けどさ、王同士の婚姻、なんてなったら、すごいよな」
「何言ってるの。そんな例は今までに無いわよ。天帝がお許しになるわけ…」
「でもさ、でも実現するとしたら、宴会なんか超豪華になるだろ」
「まぁ…そうよねぇ」
「全国の王や麒麟を呼ばなくちゃならないしぃ。でも玄英宮(うち)って金はあるけど野暮なんだよねぇ~。範なら、そんな心配はないだろうけどぉ」
氾麟の肩がぴくりと動いた。
「当り前じゃない。うちの主上が采配すれば、常世史上に残る素晴らしい宴になるわ」
「だろう?小姐ちゃんも見たいよなぁ~」
氾麟がぶつぶつと“陽子は大丈夫だし、尚隆も黙らせておけば”と呟いていたが、ふと顔を上げて言った。
「でも玄英宮の三人!あの口煩い連中がこんなこと、許してくれるの?」
「大丈夫。ちゃんと弱味を握ったから」
蠱蛻衫が見る者にとって好ましい人物に見えること、そして三人が三人とも蠱蛻衫を被った陽子を『尚隆』と認識したこと― それを尚隆に言えばどうなるか、と六太が言った時の帷湍等三人の表情を、あと千年経っても忘れないだろうと、六太は思う。
「これはこの先、いろいろと使えるぞ」
そう呟いた六太は、とても仁獣には見えない笑みを浮かべたのだった。
じーん
未生(管理人)
2021/09/11(Sat) 22:51 No.30


ネムさん、2作目をありがとうございます。
コメディ7割を心に留めて読んでいたら、じーん。感動しました! 誰かかの方の胸に縋って泣く陽子主上描いて……!
最後は悪知恵働く六太ににやり。蠱蛻衫てそういう代物ですよね~。なんだかんだ言ってもあの3人は尚隆に首ったけ笑。
ネムさん、色々詰まった素晴らしい作品をありがとうございました!
皆さまの尚陽をまだまだお待ち申し上げておりますね~。
コメディ7割を心に留めて読んでいたら、じーん。感動しました! 誰かかの方の胸に縋って泣く陽子主上描いて……!
最後は悪知恵働く六太ににやり。蠱蛻衫てそういう代物ですよね~。なんだかんだ言ってもあの3人は尚隆に首ったけ笑。
ネムさん、色々詰まった素晴らしい作品をありがとうございました!
皆さまの尚陽をまだまだお待ち申し上げておりますね~。
うるうる(;_;)
文茶
2021/09/12(Sun) 10:21 No.31


「私が…見えるのですか」との台詞に、なんだか幻になったような言い方……とハラハラしていたのですが、蠱蛻衫を被っているとわかったとたん、ぶわ〜っっっと感動が押し寄せてきました。もう素敵すぎて泣きそうです......。゚(゚´Д`゚)゚。
そして蠱蛻衫が落ちると共に現れた陽子さんが尚隆にしがみつくシーン、私も見たいです! 誰か、お願いします……!(私の画力じゃ表現できませぬ)
あと、蠱蛻衫が皺だらけになったのは陽子さんが握りしめたから⁉︎ それとも誰彼使いすぎたのでしょうか? 気になります(笑)
披露宴は範で、客人は十二国の王と麒麟!! すごいことになりそうですね〜! 見たい、是非是非是非見たい!! 梨雪ちゃん、よろしくお願いします〜(*'▽'*)
素敵なお話をありがとうございます!
そして蠱蛻衫が落ちると共に現れた陽子さんが尚隆にしがみつくシーン、私も見たいです! 誰か、お願いします……!(私の画力じゃ表現できませぬ)
あと、蠱蛻衫が皺だらけになったのは陽子さんが握りしめたから⁉︎ それとも誰彼使いすぎたのでしょうか? 気になります(笑)
披露宴は範で、客人は十二国の王と麒麟!! すごいことになりそうですね〜! 見たい、是非是非是非見たい!! 梨雪ちゃん、よろしくお願いします〜(*'▽'*)
素敵なお話をありがとうございます!
内堀も埋まっているのでは?!
相変わらずお口が悪い(笑)三公の、してやられたポカン顔(あるいは苦虫を嚙み潰した顔)が見たい~ッ!!
ちゃんと証拠ビデオを残しておかないとね~六太くん!
いやぁ~尚陽だけでなく三公&延主従もラブラブ(笑)なご様子で、幸せで胸いっぱいになりました♪
口うるさい身内を黙らせ、戴と範の協力も得て、もはや全ての堀は埋まっているのでは?
あとは蓬山だけかしら……(むむっ強敵)
ちゃんと証拠ビデオを残しておかないとね~六太くん!
いやぁ~尚陽だけでなく三公&延主従もラブラブ(笑)なご様子で、幸せで胸いっぱいになりました♪
口うるさい身内を黙らせ、戴と範の協力も得て、もはや全ての堀は埋まっているのでは?
あとは蓬山だけかしら……(むむっ強敵)
ありがとうございます!
未生さん> 感動して頂けてホッとしました。今回(生涯?)唯一の尚陽シーンです。私も見たい(笑)
雁の三官吏も結局延主従のことが好きで、もうファミリー感覚なんだと思います。
文茶さん> いえいえ、文茶さんの美しい絵で描いてもらえれば嬉しいです。でもモフモフが無いなぁ(蠱蛻衫が毛皮だったら…)ちなみに皺だらけになったのは、尚隆が焦って陽子の涙を拭いたせいです。お返しに尚隆は氾王から意に添わぬ結婚衣装を着せられることになるでしょう。
饒筆さん> 本当にどんな表情をしていたんでしょうね、三人は(笑) 蠱蛻衫って便利です(笑)
一気に内堀まで行きましたが、まだ半分。あとの半分の陽子側は考えていません。お祭り期間内に出来たらいいのだけど…
コメントありがとうございました!
雁の三官吏も結局延主従のことが好きで、もうファミリー感覚なんだと思います。
文茶さん> いえいえ、文茶さんの美しい絵で描いてもらえれば嬉しいです。でもモフモフが無いなぁ(蠱蛻衫が毛皮だったら…)ちなみに皺だらけになったのは、尚隆が焦って陽子の涙を拭いたせいです。お返しに尚隆は氾王から意に添わぬ結婚衣装を着せられることになるでしょう。
饒筆さん> 本当にどんな表情をしていたんでしょうね、三人は(笑) 蠱蛻衫って便利です(笑)
一気に内堀まで行きましたが、まだ半分。あとの半分の陽子側は考えていません。お祭り期間内に出来たらいいのだけど…
コメントありがとうございました!
尚、このお祭は個人の運営するもので、公的なものとは一切無関係でございます。
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