「投稿作品」 「11桜祭」

申し訳ありませんでした 饒筆さま

2011/04/27(Wed) 22:38 No.710

 御迷惑をおかけした方、不快感を与えてしまった方、申し訳ありませんでした。 御指導いただいて、本当にありがとうございます。
 お詫びと御礼に代えて、似合わぬシリアスを捧げます。

登場人物   予王・景麒・浩瀚  
作品傾向   シリアス(禅譲寸前)  
文字数   762文字  

散り際に

饒筆さま
2011/04/27(Wed) 22:39 No.711

「主上。本日は晴天で、桜花も見頃です。外へ、参りませんか」
 愛しいひとの誘いなら、是非も無いわ。
 わたしは彼の細い腕をとって、部屋を出た。
 お日さまって、こんなにまぶしかったのね。ああ、そよ風は花の香り。
 わたしたちは病んでいるから。まわりの景色もゆっくりと過ぎるわね。
 まあ、そう。あれがあなたの言った桜ね? 見頃というより、散り際だわ。白い花弁がどんどんこぼれ落ちてゆく。もう手遅れね。
 ・・・やだ。誰か、いる?
 太い幹の向こうから黒衣の男が現れ、叩頭する。
「主上。どうか、あの者の奏上を聞いてください」
 ひどいわ、景麒。それが目的だったのね。
 いやよ。あんな怖いひと。また叱られるわ。
 男が面を上げた。躊躇うことも無く、真っ直ぐに目を合わせてくる。以前のように鋭く睨まれるのかと思ったら、その琥珀の瞳は暗く沈んでいた。
 なに? わたしを憐れんでいるの?
 一瞬、カッとして。すぐに違うとわかった。
 あのひと、自分を責めているんだわ。
 心の中で笑みが洩れた。バカなひと。悪いのはわたしよ。一人前の王になれなかったのはわたし。女を狩らせているのはわたし。八つ当りなの。道連れなの。何もかも狂わせて、諸共に闇へ堕ちてやる。
 だから、もう遅いのよ。
「今更、そなたの話など聞きとうない!!」
 あはは、言ってやったわ。あの男に。
 背を向けて、涙を隠す。
 本気で叱ってくれたのは、あの男だけだった。笑わずに、遮らずに、最後までわたしの話を聞いてくれたのはあの男だけだった。
 どうして、あの真摯な叱責を受け入れられなかったのだろう。
 怖がって、遠ざけて・・・わたしが間違っていたわ。きっとわたしが求めなければならなかったのは、この甘い麒麟でなく、手厳しいあの男。
 でも、もう遅いのよ。
「主上!」
 わたしは振り返らない。
 さようなら。あなたは、また新しい誰かを叱ってあげて。

<了>

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「投稿作品」 「11桜祭」

 

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