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桜伝説第2弾です 翠玉さま

2010/05/07(Fri) 22:03 No.742

 ネタは多いのに繋がらず、祭り期間も残り少なくなってきているので 小出しにすることにしました。お祭りには適当な長さではないかと・・・
 背景設定は脳内では完成していますが、自由に想像して頂いて構いません。

登場人物   陽子・禁軍  
作品傾向   ほのぼの&末世  
文字数   683文字  



慶国桜伝説―誰が為に咲く―

作 ・ 翠玉さま
2010/05/07(Fri) 22:05 No.743

まだ落ち着かない慶国の春は耕作地の拡大や治水対策で忙しく、景王赤子はここ一月以上は積翠台に詰める日々が続いていた。
それが落ち着いて左将軍にも余裕が出て来た今日、景王は虎嘯を供として禁軍の練兵場に出向いた。
そこには久しぶりの主上の姿を拝そうと集まった兵でごった返しており、辛うじて左将軍までの通路が確保されていた。
「何でこんなに兵が集まっているんだ?」
主の問いかけに左将軍はくつくつと笑って片手を高く挙げた。
その合図で兵は一斉に王の背後に控えた。開かれた視界に映った先には周囲を埋め尽くす桜色の花、蓬莱では芝桜と呼ばれる懐かしい花が咲いていた。
「主上がご利用になるのだから、少しは色気が欲しいと兵の連中が植えたのですよ。その主上の反応が知りたいとこうして集まっている訳です。お気に召されましたか?」
主は首をゆっくりと左右に巡らせて、ほうと息を吐いた。
「凄く懐かしい。向こうでは学校の校庭や公園ではこんな風に花が咲いていたんだよ」
「桜も植樹したのですが、育つには時間が掛かるので桜の花の形に似ているものを選びました。秋にはまた別の花が咲く予定らしいですよ」
「桜が終わった後にも楽しめるのがいいな。嬉しいよ、ありがとう」
この主の言葉に歓声が上がった。初夏に咲く芝桜は秋の秋桜と共に赤子の登遐後もそこに咲き続けた。

それまでの常世では有り得ない出来事で落命した赤子を惜しむ声は慶国の外でも聞くことができた。
当事国の慶ではその王の為に植えた花花の手入れを欠かさない。それはかつて達王を懐かしんだ民ではなく、赤子の初敕を継承する誇りある民によって、伝説の王の為に咲いていた。

―了ー


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背景画像「Studio Blue Moon」さま
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