「続」 「投稿作品」 「11桜祭」

本当に名残惜しいのですが Baelさま

2011/05/22(Sun) 19:58 No.1063

 もうすぐお祭りも終わってしまうのですね。
 というところで、本日さくらんぼ狩りに行って参りましたので、観桜ではなく桜桃なお話で。 一応、これも桜……多分……?
 さくらんぼの爽やかさというか可愛らしさを楽俊と陽子から感じていただけたらと 思っていたのですが、何故でしょう。
 「慶発・流行最前線、さくらんぼ市場の今を追え!」 的な、お話になっている気も……。
 いえ。ですが、もうすぐフィナーレを迎えられる中、 ちょこっと外れた方向に跳ね飛んだパーティクラッカーもありということで。 お見逃し頂ければ幸いです。
 登場人物:楽俊と鳴賢【と陽子と金波宮の面々+ちょこっと延麒】

登場人物   楽俊・鳴賢・陽子・慶の人々  
作品傾向   ほのぼの(やや楽陽風味?)   
文字数   8048文字  

笑顔咲ク ─壱─

Baelさま

2011/05/22(Sun) 19:58 No.1064

【お久しぶり。楽俊。】


久々の便りは鳥ではなく、辿々しい、けれど何処か奔放で真面目に一所懸命な文字が伝えてきた。


【ああ、祥瓊が怒ってる。せっかく正式な書簡の作法を教えてあげたのに、この書き出しは何なの!? だって。
 勿論、私もせっかく教わったことを無にする気はないし、勉強の成果を楽俊に見てもらいたいなとも思う。でも一度書いてみようとして、くしゃくしゃに丸めて捨てちゃった。
 きちんとした書簡って難しいね。
 礼儀とか形式とかは必要なものなんだろうけど、それに則って書くと、景王の書簡にはなっても中嶋陽子の書簡にはならない気がする。
 どちらも自分だということは分かっているけどね。楽俊には全部が中嶋陽子な書簡を送りたかった。読みにくかったらごめんなさい。
 祥瓊が、それでもこんな練習用の紙は駄目よ、だって。勿論、書き直すってば。
 でも、こうして執務の間にちょこちょこ書いていると、楽俊に伝えたい諸々を落とさず書けるような気がするんだ。
 松伯も、字を書く練習だと言ってくれたしね。
 普通の手習いだと根を詰めすぎてしまうけど、楽俊への書簡だと思うと肩の力が抜けて丁度いいらしい。だから、悪いけど付き合ってね。
 ああ。でも、そもそもこちらには、こういう話し言葉を文章にする習慣があるのかな。なかったら余計に吃驚だよね。
 あちらも、昔は話し言葉と書き言葉がちゃんと分かれていたんだって。
 というと楽俊は興味を持ちそうだけど、文字でこれ以上説明する自信がないので、また鸞を飛ばした時にね。
 あ。今、景麒が横から覗き込んで、あちらではなくちゃんと書けって言ってきたけど、無視。字画が多すぎなんだよ。
 ちなみにこの、景麒って書いているのは練習です。内緒だけど。
 なので、もう一回書いておこう。
 相変わらず景麒はガミガミ煩いです。と、これで良し。】


「……横から読まれていて、内緒も何もねえだろうに」
くつくつ笑いながら紙を繰ると、楽俊は鼠の姿で僅かに小首を傾げた。
初夏の風が飾りのない簡素な窓から吹き込み、その髭をそよがせる。人とは違うその形から表情は読みにくいが、満足げに細まった目は正直だった。
やれやれと嘆息すると、楽俊は再び紙に目を落とした。


【それから浩瀚が、って。浩瀚の字も難しいな、冢宰って書く方がまだ簡単。
 楽俊の字は書きやすくて好きなんだけど。鈴とかもね。
 正直、祥瓊は苦手な、いや、綺麗でいいと思うよ? 好きだよ? 似合ってるよ? 書き難いだけで。浩瀚もね。
 って、失敗した。この辺の愚痴は、後で書き直す時に書き足せば良かったとか書いたら、また怒られました。
 その私を怒った、じゃなくて、叱った? 浩瀚が、楽俊に感謝していると伝えてほしいそうです。
 私が路木に願った果物の件でね。
 今年も無事に収穫出来たので、命名者の一人でもある楽俊には、お裾分けで送らせてもらいます。
 あ。虎嘯と桓堆が喧しい。あれだけだとお腹に溜まらないから、もっと腹持ちがいいものを一緒に送るべきだ、だって。
 二人はこの果物、今ひとつ好みじゃないらしい。
 虎嘯はちまちま一つずつ食べて種を出すのが面倒だって言うし、桓堆は小さいし腹に溜まりません、だって。
 美味しいのに。って、花を生けに来てくれた桂桂が呆れてる。桂桂は糖蜜漬の瓶詰が大好きなんだよ。
 鈴や祥瓊は、これだから男の人は、だって。
 でも、浩瀚や夕暉は気に入ったらしいから、個人差だよね。夕暉には糖蜜漬は甘過ぎるらしいけど。
 実は松伯は、やっぱり種が面倒なんだって。
 楽俊はどうですか。ああ、それと雁の大学のお友達は、何て言ってるのかな。
 雁の評判は気になるので、今度、教えて下さい。
 って、頼むなら、ちゃんと名前を書くべき? 正直、未だにちょっと微妙です。
 確かに、路木にあれこれ願った中でも、あの果物は特に保存に向かないし。保たせるには糖蜜漬の瓶詰にするとか、とにかく手間がかかるしするもんで。じゃあ、高級食材扱いで外貨獲得用にしようって言ったのは、私なんだけどね。
 で、浩瀚に、慶国産ということが分かり易い名前にしてくれと言われて、楽俊まで頼ったのも私なんだけど。
 あれって、私なんかに似てるかな。
 色の組み合わせは近いけど、可愛らしさで大幅に違わないか?
 とか言っていたら、お茶をいれてくれた鈴に、そんなに名前書きたくないの? って呆れられた。
 だから景麒。もう慶の字は書けるってば。書きにくいけど。
 ただ単に私は、“さくらんぼ”っていう方が馴染んでいるだけだよ。
 勿論、書けるって。だから】

背景画像 瑠璃さま
「続」 「投稿作品」 「11桜祭」

 

FX