(開催期間 2021.09.01.~10.10.)
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お祝いの献上品です
user.png 饒筆 time.png 2021/09/03(Fri) 00:47 Home No.8

改めまして、未生さまサイト開設16周年のお祝いに、拙作の尚陽(陽尚?)を献上します。
出だしはなにやら不穏ですが、結局ただのラブコメなので(笑)、どうぞご笑納くださいませ。


登場人物  陽子・尚隆
作品傾向  シリアスのふりをしたラブコメ
文字数   1693文字

サヨナラはまだ遠い
user_com.png 饒筆 time.png 2021/09/03(Fri) 00:50 Home No.9


 囚われの鈴虫が竹籠の中で鳴いている。
 さやかな月の下、名君と呼ばれて久しい男はその音を肴にひとり、酒を嗜んでいた。
 今宵眼下に広がる雲海は晴れわたり、永遠と信じる繁栄を誇る都がその弓形をたっぷり太らせ燦然と輝いている。其処は彼が長年心血を注いだ国。手塩にかけた街だ。
 が。それらを映す射干玉の双眸に光はない。
 心は此処にあらず、ただ、手だけがゆったりと杯を口へ運ぶ。
「ここでしたか」
 唐突にかけられた声にも、男は微塵も応じない。
 声の主——軽装の乙女はかるく肩をすくめ、
「探しましたよ」
 男の様子などお構いなしにずかずかと歩み寄ると、ストンと背中合わせで腰を下ろした。
 そのまま、大きな背中に凭れかかりながら話を続ける。
「珍しいこともあるものですね。祭りの夜に、他ならぬ貴方が引きこもっているなんて」
 杯に残る酒精を吸う音。それから杯を朱塗りの盆へ置く音が虚ろに響く。
 乙女は精一杯背を伸ばし、背後から男の横顔を覗き込んだ。
「うわ、怖い顔」
 わざと耳元で囁いてやれば――
 大きな溜息とともに逞しい腕が伸びてきて、乙女を引き寄せ隣に据えた。
 乙女はすかさず男の顔色を窺う。
 しかし、ひとつ首を振った男はいつもの人を食った笑みを刷いてみせた。
「まったく、陽子はまた間の悪いときに――」
 そう言いさし、男は彼を見上げる乙女の固い表情を見咎めた。朗らかに笑んでいた目をスッと眇める。
「……さては見計らって来たな」
「ええ」
 乙女はあっさり認め、その強い眼差しで男をまっすぐに射貫く。
「何か良くないことを考えていたでしょ」
「何のことやら」
「貴方は隠し事が上手だけど、私には通じませんよ。わかるんです」
「ふん。ぬかせ」
「本当ですって。これはきっと惚れた『強味』です。思ったより……貴方が思うより、私は貴方に骨抜きですから」
 乙女は膝立ちになり、男へその身を乗り出した。女性にしては武骨な手が男の頬を包む。煌めく翠の瞳が男に迫り、身も世もなく縋る。
「まだまだ一緒にいたいんです。……行っちゃ嫌だ」
 甘い吐息とともに吐露した言葉を押し込むように、乙女が唇を重ねた。男がそれに応えてくれるのを感じて、少しだけ安堵する。
「本気の貴方を止められるとは思えないけれど、それでも私、思いっきり邪魔しますからね。ガードレールは無理でも、つっかえ棒くらいにはなりますから」
「がーどれーる?」(とは何だ?)
 柔らかな唇を気まぐれに啄みながら、男は意地悪く笑う。
「俺亡き後は諸々面倒をみてやるから安心しろ、などと言ったのはどこの誰だ」
「私の同意を得ずに、勝手にいなくなっちゃダメです。そんなひとの後始末なんて知りません」(ツーン)
 乙女は急にそっぽを向いてしまった。
「同意が要るだと?」
 一方の男は呆れて聞き返す。
「陽子。おまえ、あと何年俺をこき使う気だ?」
「それはもちろん……私の気が済むまで!」(はぁと)
 強気な笑顔で振り返った乙女はどこまでも本気だった――そうだ、こういう奴だったと男は達観して目を瞑る。
「……あい分かった」
「わかってくれました?」(わぁい♪)
 ぬか喜びする乙女を、男はおもむろにガッチリ抱えあげ(捕獲完了)、
「えっ?」
 乙女の戸惑いを無視したまま、やおら立ち上がる。そしてのしのし歩きながら、荷のように運ばれる乙女へ下した宣告は。
「なら、さっそく気が済むまで相手してやる」
「ええ~っ!」(話が違―う!)
 乙女はジタバタ暴れだした。
「違いますぅ!そうじゃない!お祭りは?屋台村は?そうだ花火!花火だけでも見物しましょうよぉ!!」
「諦めろ」
「やだ!!せっかく街着に着替えたのにっ」(ジタジタバタバタ)
「おまえが悪い」
「私はちっとも悪くないッ。……放して!もぉ私ひとりで行くぅぅ~」(待っててベビーカステラ!)
 歯が立つわけもない乙女の抗議は、そのリフレインさえ、実に呆気なく回廊の向こうへ消えてしまう。


 翌朝。
 すっかりヘソを曲げて仏頂面の乙女に、点心だの月餅だの水果だのを山のように勧めて機嫌を取ろうとする、やけに清々しい笑顔の名君が目撃されたそうです。
 めでたしめでた……し?


<そろそろ爆ぜてもいいんじゃないでしょうかby朱衡・了>
良きかな^ ^
user_com.png 文茶 time.png 2021/09/04(Sat) 01:10 No.13
饒筆さま、お久しぶりです!

甘えるように引き留める陽子さんの可愛さにやられました〜! 本当に可愛い。でんぐり返りで50メートルいけるほどカワイイ!
闇にのまれそうな尚隆をよくぞ止めてくれました。是非つっかえ棒からパラシュートに昇格していただきたい。
お祭りに行けなかったのは残念だけど、玄英宮で屋台村を再現してくれるでしょう! 花火師も呼ぶでしょう! 偉大なる延帝ならやってくれる(笑)

ドキドキシリアスからラブラブまで二人の関係がギュッと詰まったお話、楽しませていただきました〜!
いらっしゃいませ!
user_com.png 未生(管理人) time.png 2021/09/04(Sat) 18:47 Home No.14
 饒筆さん、こちらこそご無沙汰しております! 早速祭にご参戦くださりありがとうございます~。
 
 不穏な始まりにドキドキさせられました。けrど、そこはさすが饒筆節! 甘いのにコミカルで店舗のよい会話ににっこりしてしまいました。
 陽子主上は街へ行けなくて残念でしたが、かの方が満足そうなので私的にも大満足でございます!
 素敵な花輪をありがとうございました~。
 
 文茶さん、先レスありがとうございました。
 
 
名言です!
user_com.png ネム time.png 2021/09/05(Sun) 21:29 No.15
 饒筆さん、お久しぶりです!またお祭りでお会いできて、うれしいです~(文茶さんも ^^/)
 惚れた強味… 名言ですね~。陽子が言うから尚更。密かに引き籠り傾向のある王様には、これくらいの一見草食実は肉食系女子が付いていて然るべき、ですね。(むしろ龍虎か?)
 これからも両国で賑やかなお祭りをどんどん開催していって下さいね!(ベビーカステラは必須です ^^)
嬉しいコメントをありがとうございます♪
user_com.png 饒筆 time.png 2021/09/12(Sun) 21:21 Home No.34
>文茶さま
 こちらこそお久しぶりです。久々にお話できてうれしいです~。
 でんぐり返しで50メートルとはなかなかの猛者……首にお気をつけてくださいね!(笑)
 ええ、偉大なる延帝とノリが良すぎる雁国民なら
「いきなりだが、今年の祭りは一週間延長だ!」『うぇ~い!!!』
でやってくれそう……いや、マジでできそうやわ(凄すぎる・あはは)
 楽しんでいただけて私も幸せです♪

>未生さま
 こちらこそ、お祭りを開催してくださってありがとうございます!
 そうですね、なんやかんやで殿は存分にストレス?を発散なさったのでは……
 拗ねる陽子さんのご機嫌をとるのも、まあイチャついているのと変わりませんよね(笑)
 拙い花輪ですが楽しんでいただけて何よりです!

>ネムさま
 こちらこそコメントをありがとうございます。
 名言だなんて照れますね……(きゃ)
 ええ、この二人のイメージとしては龍虎の方が近いですね。どちらも負けないし退かない(笑)。まあ、周囲から見れば、パワフルにじゃれているな~(さすが王様)という感じでしょうか。
 偉大なる延帝の下のお祭りなら、綿菓子もベビーカステラも焼きもろこしもあるって信じています!!(あはは)
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