花立ち返る(五緒さま)
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第二弾投稿いたします 五緒さま

2008/04/22(Tue) 06:05 No.156

 祭りもそろそろ折り返しになるのでしょうか。
 桜にまつわる話、第二弾を投稿いたします。

花 立 ち 返 る

作 ・ 五緒さま
2008/04/22(Tue) 06:09 No.157

『さくら さくら 
 弥生の空は 見渡す限り
 霞みか雲か 匂いぞ出ずる
 いざや いざや 見に行かん』


 庭院の桜も白い花弁を散らし始め、濃さを増した緑が枝を彩っている。
その木を眺めながら、ほうと軽く息を吐き、こつりと額を幹につけた。


 毎年まだ春浅い庭院で、私は独り桜を眺め蓬莱の歌――「さくら」をそっと口にのせる。
 無事に一年を越し、またこの花を見れる喜びをかみしめるために。
 そして――明日への希望を繋ぐために。


 庭院に植えられたこの桜は、雁から私の即位を寿ぐ品の一つとして贈られた。
 『咲く花を 尋ねてゆけば いつよりか 去年(こぞ)来し道に みちはなりきぬ』との歌が添えられて。
 
 物知らずの私。専横著しい朝廷。長きの混迷に疲弊している民。
 信頼できる臣を得ても、心が挫けそうになる出来事に何度も見舞われた。
その度に桜の元に来ては細い幹に触れ、春の訪れを待ちわび、その場を凌いできた。

 年を追うごとに少しずつ幹を太くし枝を広げ、つける花数を増やす桜。いつしか私の中に欲が生まれる。


 来年もこの花を見たい。
 「さくら」で唱われる情景をこの国で見られるようにしたい、と。


 今はまだ浩瀚を始め皆に助けられ、手探りで進んでいるけれど、この桜を支えに道なき道をこれからも歩んで行こう。
 
 煙るように花が咲くさまを想いながら。
* * *  五緒さまの後書き  * * *
2008/04/22(Tue) 06:10 No.159

 先ず最初にお詫びを。
 タイトル「花立ち返る」は正しくは「年立ち返る」です。
 年が改まる、新年を迎える、などの意味なのですが、桜が陽子にとって癒しであり、 新たな気持ちになれるものとの考えから「花」と変えました。
 それから桜に添えられた歌ですが、江戸時代後期に詠まれたもので、 本来ならば延王が知るわけもないのですが、ニュアンス的に合うと判断し使いました。

 本当はこちらが先に降ってきていたのですが、なかなかまとめられず苦心しました。
(その割に短いのですが^^;)
 少しでも楽しんでいただければ嬉しいです。

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雪待月庵


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