散り
紛
ふ花
作 ・ 五緒さま
2010/03/30(Tue) 04:19 No.266
緩やかな風に乗りはらりはらりと花びらが枝から落ちてゆく。
その穏やかな様を一変させる強い風が枝下から蒼穹へと抜けていった。
横から吹く風と花びらを避けるため顔を左に背け右手を額にかざしたその先で、紗の幕を張るかのように降りしきる花びらが主上の姿を隠した。
突然の出来事になす術もなく立ちすくむ。
風は吹き始めと同様に唐突に止んだ。
主上が立っておられる方へと顔を向けると、新たな決意を宿したかのような瞳とかち合った。
その深みを増した碧の瞳は私から言葉を紡ぐ術を奪った。