「投稿作品集」 「13桜祭」

「桜餅の輪舞曲(ロンド)」のオマケ妄想 翠玉さま

2013/05/13(Mon) 02:09 No.446
 前作にひっそりとぶら下げたのですが、 未生さんのご提案により新スレッドを起てさせて頂きました。 こちらを読もうとする方は#375から先にお読み下さい。
 この妄想は饒筆さんの「膳夫が一番の功労者」とのコメントからオマケを考えました。 海客の膳夫がとあるキャラと重なれば幸いです。 また、ネムさんの「菓子産業を起し」というコメントも活用させて頂きました。

桜餅の 輪舞曲(ロンド) 〜舞台裏

翠玉さま
2013/05/13(Mon) 02:11 No.447
「二種類の桜餅には、どのような違いがあるのだ?主上は八重桜を見て桜餅のようだと仰っておいでだったのだが」
「倭国の東では長命寺と言う桜餅が、西では道明寺と呼ばれる桜餅が一般的なのです。そして主上のご出身から考えますと長命寺が一般的ではありますが、八重桜で桜餅を思い起こされたのであれば道明寺の可能性が高いかと思われます」
冢宰に問われた膳夫は長髪を後ろで束ねた背の高い男だった。この男は一年ほど前から膳夫として雇い、最近まではこちらの宮廷料理や各地の料理を修行していて蓬莱風に味付けられた彼の料理は主上に好まれていた。そして、それは他の者にも好まれる料理だった。
「ならば、どちらも主上にとっては懐かしいものであるのだな?」
「主上が過ごされた街であれば、どちらも食されていた可能性があります」
「どちらも作れるな?」
「はい、桜の葉の塩漬けは昨年から用意したものがあるので長命寺は一刻でご提供できると思いますが、道明寺の材料も揃っているとはいえ、蒸すに一刻、香り付けに一刻ほど必要です」
「桜の花の塩漬けは茶で饗していたが、葉まで使うのか?」
「昨年、園丁(にわし)が剪定した葉の処分に困っていたので貰い受けました。花は今年のものです。塩漬けにした桜の花や葉には人の心を落ち着かせる効果があるのです」
海客のこの膳夫は料理については非常に博識だった。故に主上は食事と共に彼を伴わせ、その食材の説明を聞くことが最近の習慣となっていた。
「八重桜のような菓子は道明寺が近いのだな?」
「長命寺は向こうで一般的な染井吉野と言われる一重の桜に近く、道明寺は色の濃い八重桜に近いと思っています」
冢宰は口元に手を当てて「二刻か・・・」と呟き、くつりと笑うとその手を降ろした。
「では、双方を賓客の数分用意してもらおう。そして、これから一重の桜の時期には長命寺を、八重桜の時期には道明寺を主上に召し上がって頂けるようにしよう。ああ、ご自身の為だけでは納得されまいから、それを一般の民にも広げねばな。手配はできるか?」
「おまかせを、堯天の茶房に知り合いもおります」
「さすがだな。では頼んだぞ、賢」
冢宰はそう言って気安く片手を上げて膳部を出て行った。
「賢、普通は冢宰自ら膳部を訪れることなんてないんだぞ。あの冢宰やここの太宰は頻繁に来るがな」
古株の膳夫にそう囁かれた彼は優しく笑った。
「ああ、そうだろうな。身の程はわきまえているよ」
賢と呼ばれた膳夫はそう言って、桜餅を作る段取りを仲間に指示した。

−おまけ了−

オマケ妄想の後書き 翠玉さま

2013/05/13(Mon) 02:12 No.448
 これくらいでないと海客が王宮勤めに抜擢されないんじゃないかな〜、 という思いから、膳夫を「信長のシェフ」のケン(賢)にしてみました。 いくら有能冢宰でも海客というだけで特別扱いはできないでしょう。 海客の膳夫は彼自身の能力で、彼を抜擢するのは陽子主上を娘のように溺愛する 太宰の権限で、という方がわたしの好みではあります。 「毎日供される食こそ主上に一番寛いで頂けるに違いない!」という 使命に燃えて賢を探し出したといのもいかがです?  賢は信長の死後にこちらに流されたと思し召しください。

 また、尚陽前提の未生さんの「桜の頬」(#1)の舞台に繋げることはできなくても、 なんとなく世界が重なるように浩瀚をフツーの官吏らしくする試みも入っていたりします。 拙宅の殿はあくまで格好良くなくてはならない、というのが暗黙のルールになっており、 大胆かつ硬派な殿となっている為、尚陽前提にすることは難しいのです〜TT
 浩陽の前は尚陽に嵌っていたはず(その前は景陽という節操のなさで、 同居人は楽陽派 ^^;)ですが、自分で書くことは難しい・・・
 とはいえ、 真性浩陽ファンの皆サマには自由に最強閣下を妄想して頂いて構いませんからね〜!  わたしの屈折した陽子主上への偏向萌えに付き合うことはございません。
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背景画像「四季の素材 十五夜」さま
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