コント三本立て 黎絃さま
2011/03/31(Thu) 14:40 No.214
ひとりはさびし
ふたりでおわり
見渡す限り、夜桜の……
というタイトル使ってみたさで書いたシロモノです。
そういえば初めにお題ありきで書いたのは初めてです。(^^ゞ
タイトルはこちらのお題サイトさんから拝借しました。
belief
「出だしはしんみり、終わりはホノボノ」を目指しました。
ひとりはさびし
登場人物 |
黄姑・揺籃 |
作品傾向 |
しんみり |
文字数 |
334文字 |
ふたりでおわり
登場人物 |
利広 |
作品傾向 |
ほのぼの(尚陽前提で利広×珠晶未満) |
文字数 |
382文字 |
見渡す限り、夜桜の……
登場人物 |
大人泰麒・驍宗・李斎・琅燦 |
作品傾向 |
ほのぼの(驍李前提) |
文字数 |
466文字 |
ひとりはさびし
黎絃さま
2011/03/31(Thu) 14:41 No.215
揺籃は使令の背に乗り、遅い午後の揖寧を見降ろしていた。
曇り空の下で桜が散り始めている。今夜は雨が降りそうだった。
蟄居していた黄姑のもとへ揺籃が駆け付けたのも、丁度この季節だった。
それでも花散る山野を見るのは寂しい。
揺籃は直ぐにでも王宮へ帰りたくなった。
ところが彼女が長閑宮の方を向くと、
向こうからは別の使令がこちらへ近づいてきていた。
揺籃は使令を急がせた。
「主上」
采王は両手にひとつずつ、傘を持っていた。
「雨が降りそうなのに遅いから、迎えに来ましたよ。
こんな日に一人では寂しいでしょう?」
「――覚えていて下さったんですね」
揺籃の声がくぐもると、温かい風が強く空を駆けた。
花吹雪のひとかけらが主の耳元をすり抜ける。
けれど再び見下ろした里の残花は、もう寂しく感じられなかった。
ふたりでおわり
黎絃さま
2011/03/31(Thu) 14:42 No.216
「まいったなぁ、一足おそかった」
奏からの客人は恭の天官長に頭をさげられ、苦笑した。
供王を下界に誘って花見をしようと押し掛けたのに、霜楓宮の主は留守だったのだ。
天官長は王が宰輔と外遊中だと述べたが、行先までは教えてくれない。
主従水入らずの時間を邪魔しないでほしいという意なのだろう。
卓朗君は泊っていけという天官らの勧めを固辞し、夕暮れの囲墻で宿を探した。
「風漢の邪魔でもしにいこうかな」
去年の冬、あの男は異国の宿で自慢していた。
関弓の桜が咲いたら緋色の髪をした想い人と会う約束だと。
囲墻に比べると関弓の春は、半歩だけ遅く訪れる。
今から移動すればちょうど関弓の桜が見ごろだろう。
薄紅色の帷(とばり)を背にしてなびく緋色の花を、観賞しない手はない。
「それじゃ東へ行こうか、青雨」
青雨と呼ばれたスウグはクオン、と鳴いた。
まるで「そんな事して本当にいいの?」と聞きたいかのように。
見渡す限り、夜桜の……
黎絃さま
2011/03/31(Thu) 14:43 No.217
黒い空に薄紅の花。
鋼色の髪に、薄紅のかけら。
桜の花を眺めても寂しくならないのか、と李斎は訊いた。
振り向いた鋼色の瞳は屈託のない笑みを返した。
たぶんに儀礼的な笑みだが、ひねりは全くない。
「郷愁に駆られるほど良い思い出など殆どない」と言うこともない。
首を横に振り、「ぜんぜん平気だよ」と明るく答えるだけ。
李斎が泰麒の側に座り、手を握る。
宰輔の黒い服は夜桜の景色を真似ていた。
やがて泰麒は李斎の肩に寄りかかる。
李斎はその首をそっと抱きよせ、桜を見上げた。
泰麒は李斎の懐にうずくまり、記憶に残る母の匂いを李斎の匂いで塗り替えた。
「しゅじょー?また奥さんを取られましたね」
書物の束を抱えた琅燦は、仁重殿の前に一人たたずむ主君をからかった。
驍宗は書類を受け取りながら苦笑する。
「良い。桜が散るまでは大目に見よう」
「燕朝の春は長いですよ?」
「正頼と同じことを言うな―――今日はご苦労だった」
そういって驍宗は正殿の方へと踵を返したが、
再び立ち止まると仁重殿と後宮を見まわした。
琅燦も驍宗にならい燕寝の花音に耳を傾けた。
――見渡す限りは、うねる桜の波。
うー 黎絃さま
2011/03/31(Thu) 15:35 No.218
*♯218の「ひとりはさびし」、始めは最後の文章で「散華」という言葉を書きましたが、
どうも誤用だったみたいです。日本語って難しいですねぇ(^^;;;
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背景画像 瑠璃さま